「写真、撮ってもいいかな」
「なんでっ、うちの、学校……っ、山の、上にっ、あるかなあ……遅刻は免れたけど、息が……っ」
「午後の授業ってなんでこんなに眠いんだろう。皆平気なのかなー……」
「自己紹介ってちょっと苦手。何を話したらいいんだろう。僕は皆みたいに特技なんか無いし、平凡だから……」
「待って、僕も行く!」
「町外れにゴミ山、ほらあの不法投棄場所あるよね。あそこからは綺麗な夕焼けが撮れるんだ。危険だけどね」
「うーん……。もうちょっとでいいから身長欲しいかな」
「母が早朝からパートだから、お昼はいつも購買なんだ。コロッケパン美味しいよ!」
「眼鏡だからって頭いいとは限らないからね!? 僕の成績は真ん中くらいです!!」
「史平ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「これが僕のカメラ。デジタル一眼レフ。入学当時は発売されたばかりの機種で、おこづかい前借りしまくって買ったんだ。ぼかし効果や、天体が綺麗に撮れるところが好き」
「史平の持ってる曲の中では《小フーガ》が一番好きかも」
「いつもは風景写真ばかりだけど、今はポートレートもやりたいな。撮りたい人が……人達がいるんだ」
「眼鏡が本体って何!? 心は体のどこにあるのかって話!? それとも自分が自分であることの証明方法を問われている!? 僕は意識と肉体の両方が揃わないとその人じゃないと思う!!」
「……史平は恋とかしたことある? そもそも興味ある? 言っちゃ悪いけど全然想像つかない」
「何で櫻井君はあらぬ誤解を招く発言をするの!?」
「僕ね、調理実習で史平が作った物体を見て思ったよ。もしこの世界がRPGだったら、史平は確実に錬金術師だなって……」
「そんなにコーラばっか飲んでたらさぁ、コーラ味になっちゃうよ」
「まだドキドキしてる……。これは恋かな、それとも病気かな……勘違いであって欲しくない……」
「高槻さんが僕をちゃん付けで呼ぶからか、友達まで僕のことをナオちゃんと呼ぶようになった。いや、あだ名の定着が異様に早いのは別に構わないけど、男としてはちょっと複雑……」
「あわわわ……高槻さん落ち着いて、高槻さん!」
「水無瀬さんはもっと素の面を出せばいいのにね」
「違うんだ、水無瀬さんにびびってるとか、そういうのじゃなくて! 僕、あんまり女の子と話したことないから緊張しちゃうんだ」
「高槻さんと水無瀬さんて仲良いよね。女の子っていつも一緒にいるのが好きなのかな?」
「えっ、櫻井さんが二人!? そして櫻井さんがもう一人の櫻井さんの首を絞め始めた!? ……な、なーんだ。櫻井君だったのか」
「櫻井さんも櫻井さんで大概だなぁって僕は思うよ……」
「僕は知っている。女の子は砂糖とスパイスと素敵なもので出来ている、って」
「弟はしっかり者で、いつも他人を気にかけている、とっても優しい子なんだ。大人っぽくて格好いいんだよ」
「僕だったら、好きな人を泣かせたりしない。ぜったいに大切にする」
「いつか、この光景は思い出になるんだね……」
「……僕は、一体いつから自分で自分にリミッターをかけていたのだろう」
「卒業したら皆バラバラなんだね。高校で新しい友達が出来て、大人になって……。その時の僕等は、中学生の僕等をどう思うだろう。
僕は願う。かつてを振り返った時、そこにあるのは色褪せない記憶であって欲しいと。
だから僕はそれをカメラに収める。時間というものを、物質として残したくて」
「ありがとうマイフレンズ」
* *
尚「え、ええと……。何を言えばいいの?」
史平「おめー、喋る時に『……』が多いのな」
夜麻登「吐息混じりですよね。しかし、大人しそうな割には『僕は』『僕が』と強調していたりして、気弱なんだか違うんだか」
高槻「ナイーブ少年でも自己主張したいのよ!」
由弥那「口調そのものは幼い感じがしますね」
尚「えー……そう、かな?」
史「でもツッコミ入れる時はシャウトすんぜ。たまに辛辣だしな?」
水無瀬「叫ばせてるのはあんただろーが」
夜「叫んでなくても、心の中が凄いことになっていそうですね。彼はモノローグで語るタイプとみました」
高「ところで途中の『女の子は砂糖と〜』はマザーグースね!?」
由「……ナオ君て森羅万象に幻想抱いてますよね?」
水「おい」