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君に黄色のねこじゃらし・9の続き

※昨日の続きです。

「ちわー。大佐引き取りにきたぜ」
「悪いわね、ありがとうエドワード君」

執務室に入ると、机に向かって書き物をしている大佐がこちらを向いた。中尉も書類の整理をしているところを見ると、大佐の役目はつつがなく終わったのだろう。部屋に流れる穏やかな空気を感じる。

「大佐、大丈夫だった?」
「ええ。大人しくて助かったわ」
「ちゃんと仕事した?」
「役目も果たしたし、幾つか仕事もして貰ったから、今日は帰っても平気よ」
「じゃあ、帰るか。ほら大佐」

何故か大佐は俺を見て身構える。なんだよそれ、俺が謝ってないのをまだ根に持ってるのかよ。

「あなたが来てくれて良かった」
「アルじゃなくて?」
「うーん、大佐の手元を見れば解るわ」

机に近づいて、大佐の手元を覗き込む。男が腕で牽制し、慌てて隠す紙をむしり取って、広げる。

「な、なんだこりゃ!?」

紙には、余白を埋め尽くすほど同じ単語が書かれている。エドワード、エドワード、エドワード…と、俺の名前が幾つも幾つも。
かあっと顔が熱くなる。恥ずかしくて堪らないけど、なんで俺が恥ずかしいんだろう。変な汗まで出て、中尉の前でどう取り繕っていいかの判断すら出来ない。

「午後からずっとその調子なの。エドワード君と何かあったのかと心配したんだけど」
「なっ!無いです無いです!ほんと、何もしてない…!!」
「昨日、ケンカしたんでしょう?さっきアルフォンス君から聞いたわ」
「あ…うん。そう、です」

後ろめたい事を隠していると、人はすぐにぼろが出る。中尉は知ってか知らずか、それ以上は追求して来なかったから助かった。

「ほら、バカ大佐。帰るぞ」

動揺を隠しつつ、大佐に帰るよう促す。それでも俺を警戒したまま席を立たないので、いつものように手を差し出して、繋ぐ素振りを見せる。それを見て大佐が立ち上がり、そっと手を繋いでくる。表情も軟らかくなった。
油断したところで大佐にコートを着せて 、マフラーをぐるぐるに巻いてやる。

「あら、手を繋いで帰るの?」
「小鳥を追いかけて、道路に飛び出した事があるんだ。だから、付き添いは手繋いだ方が」
「本当に老人介護みたい」
「ていうか、介護だと思ってるよ俺は」
「早く戻って貰わないとね」
「本当にな。中尉に迷惑かけっぱなしだ」
「私だけじゃないわ。あなた達兄弟にも」

本人を目の前にお互い迷惑だと言いながら、困りはしているが表情は明るい。老人はちょっと言い過ぎたかな。と、笑い合って司令部を後にした。


穏やかな夕方の街を歩く。大佐はしっかりと手を握って、まるで俺を離すまいとしているかのようだ。

「どこにもいかねえよ。安心しろ。そんで、昨日はちょっと言い過ぎた。でも、大佐も少しは反省しろよ?じゃりじゃりのベッドはあんただって寝にくいと思った筈だ」

俺の言葉にホッとした顔をして、嬉しそうに笑むから、なんだか調子が悪くなる。
こんな話、いつもだったらイヤミの二つくらいくるんで投げ返してきて、俺も強い言葉で返して…なんてやり取りになるのに。言葉が返って来ないというのは、こんなに寂しいものなのか。

「…なあ。公園行こうか。俺にもねこじゃらし見せてくれよ。綺麗だったんだろ?アルはずるいな。大佐と仲良しで」
「!」

ほんの少しだけ漏らした本音に、大佐がいきなり反応した。道端だというのに突然俺をぎゅうぎゅう抱き締めた。

「はっ離せ!わかったから離せ…!!」

何がわかったかは俺にもわからないが、とっさにそう叫んで体を押して離す。昨晩は離れて寝たから、大佐との近い距離は久しぶりのような気がして照れる。

「とにかく!公園行くぞ。そんで帰りに夕飯の買い物だ。ねこじゃらしまで案内くらいしろっ!」

手を繋いだ俺達は公園へと向かう。大佐は始終機嫌が良くて、尻尾が出ていたらパタパタ揺れていただろう。
どうして俺の名前を書いたのか。今聞いても答えは返って来ない。繋ぎ返される手の力が答えなのだと勝手に妄想して、仄かな期待に胸を高鳴らせている自分は、相当の馬鹿だ。
大佐の代わりで中尉やみんなも追い詰められているし、これ以上は大佐自身の立場だって危うくなる。俺達の旅も進まないし、アルも元に戻らない。
こんな事じゃいけない状況なのに、このままの生活も良いと心のどこかで思っている俺がいる。繋いだ左手は温かくて愛しくて、もう自分からは離せない。優しさを感じる程、胸の痛みはその分増した。



