声は続ける。

「おい貴様。何故朝から河原で寝ているんだ。怪我をしているようには見えないが? 病気か? 二日酔いか? ……それとも、まさか、そういう趣味なのか」

張りつめた琴糸に似た声音は、ややあって咳払いをした。

「い、いや、人の趣味は千差万別だったな。すまぬ、貴様の趣味をどうこう言うわけではないのだ」

「……君は随分口が達者だね」

少年は目を開いた。切れ長の目は猫科の肉食獣を思わせる暗黄色をしている。
少年は視界の端に沢蟹を捉えた。次いで高天を見上げ、白く浮かぶ昼間の月に目をすがめる。

「どこを見ている」

呆れたような気配を追えば、少し離れた位置に人影があった。