會川昇


現在アニメ二期が放送中の『コンクリート・レボルティオ』の小説を、アニメの脚本家自ら執筆したものです。アニメの時系列よりも数年前ですが、前日譚というよりもパラレルワールドに近いと思いました。
アニメを観ていなくても内容は独立しているからわかりますし、逆に小説しか読んでいなくてもアニメの内容はわかります。でもどっちも知っているとより作品世界に理解が深まります。

「神化」という架空の昭和を舞台に、「超人」を巡る人々の思惑が交錯するSF小説ミステリ仕立て。でもその定義も曖昧なんですよねってお話です。

もし本当にアニメや漫画や特撮の登場人物――超人が存在していたら、現実に起きた事件はどうなっていただろうという架空の昭和世界のお話です。登場人物も起きる事件もオマージュであり、元ネタがあり、それがわかるとニヤリと出来ますし、元ネタを調べるのも楽しいです。

アニメで描かれた神化四十年代は、色合いがポップでいっそ毒々しく、ノスタルジックな感慨を切り離したようなカラーテレビの世界を縦横無尽に超人が活躍する世界でした。
一方こちらの小説は、復興後の日本の街並みや生活風俗、人々の口調にもその当時の時代感みたいなものを感じました。私はその時代にはまだ生まれていない為に想像するしかなく、絵が無い分、それはくすんだ色合いを持って脳内に像を結びました。父が物心ついていたかいないかの時代というのは一周回って目新しく感じました。


これは書物の形をしたラブレターだ。
それが読了後の感想でした。

主人公のモデルは小説家で脚本家の辻真先氏と思われます。名前はアナグラム、担当番組もバスと市電の違いこそあれどおおむね一致しています。
辻氏はコンレボのアニメ一期と二期のゲスト脚本に呼ばれています。會川氏はどんなに辻氏が好きなのでしょうか。
ヒロインのモデルがどう考えてもあの人というのも面白すぎです。いいんですか、これ。

先人への果て無きリスペクトと、要素の再構築と伏線回収の巧みさ。アニメにも共通する面白さは健在でした。

正直、最初はいまいち話に乗れなかったのですが、主人公が一回目のリープをしたあたりからどんどん引き込まれました。後半はもう怒涛の展開。あの人の目的がわからなくてもやもやしましたが、その分主人公が自身のスキルで一泡吹かせる展開が良かったです。

でもあのオチにするなら、ぼかした方が良かったんじゃないかなって思います。


なんだか懐かしくなり、手塚治虫氏の『ふしぎな少年』(小学館文庫版)を読み返してみたら、巻末のエッセイが辻氏で笑ってしまいました。

追記で微妙にネタバレです。
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