※昨日の続きです。



毛布の中もあったかくなってきて、暫くするとアルがリビングに戻って来た。

「兄さん。ベッドは僕がきれいにしておいたよ。大佐はすごくしょげて、大人しく寝てる」
「知るかよ。イタズラの罰だ」
「あれ、虫じゃないからね?」
「わかってる。ねこじゃらしの穂だろ?俺も昔イタズラに使って怒られた」

未だぷりぷりしている俺の横で、アルがソファーに寄りかかってしゃがみ込む。

「今日、公園散歩してた時にね、ねこじゃらしが沢山生えてる所があって」
「だからかよ!」
「まあ、黙って聞けよバカ兄」
「ば…おまえ…!!」

バカって!お前、兄ちゃんよりもあの無能大佐の肩を持つのか?!、猫好きの猫補正はそんなに強いものなのか?!。今度は俺がしょげそうだよ。と、言いたい所をアルが遮る。

「ちょうど夕方でさ、たくさんのねこじゃらしが夕日に光って揺れて、金色の波みたいにきらきらして、すごく綺麗だったんだ」
「…ふうん」
「綺麗だね。兄さんにも見せたいねってつい僕が言っちゃったんだ。そうしたら、大佐が一生懸命ねこじゃらし集めてくれて」
「…で、何でベッドなんだよ」
「兄さんは猫のお土産って知ってる?」

あれだ。野良猫が飯のお礼に、小鳥や鼠の死骸やら置いていくやつだ。
猫にとっては良い物なのかもしれないが、人間にしてみれば恩を仇で返すようなちょっとした嫌がらせ。しかも、奴らは人間が必ず通りそうな玄関やドアの真ん前を抜け目なく選びやがる。

「野良猫が、良かれと思って無自覚の嫌がらせを…」
「嫌がらせじゃないよ、感謝の気持ちだ。大佐も、兄さんにお土産渡したかったんじゃないかな。いつもありがとうって」
「…でも、そんなの。迷惑だ」
「明日はちょっと優しくしてあげなよ?」

俺は何も言えなくなって、そのまま寝たふりをしてしまった。了見の狭さを露呈してるようで恥ずかしくなる。勿論、誰からもそんなこと言われていないんだけど。
胸がつきつきと小さく痛む。鼻の奥がつんとする。ありがとうとか、なんだよそれ。俺に感謝とか、お土産とか。大切な弟まで味方に引き込みやがって大佐め。あんたが急にそんな事するから、変な感じになったじゃないか。
気まずさに目を閉じた寝たふりは、いつの間にか本当の睡魔に変わっていた。男の体温から離れて一人で眠るの事が久しぶりだと気付いたのは、意識が落ちる寸前だった。




なんと明日は次の話を上げますよ(笑)。