書き溜めた分は終了。また今度書いたら上げます。ありがとうございました!。

君に黄色のねこじゃらし・9

※8の翌日だと思ってください。


久しぶりに、大佐に出勤命令が下りた。
中尉の代理と大佐病欠の言い訳だけでは、乗り越えられない案件があるそうだ。内容は詳しく教えて貰えなかったが、俺たちも聞かなかった。ただ、大変だという事は向こうの様子で伝わって来る。
相変わらず大佐を元に戻す方法はわからない。俺達に気を遣いながらも、中尉達には焦りが見えて心配になってしまう。

その日は朝早くから、ホークアイ中尉とブレダ小尉が迎えにやって来た。身支度を整えるまでは、大佐も自分で殆ど出来るので手間はあまりかからない。問題は猫耳と尻尾だ。
猫耳は引っ張ってガムテープで頭に貼り付けて、上から包帯で巻いた。その力技にアルはすごく心配してたし、小尉も気の毒そうに見ていたが、中尉の言い出したアイデアだった事とそれ以上の代案がなかった為に決行された。
尻尾はズボンの右に入れるか左に入れるかで迷った。これは中尉にはわからない具合だと思う。男にしかわからないポジショニングだ。

「大佐。ちょっとの辛抱だからね。帰って来たら僕と兄さんで外してあげるから、それまでは我慢だよ」
アルが大佐の頭を心配しながら優しく話しかける。俺はと言うと、昨日のねこじゃらし騒動から大佐に謝るタイミングを失って、機嫌が悪いふりをし続けていた。
馬鹿らしいと自分でも思う。でも、今更謝るのもおかしいし気まずいし。どうしろって言うんだ。

準備の整った大佐は、小尉の運転で連れて行かれた。暴れたり嫌がったりはしなかったので、今回は楽だった。悲しそうに車に乗せられる姿は、まさしくドナドナの子牛のようだった。

「大丈夫かなあ。大佐、耳が痛くないかなあ」
「平気だろ、あんなの飾りみてえだし。時々は窮屈な思いしたらいいよ。あー、居なくて清々するぜ」
「兄さん!」

アルに怒られながら、俺はどんどん気持ちのタイミングも失って行く。
大佐が居ないので、今日は二人で出かけられる。わかっていても、俺もアルも家にいた。いつ大佐が帰って来ても良いように。何かあったら迎えに行かれるように。
あんなんでも、猫のあいつは俺とアルにとってペットみたいなもんだ。
いけ好かないと思っていた上司が愛玩動物よろしく家族みたいな距離で存在しているなんて、不思議だし滑稽だと思う。でも今では、心配もするし大切だとも思う。俺もアルも言葉にしないだけでそう感じていた。

二時を過ぎた辺りで、電話が鳴った。反応の良いアルが飛んでいって、受話器を握る。

「…はい、はい。わかりました。じゃあ迎えに行きます」
「どうした」
「送れる人が居ないから、大佐を迎えに来て欲しいって」
「あいつ面倒だなあ。本当に邪魔くせえ。アル、行くぞ!」
「僕は留守番してるから、兄さん行ってきてよ」
「え、何で」
「帰り道でちゃんと謝って、仲直りしてきなよ。文句言ってたって出かける準備してさあ。本当、素直じゃないよね兄さんは」

既にコートまで羽織った姿に、言い訳が出来ない。気まずさと恥ずかしさに真っ赤になりながら、弟に言われるまま俺は大佐を迎えに出かけた。




つづく。

鳥ね。鳥だわ。


ガチャガチャのお嬢様、最近になって再販が出たみたいです。お待ちしておりましたお嬢様(大川ボイスで)。
頑張ってまわしてきたよおおう!。全四種一つずつは通販で購入していたのですが、細かさとパーツの多さに組み立てを迷ってました。しかも何故かノーマルがレア並みに出ないという(笑)

お嬢様は全長10センチ!この小ささなのにフル可動。指も動くぞ!!。パーツが細かいんですよう。落とすとなくすよう。
せっかくなので、「鳥」(本編ネタ)を配置してみた。モルフォ蝶なんですがまあ青いチョウチョで代わりに。惜しみないわね。

この大きさのフル可動兄さんが欲しいと、ずっと切望してるんですが…!!!

