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サイドストーリー短編 『斑髪』〜ダイアン

 
(注※ 長文の為“続き”あります)





 
物心ついた時から、母の髪は斑(まだら)色だった一一。






 男なんかに負けるものか一一。

 男なんか、汚らしい欲望の塊だ一一。

 だから、仕事をしている父親は尊敬するけど、人間としては心底軽蔑する一一。

 何故なら一一。






 母が、妻がいながら一一他の女を抱き一一あまつさえ子供までもうけたから一一。




 汚らわしい一一。






 ダイアンはいつも不思議に思っていた。

(ママは何で、あんな髪なんだろう……)

 ダイアンの母プリシラは、実に個性的美貌を誇っていた。父フレドリックは、ひとつ間違えると見られない顔のパーツだと揶揄していたが、ダイアンは母の顔立ちが好きだった。確かにバランスの取れた顔ではない。口が大きすぎるのだ。しかも母はよく、その口を大きく開けて豪快に笑った。しかしダイアンは、その笑顔が大好きだった。母のさっぱりとした性格が顕れているからだ。
 ダイアンにとっては、非の打ち所がない一一みんなから好かれる母は誇りだった。

 だが一点だけ一一。

 ダイアンが、どうしても好きになれない所があった。

(赤……黒、茶、銀……)

 母の頭には、ありとあらゆる髪色があった。あろうことか、母は髪を色々な色に染めているのだ。それも斑(まだら)にである。
 それは異様な姿だった。屈託なく笑う母の頭に、不自然に乗った斑の塊一一。
 そして何故か、周りの誰も母の髪色を咎めないのだ。
 だが、初めて母を見たダイアンの友達は、その異様な髪色に目を見張り、ダイアンをからかった。それは、ダイアンの鋭い一瞥で止まるのだが、陰口を叩かれる。自分は何を言われても構わないが、母の悪口を言われるのは我慢ならなかった。
 だから持ち前の気の強さに腕前を加えて、誰よりも上に立った。母の陰口など耳に挟もうものなら、出向いて行き力でねじ伏せた。
 だが、何故母はあんな髪色なのか一一それを誰にも尋ねる事が出来ないまま、数年が経ったある日の事一一。

 ダイアン、11歳の春。

 その日は朝から、親友のソニアが遊びに来ていた。ドームの最高指導者であるロベルト・ガイナンのひとり娘ソニアは、生まれた時からずっと、ダイアンの一番近しい存在だった。ダイアンにとっては、最早ただの友達ではなく、姉妹以上に結びついた間柄である。
 だがこの日はもうひとり、邪魔な存在が来ていた。ダイアンがこの世で最も忌み嫌う一一。

「トニー、ソニアから離れなさいよ」

 ソニアの傍らにぴったりと張り付いているひとりの少年一一黒髪に黒い瞳を持つ少年は、ダイアンをじろりと睨みつけた。その顔立ちは、どことなく自分に似ている。ダイアンはそれが、堪らなく嫌だった。
 少年の名前はアントニー・ロイ。ダイアンの“3日違いの弟”である。もちろん双子などではない。

「お前こそ近づくな」

 少年の口から発せられた言葉に、ダイアンは激昂する。だがすぐに、その怒りを抑えつけた。少年の傍らの、憂いを帯びたソニアの顔を見たからだ。
 少年一一アントニー・ロイはダイアンの異母弟である。そう、父親は同じだが、母親が違うのだ。ダイアンが産まれて3日後に産まれた庶子なのである。
 母親は父フレドリック・ロイの秘書をしていたという。いわゆる不倫の関係である。
 ダイアンはアントニーを睨みつけると、ぷいとそっぽを向いて、部屋から出た。すると後からソニアが追いかけてきた。

「ダイアン……怒らないで……」

 心配そうにそう言うソニアに、ダイアンは笑いかけた。

「ソニアに怒ってるわけじゃないわ。あいつが嫌いなだけよ」

「トニーと仲良くしてなんて言えないけど……」

 そう言って俯く親友の悲しげな表情に胸が痛んだが、アントニーを嫌悪する気持ちはどうしても抑えられない。

(卑屈な奴……!)

 アントニーは、性格が捻れているとダイアンは感じていた。ソニアの前ではそんな様子は見せないが、いつも他人の上に立ちたがり、すぐに弱い者苛めをする。言い逃れが巧く、自分が悪い立場にならないように、根回しに抜かりない。
 そのアントニーが、ソニアに恋をしている一一ダイアンはそれが気に食わなかった。

(あんな奴と結ばれちゃったら、ソニアが不幸になっちゃうわ。徹底的に邪魔してやる!)

