「く、ぅ」

苦しそうに蹲り、ミーナは呻きを上げる。

「あ、あ……」

徐々にその背に輝きが収束し、翅を形作る。それは蝶の翅に似ていた。
先程よりも血色が悪くなった顔を、とめどなく汗が落ちてゆく。
ミーナは息を吐くと、祈るように手を組み、目を閉じた。

『だれか……わたしのこえを……』

心の中で呼びかける。誰に届くかもわからない。それでも呼びかける以外のすべが思いつかない。翅を通じ、もっと遠くへ届くように、繋がるように、『声』を拡げていく。
だが足音が聞こえ、ミーナは祈りを中断した。翅が光の粒子となって空気に溶け消えると同時に倒れ伏す。憔悴しきった耳は部屋が解錠される音を聞いた。