「ところであんた、知らない声にフラフラ着いて行くとか何やってんの。森の中でそういうのが聞こえたら普通は魔物の罠や悪戯を疑うものよ?」
テロルが呆れ顔をする。それが妥当な反応なのだろうとケトルも思うが、あの時はそんなことを考えもしなかった。
「考えるよりも先に体が動いていたんだ」
これって言い訳っぽいかな、とケトルは頭の片隅で思う。
「あの声はとてもつらそうで、イタズラなんかじゃない言い方だったから。助けたいって思ったら、もう止まれなかった。迂闊かもしれないけれど、それっていけないこと?」
テロルは答えない。じっとケトルを注視している。ケトルは居心地が悪くなって白状した。
「……未知なる冒険の予感にワクワクしてたってのもある」
「英雄志願お上りさん……」
「結構迷惑なタイプかもしれないねー」
テロルとネコモドキが口々に呟く。