火浦功


なんでiPadの検索候補に火浦功の一発変換があるのでしょうか。


「まさか平成28年にもなって火浦功の新作が出るなんてねぇ」と驚いていたら、単行本未収録の雑誌掲載作品をまとめただけでした。
昭和の末期から平成初期の未収録作品まとめ――ってこれ今年2月に刊行にされたんですよ、なんで今更!?
でも陽の目を見るのはいいことだと思います。

一応言っておくと、作者の注釈とあとがきとイラストとイラストレータのあとがきは全て書き下ろしです。わー火浦功めっちゃ仕事してるー!
(しかし加筆される流れっぽかったあの短編なんかはそのままです)


内容はスーダラスーダラスーダララみたいな感じ。オチまで読んでずっこけて、「しょうがないなぁ火浦氏は」ってなりました。
つまりいつもの火浦功だと思うのですが、『ファイナル・セーラー・クエスト』しか知らないのにこんなこと言ったら怒られますかね?(火浦氏が書いたハードボイルド作品を未読のため、この人がハードボイルドも書けることを信じられずにいます)

ネタが全体的に自分が生まれていないor物心つく前のなので懐かしいような、見知らぬような不思議な感じです。リアルタイムで刺さる世代だとまた違う感覚を得られたと思います。

ベルリンの壁ネタが懐かしいです。忘れがちですが、冷戦が終結したのは平成に入ってからなんですね。恐怖の大王の予言の年にはとっくに解決していたというのが笑えます。

私が一番印象に残ったのは、30代の3人の男が青春の影を追い求める中編です。
まだ携帯電話も普及していない、バブルの受かれた空気が落ち着いた、そんな時代の東京と瀬戸内海の風景が沁みるお話でした。
もし携帯電話があったら書けなかったような、不思議なお話でした。きっと私は内容を理解しきれていません。
ただ興味深く、映画を観ているような気持ちで読みました。読んでいて、自然に映像が浮かぶのです。


わからないネタを検索するのもまた一興、そんな少し不思議で脱力出来る短編集でした。