スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

兄さん再び大佐を落としにかかる

※3/23春は恋の季節の続き。
べったりロイ→←←←←←←←←エド




庭に集まり夜な夜な盛っていた猫達も、そろそろ落ち着いて来たようだ。煩わしい鳴き声から、やっと解放されたと思っていたのに。どうにもこちらの猫はいつまでも盛っているようで大変迷惑だ。

再び、鋼のがにゃあにゃあ言いながら私の仕事の邪魔をしに来た。1ヶ月振りに顔を出したと思えば、いつもとは比べ物にならない厚さの報告書を差し出して来る。

「なんだこれは」
「報告書であります、大佐殿」
「中身半分以上が、妄想小説のようだが」
「まだ来ぬ二人の新婚初夜をロマンティックに妄想してみました。寧ろこれを手本に、大佐としてみたいな〜ってくらいで」

稚拙な割に良くできた文章で、私と鋼のが一夜を甘く過ごす過程が事細かに書かれている。こんな所に彼の才能の非凡さを発見しても仕方の無い事なのだが。うっかり最後まで読んでしまい、色々なダメージを食らってしまった。今も相当に頭が痛い。

「あのなあ、これは上官に対する侮辱に当たるぞ」
「侮辱なんて酷いじゃねえか。俺からの愛のこもったラブレターなのに」
「報告書に挟んで持って来るな!」
「挟んだら読まねえじゃねえか!」
「燃やして当然の内容だ、こんな…」

頭を抑え、机に突っ伏さないよう体を支える。子供相手に声を荒げたくはないが、あまりに厄介過ぎてつい本気になる。
鋼のは仕事をしている私の真横で、書類を押しやり机に腰掛け、近い距離からこちらを見下ろす。じろりと睨んでやると、にやにやと目を細めて顔を近付けて来たので、書類に顔を戻し彼からの攻撃をガードする。ああ、本当に猫のようだ。猫の方がこんなに手間はかからないが。

「男同士でも愛を確かめあったり、十分に気持ち良くなれると、俺の綿密なシュミレーションの結果そういう答えが出たんだけど」
「シミュレーション、な。お前のはただの迷惑な妄想だ」
「俺、大佐の体は結構触ってるから、これはかなり現実的な」
「それ以上続けたら、お前の三つ編み燃すぞ」

隣でこんな事を言われながら、仕事に身が入る訳がない。鋼のが書いてきたシミュレーションと称する妄想小説の中の、彼が私の男性器を舐めしゃぶる描写が、無駄に長くて、無駄にリアルで、無駄に気持ちよさそうで頭から離れない。
この、体に対して意外と大きめの口が、柔らかくむにゅむにゅと動いたらなんて、私までおかしな妄想をしてどうする。

そんな訳で、冷たい態度を取りながら、出来るだけ彼の顔を見ないようにしていたのだが、鋼のには何をしても効果はないようだ。

「大佐。たーいさ。照れちゃった?なあ、ちょっとはこっち見ろよ」

知ってか知らずか、アピールは続く。私に直接触ると怒られる事は学習したようで、触れないように体を近付けてくる。
覗き込んで来る金色の瞳。視線が合わさる一瞬に、誘惑に負けそうになる。

「大佐は深く考え過ぎなんだ。お互い好きなら一緒になるのが通りだよ」

子供の癖に知った風な口をきく。鋼のの手が差し出されて、私の頭を優しく撫でる。頭を撫でられるなんて、どのくらいぶりだろうか。このまま誘惑に負けてしまいたい自分と、拒否する自分の力が拮抗して、体が動いてくれない。

「たいさ。俺もたいさが好きだよ」

鋼のが、甘い声音でにゃあんと鳴いた(ような気がしただけだけだが)。本当に負けそうになったので、意識を強く保つ為、余裕を見せてニヤリと笑って見せる。

書類を抑えていた手を鋼のに向かって伸ばす。長い前髪の先を弄り、首筋から耳の後ろをなぞり、ご丁寧に指先を耳の穴にくるりと差し込んでやる。

「うひゃあ!!」

びくっと肩を揺らし、高い声を上げた鋼のが、机から勢い良く転げ落ちちた。ひっくり返ったまま真っ赤な顔でこちらを見上げ、口を鯉のようにぱくぱくしている

「いくらシミュレーションを重ねても、実地には及ばん。早く戻りなさい」
「っふも、…おぉおおお…」

何かを言おうとしているが、あからさまに『感じました』なんて反応しておいて、恥ずかしくない訳がない。
何も言えないまま、子供はよろよろとそのまま執務室を出て行ってしまった。

「はぁ…」

戻って来ないことを確認して、大きなため息と共に、書きかけの書類の上へ崩れ落ちる。こんなやり取りが続いたら、本当に身が持たん。耳を一撫でしただけであんな声を上げるなら、他はどうなると言うんだ。

没収。という都合の良い言い訳を使って、一先ずは鋼のの大作を鍵付きの引き出しへとしまった。あれに続きがあるなら、ちょっとだけ楽しみにしたい気持ちも、少なからずある。
残念ながら気持ちは引き出しにしまえないので、こっそり心の隅に隠しておく事にした。

前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2009年04月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
アーカイブ