藤浪智之


表紙でてっきり異世界食堂物かと思っていたら、『五竜亭』シリーズの現代版リニューアルでした。いやまあ五竜亭シリーズ読んだことないんですけど。


内容を軽く紹介すると、冒険者の酒場で冒険者が自分の冒険であったことをクイズ形式で語り、他の冒険者達が自分ならこう解決すると意見を出すというもの。正解は無く、もっと他の答えがあるかもしれない。
これはそんな「読み物」です。

ト書き形式なので読みやすいかもしれません。

そして一人称が「きみ」。読み手を作品世界に招いてくれる語り口。私はこの手の読み物にもTRPGにも慣れないので、中々変わった味がします。
(読み手が作品世界に存在していることにしてくれるあたりは『俺たちに翼はない』っぽいと思いました)


キャラクターについては、「その職業ならこういうことを言うだろうな」という予想を裏切らない印象でした。おかげで非常にわかりやすいです。これはあえて類型的にしているのかもしれません。
傭兵戦士ホークウッドの「器用にこなそうとして結局貧乏くじを引く」役どころはなんなのでしょうか。そういう星の下に生まれたのかのような見事な芸風でした。
あと藤浪先生はカルタみたいな女性が好きなんだろうと思いました。
ちょこちょこと『だんじょん商店会』にいた人がいるような気がしましたが、別人でした。いやフンボルト卿ではなくてですね。酒場の店主はカール・グスタフではなく、メタネタをぶっこむ老冒険者は赤熊ではなく赤髭でした。でも似ています。ふと思ったのですがこれ名前が青髭だったら大変でしたね…。
シルヴィア卿は正直他人の話を聞かないから嫌だったのですが、最終章で好きになりました。私は二番目の選択肢が好きですね。

物語の作り方の参考としても面白いです。
同じ導入でどれだけパターンを作れるか、話を広げられるか、実験みたいだと思いました。