 ダイアンは傍らのソニアに笑いかけた。つられて笑顔を浮かべたソニアの、その優しい瞳を愛しげに見つめる。
 ダイアンはソニアを愛していた。それは恋愛感情だと一一ずっと思っていた。だから護る。誰があんな卑怯者に渡すものか。
 その時、玄関の方から甲高い声が響いてきた。女の声である。随分とヒステリックであった。

「何かしら?」

 ソニアが声のする方に向かおうとした。ダイアンは妙な胸騒ぎを感じて、ソニアの肩に手をかけて制する。

「ここにいて、ソニア。あたしが見てくるから……」

 何となく、ソニアには見せたくない一一そう感じたのだ。ヒステリックな声はまだ続いている。心配そうなソニアにウィンクして、ダイアンは足早に玄関に向かった。
 ダイアン達がいるのは二階である。玄関は階段を降りてすぐの所にある。ダイアンが階段に到達した時、その耳朶に鋭い女の声が突き刺さった。

「フレドリックに会わせてよ!」

 階段から見下ろすと、広いホールにひとりの女が立っていた。応対しているのは、ダイアンが生まれる前からロイ家に仕えている古参の女中で、ダイアンは“ばあや”と呼んでいた。
 “ばあや”は背筋を伸ばして、毅然とした口調で応えた。

「旦那様はお仕事に行かれていてお留守です。どうかお引き取り下さい」

 それに対して、女は怒りも露わにまくし立てる。

「だったら、あの女を呼びなさいよ!フレドリックの女房面しているキチガイ女を!」

 それを聞いたダイアンは、思わず階段を駆け下りた。そして足音も荒々しく女の前に走り寄る。
 女は驚いた顔をしてダイアンを見た。だがすぐにニヤリと笑う。勝ち誇った笑いであった。

「あの女の産んだ娘ね。生意気そうな小娘だ事!」

 ダイアンは女を睨みつける。そうしながら、一方では女を観察していた。
 緩やかなカールのかかった金髪に青い瞳。すらりとしたスレンダーな体を、いかにも高そうなスーツで包んでいる。年の頃は母プリシラよりも少し上に見える。一般的な基準からすると、美人の部類に入るだろう。だが険のある表情が、その美貌を台無しにしているとダイアンは感じた。

(ママの勝ちね)

 この女は、父親の愛人だ。即ち、アントニーの母親である。父親は、アントニーを身ごもったこの女を秘書の職から解雇したのだが、生活の面倒はみていた。アントニーが産まれると、ロイを名乗る事を許して、この屋敷への出入りも自由にした。だが愛人であった女とは、その関係を絶ったと聞いている。

 だが一一。

(切れてないからここに居るんだ。厚かましくもママの暮らすここに!)

 女はダイアンを見て、ふんと鼻を鳴らした。その仕草も、ダイアンには途轍もなく下品に映る。

「所詮、女の子よ。男を産んだのは私なのよ。跡継ぎを産んだ私が、フレドリックの妻になるのは当然じゃない!」

(何だと!)

 ダイアンは怒り心頭になり、足を踏み出した。

(あたしがアントニーに劣っていると!?あいつが跡継ぎ!?)

 だが言い返そうとしたダイアンを制したのは“ばあや”だった。年老いた女中は、ダイアンの肩に手を添えて優しい眼差しで制すると、目の前の女に有無を言わせぬ口調で言い放った。

「男であろうと女であろうと、ロイ家では差別は致しません。資質が全て……そしてロイ家の資質を受け継いでいるのは、ここに居るダイアンお嬢様です。残念ながら、あなたのお子様には資質がありません。ロイ家を継ぐのはお嬢様です。それは既に旦那様がお決めになっております」

「お黙り!女中風情が何を言う!フレドリックは男の子を欲しがっていたのよ!それを叶えたのは私よ!」

 もう限界だった。この女を一発殴らなければ気が済まない。ダイアンが意を決して拳を握りしめたその時一一。

「みっともない真似はよしなよ。オヤジさんは、もうあんたとは縁を切ってるんだ。贅沢を出来る位のものは貰ってる筈だ。それ以上のものは求めなさんな。でないと自滅するぜ」

 女の後ろから聞こえた声に、ダイアンは力を抜く。女はびくりと体を震わせて、ゆっくりと振り返った。

「スティーブン兄さん……」

 ダイアンの傍らで、小さな呟きが聞こえた。見ると、いつの間にかソニアが隣に立っている。ダイアンがソニアの手を握ると、ソニアがにっこりと笑って握り返してきた。

(暖かい……)

 ソニアに触れると、いつも安心出来た。この娘(こ)は、普通の人とは違う力を持っている。
 ダイアンは再び前を見据える。女の後ろ一一開け放たれた玄関から入ってきたのは、背の高い男だった。優しげな表情とは裏腹の、剣呑さを持ち合わせた男は、ダイアンの父親の従兄弟の息子である。スティーブン・ロイ一一まだ21歳の若さではあるが、フレドリック・ロイの直属の配下で、このドームの私設軍の最高司令官である。

