ケトルには何故この状況でテロルが笑みを崩さないのか理解した。越えて来た死線の数が違うのだ。

「テロルって、いつからそういう仕事をしていたの?」

「あんたくらいの時よ。ちなみに初めて冒険に出たのは十二歳」

人生経験の差を見せつけられた気がする。

「で、エラムが無断で占領した遺跡に潜り込んで手下と戦いながら進んでたらあんたに会ったってわけ」

ケトルは自分が遺跡に潜入した時に見張りが少ないと思ったことや、あの巨漢が侵入者の報告をしていたことを思い出した。

「たぶん、おれとは逆方向から入ったんだ」

「そうかもしれないわね……」

テロルが躊躇うようにこちらを窺う。どう切り出すか悩んでいる表情だ。
まだ肝心な話をしていないとケトルは思った。ミーナは、光の翅を出す彼女は何者なのだろう。そしてあのローブの男は彼女をどうするのだろう。