何も残らない。
残るのは楽しかったという残骸。
幸せの中に身を投じることができない。終わりばかり考えて、ああ、ならばなるべく早く終わってしまえと自分から終わらせようと早歩きしてしまう。
早く終わろう、早く終わろう、幸せが絶頂のうちに、早く終わらせてしまおう、好きが盃からあふれているうちに。
恐ろしくて恐ろしくてその場面に出くわしたくない。
終わりが近づけばきっとその時私は手首をえぐり散らすだろう。
また、水に足を突っ込むだろう。
男のために水上げして、男がいないからと水に戻って、男ができたから水から上がる。
とても愛されてる、とても好かれてる、中村さんは私のことが本当に大好きなんだってわかる。泣き喚いてやめてくださいと叫べるほどには。
後ろめたいから目を見て話せない。自分があんまりにも出来が悪すぎて目を見て話せない。
ごめんなさい、貴男と話しながら遠藤のこと考えてます。
貴男と話しながらなんて不細工なんだって思ってます。
貴男と話しながらなんで私があなたの初めてじゃないんだろうって思ってます。
貴男と話しながらなんで貴男はこんなにも女性の扱いに慣れてるんだろうって思ってます。
私の想像とは全く違う。私が思ってたのと全然違う。だからだから嫉妬する。
いったい誰があなたにそれを教えたの。
いったい誰があなたをそんな風に育てたの。
いったい誰が貴男に女性の扱い方を教えたの。
どうしてそんなに女性の扱い方になれてるのどうしてそんなにグイグイこれるの。
私の想像していた中村さんとは違う。
私の想像していた中村さんじゃない。
愛されるのが怖い。愛される価値もないなのに愛されるのはおかしい。私は愛されちゃいけない。
おかしいんだ、のちに来る対価が怖い、何をはらったらいい、今からなに払えばいい
どんなに顔面がファニーでも心が健康な状態であって、愛すること愛されることが当たり前で、ありがたく受け入れられる受け皿で
疑うことをしないで、まっすぐに受け止めて、受け止めてくれるから、怖くなる、そんな目で見ないでくれ。そんな感情で私を見ないでくれ。
私は貴男が思うほどまっすぐじゃないし、ひねくれてるし、言葉を言葉通りに受け取られない。
貴男が欲しいといったのも、前の職場の女からあなたを奪って「私の物」にしたいってだけだった。
そんなしょうもない子供のような物欲を若さと皮の可愛さを前面に使って馬鹿みたいに恥ずかしい具合に貴男に売り出して、手に入れてああ満足、もうどうでもいい。となってるのに、そんな期待を持った目で見ないでほしい。私はただ汚いんだ。
汚いから罪悪感があふれてしょうがないんだ。
できるならまっすぐ人を愛してみたいし、すべてを疑いながら愛を笊に広げて間引くようなこともしくない。
疲れて風呂に入ってない、首に体に貴男の匂いが移って香るんだ。
汗と柔軟剤の匂いをもう一度嗅ぎたいんだ。
泣きながらこんな女の子でごめんなさいと繰り返すしかできない。
こんな子でごめんなさい。
すぐにでも水商売上がるから…
大好きです。
だから、早く終われますように。