また時間出来たら、中野→秋葉原の玩具巡りしたいよう。ぷちサンプルで未だ探してるシリーズある。いつの間にか販売終了してたりするんだ(T_T;)。気が長いのも考えものです。何時までも気持ちが冷めないから買ってしまう(笑)。

君に黄色のねこじゃらし・8の続き

※昨日の続きです。



毛布の中もあったかくなってきて、暫くするとアルがリビングに戻って来た。

「兄さん。ベッドは僕がきれいにしておいたよ。大佐はすごくしょげて、大人しく寝てる」
「知るかよ。イタズラの罰だ」
「あれ、虫じゃないからね?」
「わかってる。ねこじゃらしの穂だろ?俺も昔イタズラに使って怒られた」

未だぷりぷりしている俺の横で、アルがソファーに寄りかかってしゃがみ込む。

「今日、公園散歩してた時にね、ねこじゃらしが沢山生えてる所があって」
「だからかよ!」
「まあ、黙って聞けよバカ兄」
「ば…おまえ…!!」

バカって!お前、兄ちゃんよりもあの無能大佐の肩を持つのか?!、猫好きの猫補正はそんなに強いものなのか?!。今度は俺がしょげそうだよ。と、言いたい所をアルが遮る。

「ちょうど夕方でさ、たくさんのねこじゃらしが夕日に光って揺れて、金色の波みたいにきらきらして、すごく綺麗だったんだ」
「…ふうん」
「綺麗だね。兄さんにも見せたいねってつい僕が言っちゃったんだ。そうしたら、大佐が一生懸命ねこじゃらし集めてくれて」
「…で、何でベッドなんだよ」
「兄さんは猫のお土産って知ってる?」

あれだ。野良猫が飯のお礼に、小鳥や鼠の死骸やら置いていくやつだ。
猫にとっては良い物なのかもしれないが、人間にしてみれば恩を仇で返すようなちょっとした嫌がらせ。しかも、奴らは人間が必ず通りそうな玄関やドアの真ん前を抜け目なく選びやがる。

「野良猫が、良かれと思って無自覚の嫌がらせを…」
「嫌がらせじゃないよ、感謝の気持ちだ。大佐も、兄さんにお土産渡したかったんじゃないかな。いつもありがとうって」
「…でも、そんなの。迷惑だ」
「明日はちょっと優しくしてあげなよ?」

俺は何も言えなくなって、そのまま寝たふりをしてしまった。了見の狭さを露呈してるようで恥ずかしくなる。勿論、誰からもそんなこと言われていないんだけど。
胸がつきつきと小さく痛む。鼻の奥がつんとする。ありがとうとか、なんだよそれ。俺に感謝とか、お土産とか。大切な弟まで味方に引き込みやがって大佐め。あんたが急にそんな事するから、変な感じになったじゃないか。
気まずさに目を閉じた寝たふりは、いつの間にか本当の睡魔に変わっていた。男の体温から離れて一人で眠るの事が久しぶりだと気付いたのは、意識が落ちる寸前だった。




なんと明日は次の話を上げますよ(笑)。

ねむい。あたたたかい。


本日、あんまりにもあったかくて、眠さ爆発。いかんのうねむいのう(´`)。
夜になってもあたたかい関東。今もあったかくてびっくりします。

久しぶりに黒猫大佐を書きためました。だから眠いんですが(笑)。一気に上げようかとも思いましたが、推敲しながら日記に上げようかなと。今回書き貯めた分にはエロないし!。
黒猫大佐はもうオチが決まっているので、書いてて楽です。間は埋めるように小ネタを書けるので、うっかりながくなるぞお楽しいぞお。でも最後も書きたいぞお。

ゲーム「ラストウインドゥ」も佳境です。もう最後なんだなと思うと、終わらせられない(笑)。このシリーズは雰囲気がいいです。
これ終わらせたら、やり直しだけど「花と太陽と雨と」がやりたくなった。違うベクトルだけど独特の雰囲気があって、これも素晴らしいゲーム。ちょっと人を選ぶが、私はすき。

画像は母上からもらったクリップ。ひとがたの上に肌色(笑)気持ち悪い(笑)(笑)。文房具はどんだけあっても楽しい(*´`*)。
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