ケトルはテロルと女の間に割り込み、剣の腹で突きを受け止める。

「刀相手にそれやると、下手したら折られるわよ」

「え!? じゃ、じゃあこうだ!」

攻撃の当たる角度を調節。女が苛立ちを露にする。
受け流すコツが掴めてきたかも、と思う。

「ケトル、合図よ!」

「合図ってそういうのなんだ!?」

言いつつ指示に従うと、すぐ傍で膨大な光の塊が出現する気配があった。目を閉じていても焼けつくようである。
それをまともに喰らったらしい女がよろける。

「あっは! 何これ!?」

少年の声が風の音に掻き消される。
ケトルの推測――炎の壁の消失と同時に飛び込んだ少年が光をまともに喰らい、怯んだ隙にネコモドキの魔法で吹き飛ばされた。
更に地響き――衝撃で床が崩落。あるいは最初からこれを狙っていたのか。ケトルが目を開けた時には少年の姿は穴に飲まれ、どこか奥底で水が跳ねる音がした。

「この……!」

女が体勢を整えるよりも先に、ケトルはその胴を薙ぎ払っていた。