F G O ネタ。
親友殿への誕生日祝いのつもりが日付を越えました。
やっつけで申し訳ない。



「えっ、本当ですか!」
「はい、彼女たちに聞いたので間違いないかと」
「では、色々用意しなくってはね?」
「そうだな、張り切って準備するとしよう」
「では私も腕によりをかけてご馳走を作ろう」
「僕も手伝うよ」
「わたくしめにもお任せを!」

いつにもましてうちのカ ル デ アは騒がしい。
そうして気付く。嗚呼、そうか、もうすぐあの日だった。



『貴方に唄を』



カ ル デ アのマスターの1人、蒼生は廊下を首をかしげながら歩いていた。
おかしい。
うちのメインメンバー達がおかしい。
この1週間くらいあまり姿を見かけない。会ったとしても挨拶を交わすとすぐにいなくなってしまい、クエストのお誘いは今のところ全滅だ。
特に沖 田などはいつもなら忠犬よろしく着いてくるのに最近はそそくさと去っていく。おかげさまでサブメンバーがフル稼働だ。ト リ ス タ ンマジでごめん。

「もう1週間になるのに…」

もしかして何かしてしまっただろうか。
不安になってきたその時、馴染みのある顔がひょっこり現れた。
いわゆるマスター仲間達だ。

「やっほー!…って、顔ヤバ!」
「マジで?」
「うん、この世の終わりみたいな顔してる」
「どうしたの?」

実は、メインメンバーの皆に嫌われたかもしれない。
そう話したところ、彼女達は顔を見合わせたあと、盛大に吹き出した。

「いやないないない、絶対にあり得ないね!」
「ないな」
「ないね」

分からないじゃないか、というか笑いすぎでは、と言うと、ごめんと心にもない様子で謝ってきたあと、1枚の紙を取り出した。

「この紙が不安も疑問も全部解決してくれるよ」

しょうがないから私達は今日は譲って遠慮しておくよ、明日楽しみにしてて。
そう言って去っていったあと残されたのは1通の手紙。

『談話室にてお待ちしております』




そこで蒼生を待っていたのは、クラッカーの洗礼と、可愛らしく飾り付けられた部屋、沢山のご馳走。
そして、8人のサー ヴァ ント達の笑顔だった。

「「「「「「「「マスター、誕生日おめでとう(ございます)!!」」」」」」」」

その言葉に全ての合点がいき、思わず安堵のため息が漏れる。
嫌われたかと思ったよ、と言ってみると、皆揃って驚いた顔をしてからあり得ないと慌てて否定した。


ひとしきりご馳走を堪能すると、エ ミ ヤが口を開いた。
「そろそろ贈り物を渡そうと思う
私からはあると便利なアイデアキッチングッズとソーイングセットを」
「私は沖 田さん特選!オススメ甘味詰め合わせです!」
「私からはティーセットを、マスターとのティータイムはいつもとても楽しいわ」
「悩んだのですが…私は手作りの写真立てを」
「僕からはお勧めの本を何冊か、きっと役に立つと思う」
「わたくしからはお着物です!古来より旦那様のお召し物を仕立てますのは妻の役目ですし?」
「私は手編みの帽子とストールだ
あとはニットとカバンと猫のぬいぐるみと」
「まだあるのか!?」

沢山の贈り物を貰い満たされるなか、ふと1人足りなくなっていることに気付く。
するとヴ ラ ドは笑って紙を渡す。

それが最後の贈り物だ、行っておやりなさい。

それに頷いて、蒼生はチケットに書かれた通りに早足で歩いていく。
自分の部屋へと。


「あーあ、結局最後はこうなるんですね」
「まぁ仕方あるまい、なにせこの日を1番待ち望んでいたのは紛れもなく彼女なのだから」
「そうですね、まぁ今回だけは譲ってさしあげましょう」




はたして彼女はそこに立っていた。
彼女にしては控えめに飾り付けられた室内。
名前を呼ぶと彼女は振り返り、いつもとは違う少し困ったような笑顔で花束を差し出した。パンジーだ。

「あのね、マスター、本当は派手に1曲披露しようと思ったの
でもね、ほら、アタシの歌って時代を先取り過ぎてるっていうか、ちょっと皆に評判が良くないっていうか…
だから…結局普通に祝うことにしたわ」


本当は、自分だけは1年前も一緒にいた。
誕生日も知っていた。
でも、まだ戦い始めて日が浅く、戦力もほぼなく、とにかく生きることに必死だった。
…気が付けば、とうにその日など過ぎ去っていた。

「アタシは本当にそれを後悔して、もしも次があったなら、次も側にいられたなら、それはもう盛大に祝ってやろうって決めたのよ」

でもダメね、いざってなるとなにも思いつかないわ。
そうらしくない表情で呟く彼女に、蒼生は告げる。

"どうか歌ってほしい"

目を見開いてえ、だのでも、などと言いよどむ彼女に重ねて告げる。
俺は君の声が好きだ。
いつだって側にいて励ましてくれた明るい君の声が大好きだ。

「だから歌って、エリー」

彼女はようやく大きく破顔した。それは、見慣れたいつもの彼女らしい表情だった。

「任せなさい、とっておきのナンバーを特別に披露してあげる!!」



そして蒼生の部屋からはいつも通りながらも、どこか暖かい雰囲気を含んだ騒音が聞こえだした。





ねぇ、マスター。
アタシはね、本当は世界的アイドルになんてなれなくても構いやしないのよ。
アタシはマスターさえ笑ってくれれば良いから、マスターにとってのアイドルでいられればそれで十分。
普段はなかなか素直に言葉に出来ないから、全部全部歌に込めて届けるわ!
だからね、どうか笑顔で聞いてちょうだい。




ちなみに蒼生さんとこのメインPT設定。そのうち他のチームと合わせてまとめる予定。

剣:沖 田→マスターのためなら命だって張りますとも!(ゴフッ)マスターのことを密かに兄のように慕っている。スターお化け。
槍:エリ ザ ベ ート→最初のパートナー。妹みたいな存在。蒼生との間には特別な絆みたいなものがある。マスターの笑顔がみたいのでお歌の練習を頑張る皆のアイドル。
弓:エ ミ ヤ→お母さん。言うこともやることもお母さん。マスターの世話を焼くのが生き甲斐でたまに他のマスターの世話も焼いている。
殺:ジ キ ル→良きお兄ちゃん。色んなことを知っていてマスターに教えてくれる。たまにツンデレモードがみれるとかなんとか。
騎:マ リー→マスターとのティータイムが日課の王妃様。好奇心旺盛で少女めいているがどこか達観していてマスター達を温かく見守っている。
術:玉 藻 の 前→旦那様に尽くしますわ!才色兼備な嫁キャラ。家事も芸事もお任せあれ。紫乃家の清 姫とはメル友。
狂:ヴ ラ ド→カ ル デ アの全員が孫みたいで可愛くて仕方がないおじいちゃん。特にマスターとエリ ザ ベ ートを可愛がっている。手先が器用で特に裁縫系が得意。モンペ系バー サー カー。
全:ジャ ン ヌ(ルー ラー)→しっかりもののお姉ちゃん。しかしちょっと天然。たまに蒼生とダブルで天然スキルを発動して大惨事を巻き起こす。