「人質のつもりかっ!?」

「ハァー?」

ケトルの叫びに少年は嘲りの笑みを浮かべた。

「馬鹿じゃね? オマエみたいな雑魚にわざわざそんな面倒くさいコトするかヨー!」

少年の剣はケトルの物よりも短く、間合いではケトルの方が有利なはずだった。しかし実力差故にケトルの剣先は弾かれ、相手の切迫を許し、結果として身体中に切り傷を負わされていく。

「その雑魚相手に致命傷ひとつ与えられないくせに!」

威勢良く言ってはみたものの、少年がケトルを嬲り物にするためだけに手加減していることはわかっていた。

「あっは!」

少年は楽しげに笑う。

「いいヨー、吠えろ! 殺し合いはこうでなくちゃ!」

「……イカれてやがる」

少年はケトルの理解力の埒外にいた。