拝啓、未来の僕へ。
君は何をしていますか?
幸せですか?
僕達は、一緒にいられているのですか?
きっかけは、全員に配られた進路希望書。
進路なんて決まってるわけねーだろ、と思った。
自分だけではなくて、周りだって決まっている人の方が少ないだろうとも。
同じ生徒会のメンバーに聞いてみても、
「うーん、まだ決まってないよー」
とか、
「大学進学とかで良いんじゃないの、とりあえず」
とか、予想通りの言葉が返ってきた。
中には、
「じゃあパパのお嫁さんで」
なんて冗談めかした言葉もあった。
「はぁ…」
誰もいない生徒会室でぼたもちは溜息をついた。
「これどーしよ」
進路希望書を眺める。
将来とか考えたことがなかった。
今、皆と送る生徒会での毎日が充実していて、考えようともしなかった。
じゃあ、未来は?
いつか自分達は学校を卒業して、就職する。
いつまでも生徒会でいられるわけじゃない。
未来の自分は、どんな道を歩んでいるのだろうか。
その道に、彼らはいるのだろうか。
気がつくと、ぼたもちは知らない場所に立っていた。
周りは皆スーツを着ている。
どこかの会社らしい。
「どうしたの、僕?何か用事かな?」
知らないお兄さんに笑顔で尋ねられた。
どうしよう、ここ何処ですかとか聞くの怪しすぎる。
でも用事なんてあるはずもない、だって何処にいるのかすら分かっていないのだから。
目の前の男が怪訝そうな顔をした、その時だった。
「その子、私の親戚の子なんです」
「迷惑をかけてごめんなさい」
二人の女性がぼたもちの横に立った。
「ぶ、部長!部長の親戚でしたか」
「そう、だから連れていきますね」
さぁ、ついてきて、と二人はぼたもちを連れて歩いて行った。
「しかし、誰かに似てるんだよな、あの子」
何処へ向かっているのか分からないが、二人についていきながらこっそり観察してみる。
一人は肩下までのストレートの黒髪をおろし、眼鏡をかけて優しく笑っている人。
もう一人は長い茶髪を後ろで一本に束ね、感情の読めない表情をしている人。
前者はスカートスーツ、後者はパンツスーツである。
あれ、とぼたもちは既視感を覚えた。
すると二人が一斉にこちらを向いた。
「いきなりあんな所にいたからびっくりしたよー」
「何と言うか、相変わらずっていうか、変わらないというか…」
さっきまでの丁寧な口調が嘘のように砕けた話し方だった。
「相変わらずって…え?」
「どうしたの?」
「何呆けてんだよ、ぼたもち」
「俺のこと知ってるんですか!?」
「あれ、もしかして分かってないの?」
「つれないな、長いこと一緒に執行部やってたのに」
「…え、もしかして、向日葵と昴!?」
まさか、と思ったが、二人は正解と笑った。
「だって、二人はこんなに大人じゃなかったし」
「私達が大人になったんじゃない」
「君が、幼くなったんだよ」
ほら、とある扉を開ける。
「失礼します、社長、副社長」
そこには二人の男性が座っていた。
「お帰りー、二人共」
「あれ、ぼたもちも一緒、というか若くなってるね」
「あ、やっぱり俺の見間違いじゃないんだね」
あぁ、とぼたもちは少しだけ泣きそうになった。
このマイペースな感じも、居心地の良さも、自分は知っている。
やっぱりこの人達は彼らと同一人物なのだと。
「ここは?」
最初に気になったことを聞いてみる。
すると、だてめがねが答えた。
「ここは清流コーポレーションっていってね、俺達が創立した会社だよ、あ、これ会社の社章のバッチ、良かったらあげるよ」
「ちなみにだてめがねが社長、俺が副社長だよ」
と、真尋も答える。
「私は戦略部長をやっているよ」
と、昴が答え、
「私は経理部長なんだ」
と向日葵も言う。
あれ、とぼたもちは思った。
自分はどこにいるのだろうと。
もしかして、自分は同じ道を歩いていないのだろうか。
ぼたもちの考えていることを見透かしたかのように、だてめがねが微笑む。
「大丈夫、ぼたもちなら」
再び扉が開く。
入ってきた人物を目に留めた瞬間、ぼたもちの視界が歪んだ。
『ここにいるよ』
最後に見た人物が、自分に向かって笑った、気がした。
「…きて、起きて、」
「起きろっつってんだろうが!!」
「痛っ!」
気がつくと、元の生徒会室だった。
「おはよ、ぼたもち」
真尋が苦笑を浮かべて挨拶する。
「あれ、俺、寝てた?」
「うん、それはもうぐっすりと」
だてめがねも笑って答えた。
「何か寝言言ってたけど、夢でも見てたの?」
向日葵が聞く。
「夢…そっか、夢だよな」
ふと、手に何か握っている感触がした。
そっと手を開いてみると、中には小さなバッチ。
清流コーポレーション、と書かれていた。
「どうした、何笑ってんの」
と昴に不思議そうに言われたけれど、笑わずにはいられなかった。
だって、あれは、
(夢のような、)(奇跡みたいな現実だった)
拝啓、未来の僕へ。
君は何をしていますか?
幸せですか?
僕は今、幸せです。
だって、今の僕には皆がいて、未来の僕は彼らと一緒に笑っていたんだから。
うわ、色々とごめんなさい。
ぼたもちキャラ違うとか俺もよく分かってる…!
たまには真面目な話をやってみようと思って大失敗。
全力で皆に謝ります、はい。
ポケモンと暮らしてみよう!バトン
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