「引きな、キャシー・ブレナンさん。さもなくば、今の恵まれた境遇を失う事になるぜ。アントニーもここに出入り出来なくなる。全く……バンタン氏から何を吹き込まれたかは知らないが、馬鹿げた行動は控えた方が、あんたの身の為だよ」

 スティーブンの声は穏やかだったが、口調には剣呑さが溢れている。女一一キャシー・ブレナンはスティーブンを睨みつけていたが、不意に目を背けると、ダイアンの背後に声をかけた。

「トニー、いらっしゃい。帰るわよ」

 ソニアは振り返ったが、ダイアンは振り返らなかった。じっとキャシー・ブレナンを睨みつけている。
 そのダイアンの側をアントニーがすり抜けていく。母親の元へ向かうアントニーの表情は、気遣わしげだった。彼はちらっとソニアを見た。そのアントニーを、ありったけの憎悪を込めてダイアンが睨みつける。
 アントニーはぷいと顔を背けた。そして憮然とした表情で、母子は出て行った。

「奥様が買い物に出られていて、ようございました」

 “ばあや”が溜め息と共にそう言うと、スティーブンが苦笑いを浮かべて返した。

「あの女には、常に監視を付けているんだ。バンタン議員の配下が接触したって報告があったから、嫌な予感がして来たんだが……大丈夫か?ダイアン」

 最後はダイアンへの問いかけだった。ダイアンはにっと笑って、それに応じる。

「大丈夫、平気よ」


 うん、声は震えてない。成功だ一一。


「ダイアン……」


 でも、傍らの親友は騙せない一一。


 心が壊れそうな程、怒りに沸騰している事を一一。




 その夜、ダイアンを心配して泊まり込んだソニアと共に、“ばあや”から聞かされた話は、母親の斑に染められた髪の理由だった。

「旦那様は、奥様の髪をそりゃもう讃えていたんでございますよ。それは美しい金色の髪で……」

「金髪?ママは金髪なの?」

 様々な色が斑に覆う母の髪は、元が何色なのか分からない。何しろ母は、眉毛まで染めているのだ。だがふと思う。あの斑の中に、金色はあっただろうか。

「おば様の髪……金色はないわ……」

 ソニアがそう呟く。その通りだった。赤、黒、茶、白までも彩る母の髪には、元々の色である金色がないのだ。



「あの女ですよ!奥様と同じ金髪を持つあの女が旦那様を誘惑して……同時期に身ごもった事を知った奥様は、ノイローゼになってしまわれて……」

 ダイアンは昼間見たキャシー・ブレナンを思い浮かべた。緩やかな金色の巻き髪を一一。

「ある日、髪を真っ黒に染めてしまわれたのです!次の日には赤く、次の日には茶色に……そうしていく内に、あんな風に斑になってしまったのですよ。おいたわしい……」

 ダイアンは息を呑んだ。父親が讃えたという美しい金髪一一夫の愛人が同じ色の髪を持つと知った時に、母の心は壊れたのか。

「お嬢様を出産されてからは、落ち着いたように見えたのですが……髪だけは戻りませんでした」

「戻るわけない。ママは父さんを許してないのよ。まだあの女を養ってるし、アントニーはこの家に出入り自由だし……傷が癒えるわけないじゃない!」

 ダイアンは歯噛みした。怒りで体が震える。そんなダイアンに、ソニアがぴったりと寄り添った。
 暖かい体温と甘い香り一一怒りは消えないが、ソニアの存在はダイアンの心を落ち着かせた。


 可哀想なママ一一。

 夫の愛人が自分と同じ髪色だと知った時、どんなに苦しんだだろう。

 その裏切りの証が、自由にこの家を出入りしている。

 未だに苦しみは続いているのだ。


(許さない……)

 ダイアンは心の中で呟く。声にしたらソニアが心配する。だから心の中で呪詛する。

(父さんもあの女も……アントニーも許さない……)

 呪詛はダイアンの心の中で、熾りのように沈み堆積していく一一。






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more...!

