一次創作小説「夜の花園」A

「来たわね」

テロルは石を削り出して作った大きな卓の前で忙しなく手を動かしていた。卓上には呪文のような文字が書かれた羊皮紙や鉱物、金属の冷たい輝きを宿す計測器のようなものが散乱している。テロルは宝石でできた盤とミーナを見比べる。盤の表面を流れ星のように文字が滑って行く。盤からは植物の茎が生え、祭壇へと伸びていた。

「あたしはテロル。ミーナ、あんたのことはケトルから聞いてるわ。挨拶もそこそこで悪いけどこの遺跡動かせる? 簡単に説明すると……」

「あの、わたし……使い方、わかります」

ミーナが卓の前に進み、盤に触れた。盤はまるでミーナに反応するかのようにきらきらと明滅した。

「わかるの? じゃあいいけど……」

テロルが面食らったように目を見開く。

「はい、さっきまで一緒にいましたから」

どういう意味かをケトルが問う前にミーナの背に光が収束し、幅広の蝶の翅を形作る。ミーナが卓に手をついて頽れた。

「く、ぅ……」

「ミーナ、大丈夫!?」

「は、はい……。へいき、です……」

ぜえぜえと荒い息を吐く様子はとてもそうは見えなかった。

「ねぇ、その翅出すのって疲れるの?」

「その……。まだわたしの体が力に慣れていないらしくて……」

「あたしも魔力貸すから」

横からテロルの手が伸び、盤に触れる。
そうして二人は短く言葉を交わし合った。おそらく呪文なのだろうが、ケトルにはわからない。ケトルは黙って二人の声と、声が重なる度に空気に弾ける光の粒子を見ていた。

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シャニマス六百三十九日目。

純真チョコレートで第一シーズン。
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