キスのお題「腹:回帰」
※ソマイル
※イーアが生まれる前
※ナチュラルに全裸
※しかしえろくはない
※期待すると肩透かし
臨月の近い妊婦を見ていたら思い付いた話。
本当は絵にしたかったのですが、構図が浮かばず。
別に服の上からキスしても良かったのだと気付いたのは書いた後。
「もうすぐ生まれそうなの」
彼女は己の腹を撫で笑った。
夜の帳の中、月明かりだけが彼女の姿を浮かび上がらせる。
長く柔らかな髪、女性らしい流線を描く瑞々しい肉体――一糸纏わぬ裸身。シーツの上で上体を起こす姿はさながら絵画のよう。
その中でも一際大きな曲線があった。丸みを帯びて張り出した腹は、新たな命の息遣いを感じさせる。
彼女は眉根を寄せる。
「あまり見られると恥ずかしいんだけど……」
ふるり。知らず、息が漏れた。
何を今更。
「わ、笑わないでよ。……違うの、改めて観察されるのが恥ずかしいの」
そう言って彼女は顔を背けた。
僕はくつくつと笑いながら、彼女の臍の辺りに顔を近付ける。
「ちょっ……! なに、を」
困惑の声を無視し、くちづけを落とす。その腹に。まだ見ぬ愛し子に。
僕の一番大切な彼女によって育まれ、その慈愛を一身に受ける存在が、少しだけ羨ましかった。