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大佐に甘くてストレスシリーズ(仮)

※タイトルが決まりません。前回の続き。大佐→→←←←←←←←←←兄さん



若干の怪我と、若干の信用を失いつつ、それでも私は仕事に励んでいる。時折、部下がすれ違いざまに小さな声で、「ペドフィリアめ」と吐き捨てるように呟いてくるが、気にせず大らかに構えるよう、心がけたりもしている。

前回、自分の失言のせいで、目の前でいたぶられる私を見ていた鋼のは、反省したらしく皆の前では他愛ない会話ばかり振ってくるようになった。
鋼のは全てにおいて横柄だが、実は周囲をとても気にしている子だ。本当は、あまり彼には気を遣わずに、のびのびと育って欲しいと願ってやまない。
中尉と一緒に出て行った後、『大佐と二人にきりにならないように!』と、厳重に念を押されたようだ。
鋼のは、誰にも見つからないように、私の残業時間にこっそり顔を出してきた。

「大佐、こないだは、その」
「いいよ。過ぎた事は仕方ない」
「ていうか、中尉があんなに激しい人だとは」
「彼女はすごいぞ。君に言えないような事は沢山ある。逆らわない方が身のためだ」

しょんぼりしながら、机の真横まで来た。私の顔を見る表情は、反省したのがすっかり元気がない。

「傷、痛いか?」
「痛いが大した傷ではないよ。こんな所に青あざがある事が、どうにも恥ずかしいがね」

鋼のは私の額に貼ってある絆創膏を、心配そうにじっと見つめてくる。

「大佐、これ」

コートのポケットの中から、これでもかという量の絆創膏を鷲掴んで出し、机の端に盛る。私に渡すためにこんなに沢山用意したのかと思うと、ちょっとホロリとする。

「ありがとう。大切に使うから、君も早く帰りなさい」

鋼のの気遣いをきちんと受け止めようと、額の絆創膏をはがした。山から一枚手に取り貼り直そうとするが、手元が見えないのでうまく行かない。

「貸して。俺が貼ってやる」

鋼の義手で器用に絆創膏を開くと、小さな体は私の真横に寄ってくる。手を伸ばして、私の前髪をかきあげる。
距離の近さに照れて、うっかり目線を上げたら、鋼のと目があった。
彼も少し照れた顔で、あまりの可愛さに手が伸びそうになる。邪念を断ち切るように視線を落とすと、額に優しく貼られる絆創膏。
そして、追うように絆創膏の上に重ねられる、柔らかな唇の感触。

「…大佐の痛い所なんて、全部俺が舐めて治してやんのに」

ぼそりと告げて、鋼のはそそくさと部屋を出て行ってしまった。突然の事に呆けて、何も言えずに見送った自分が疎ましい。

戻って来て欲しかったが、鋼のは戻ってこなかった。照れと甘酸っぱさに、つい頭を机に打ち付けて、すごく痛くてもんどり打って、さらに膝を机の脚にぶつけた。

「くっ…!」

夜の司令部で、一人痛みを耐えながら思う。痛い所は鋼のが舐めてくれてしまうらしい。そんな事言われたら、年中傷を用意して、彼に舐めて貰うのに。
しかし本当にそんな事があれば、違う所だって舐めて欲しくなるし、この際、鋼のの体を私が舐めてもいい。というか、舐めまわしたい。
ああ、突然に酒が飲みたくなった。今夜はきっと美味い酒が飲めるに違いない。

「残業って、楽しいな…」

一人呟く、春の夜であった。

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