ろくごまるに御大の作品を再読するシリーズもこれでラストです。

最後は2010年9月刊行の『桐咲キセキのキセキ』です。
これは5月25日に刊行される電子書籍のラインナップには含まれていないので、注意が必要です。


キセキ=奇跡/軌跡/奇蹟/輝石/鬼籍――あるいはその全て。

最初に読んだ時は得体の知れない異様な読み口になんじゃこりゃってなりましたが、改めて読み返すと面白かったです。
普通のラノベの皮を被ろうとしたところに奇怪な物をトッピングしたみたいなお話。怪奇的なモチーフがふんだんに盛り込まれているような気がしますが、全貌を把握するには情報が足りないです。この巻だけでは評価が下せないので、ばあさんや二巻はまだですかいのう。


これはひょっとして、主人公に決断力があって、適材適所で適切な判断を下すラブコメでは!?
ラブコメですよ、少なくとも恋愛小説でした。遊撃部長が二人の少女の間で揺れるあたりなんてまさにですね。

夢幻城連続殺人未遂事件のくだりだけでも読んで下さい。
クローズドサークルを嘲笑うかのような、ミステリをメタでかっ飛ばすいつものろくごまるに成分が濃縮されています。
前後を読まなくてもその部分だけで読めます。しかしその後の展開の布石になっているという素晴らしさ。


ところで某レビューサイトにて「続きが出るの確定なら三ヶ月以内に出せ」という意見を見てひっくり返りそうになりました。馬鹿を言ってはいけません。1990年代前半のラノベ(ジュブナイル小説)業界なら、年二回出したら筆が早い扱いだったんですよ。それが昨今では年四冊当たり前みたいな話になっていて怖いです。