「――ア、レ?」

少年が気の抜けた声を上げる。
唐突に生まれた隙をケトルは見逃さなかった。
少年の表情に初めて焦りが浮かぶ。
だがケトルの剣は少年の衣類を掠めただけだった。少年は倒れるように身を屈め、ケトルの鼻先目掛けて蹴りを放つ。無茶な軌道のためかわすのは難しくなかった。
ケトルは戦慄する。

「この体勢からかわすのかよっ!?」

少年は答えず、ぐにゃりとした動きでケトルから距離を取る。

「うーん、やっぱし連発できないのはキツいわねー」

テロルが炎の渦を操りながらしみじみと言う。

「リャオ! 魔女の言葉に耳を貸すな!!」

その炎に悪戦苦闘しながら女が叱咤する。