サイドストーリー短編 『恋慕』〜ジェルミナ



振り下ろされたナイフは一一。

真っ直ぐに、彼の顔を狙っていた一一。

思わず庇った左腕に一一。

躊躇いも見せずに切りつけられた、銀色の切っ先一一。

飛び散る血をものともせずに一一。

抜き去り、再度振り下ろされる凶器の煌めきを一一。

それを振り下ろす、母の顔(かんばせ)を一一。

とても美しいと、彼は思った一一。






 年に一度だけ、人間のドームを訪問する。

 5歳の時に、初めて訪れてから繰り返されるこの訪問により得られる時間は、彼にとって、掛け替えのない至福の時間であった。

 会いたいのは、唯ひとり。

 訪れる度に、優しい笑顔で迎えてくれるその存在が、ずっと彼を支えていた。

 ヴァシュア最高の貴人の息子という立場は、彼にとっては決して、有利なものではなかった。

 周囲は、彼を大事に扱ったが、それは偏(ひとえ)に父への敬意に依るものであった。

 ヴァシュア最後の純粋な子供である異母兄は、彼の存在を認めなかった。

 甘えられる筈の母は、彼を産んでから、まるで彼がその生命を搾取したが如く、疲弊していった。

 母に抱かれた記憶は少ない。
 父はいつも、母だけを見ていた。

 父の従者も召使いも、陰では彼を“半端者”と蔑んだ。

 人間との混血同士が、肩を寄せ合うように引き合う。

 特に、生まれた時から共に育った友は、常に彼の側に侍り、彼を助けてくれた。

 年上の二人は、優しく指導をしてくれた。

 支えてくれた人はいる。けれど、彼にとっての一番の支えは。






「待ってるわ。ジェルミナが会いに来てくれるのをここで待ってるから……私は……私はいつでもジェルミナを思っているから……来れば必ずここに居るからね」






 そこに行けば、君がいる。

 そこに行けば、君の笑顔がある。

 だからどんな事があろうとも。

 そこに行く為に、何としてでも生き抜く。






 再び振り下ろされたナイフが、突き立てられたのは一一。

 彼を庇った、父の肩だった一一。

 見上げた父の、天上の美貌は一一。

 悲痛に歪んで見えた一一。

 母は、一瞬の躊躇の後(のち)、父の肩からナイフを抜いて一一。

 きびすを返して壁に向かう一一。

 そこには、母が大切にしていた油絵が一一。

 父と母が踊る構図のその絵に一一。

 何度も血の付いたナイフを振り下ろす母は一一。

 やはりとても、美しかった一一。






 目の前に座る笑顔を見て、どうしても我慢出来ずにくちづける。

 唇はとても柔らかく、吐息は甘く彼を誘(いざなう)う。

 驚きをたたえた緑色の瞳が、とても愛しいと思う。

 いつまでも手を振る赤い髪の面影を、心に深く刻み込む。






 君の為に耐える。

 どんな迫害を受けようとも、怯まない。

 ヴァシュアの貴公子が集まるこの寄宿学校で、味方はただ二人だけ。

 だが負けない。やられたらやり返す。

 そうして迫害を跳ね返して、誰にも負けない立場になった。

 全ては君を迎える為。

 君をこの腕に、抱(いだ)く為。






何度も何度も振り下ろされたナイフが一一。

絵をズタズタに切り裂いていった一一。

その様子を悲しげに見つめていた父が、側で呆然と立ち竦む黒衣の友を呼んで一一。

彼を託す一一。

そして、夜色のマントを翻して一一。

狂気のナイフを振り下ろす母の後ろに立つ一一。

優美な指が、母の首筋に触れると一一。

母は静かに倒れ込む一一。

父は、そっと母を抱(いだ)く一一。

父に抱(いだ)かれて眠る母は一一。

喩(たと)えようもないくらい、美しかった一一。






「会いたい……ソニアに会いたいよ、キリア……」






 目に入るのは、彼女の姿だけ。

 瞳と同じ色のドレスを着たその姿は、世界で一番美しい。

 逃げる背中を追いかける。
 恋敵から、彼女を取り返す。

 掴んだ腕は、離さない。奴には決して渡さない。

「私に子供を授けて下さい」

 やっと言えた言葉は、本当は言いたくなかった。

 子供なんかいらない。

 欲しいのは、彼女だけ。

 柔らかいその唇に、刻印の如く、強く強く、くちづける。

 次に会う時は、彼女の全てが彼のもの。






 闘いは熾烈を極めた。けれど引く訳にはいかない。

 居城のヴァシュア達が、僕を見ている。

 この闘いに勝って、領主として認められるんだ。

 傍らの黒衣の友が、力づけるように、僕の肩に手をかける。

 頷いて、光の輪を発動する。

 キメラの群れに飛び込むと、友の刃(やいば)が異形を切り裂く。

 濁った血の飛び散る中で、次々と倒されるキメラの群れ。

 目を見張る他の戦士達を横目に。

 僕と友は、戦場を駆け巡る。

 全ては君を迎える為。

 君をこの腕に、抱(いだ)く為。






悪夢は毎夜、彼を苦しめる一一。

振り下ろされるナイフ一一。

切り裂かれる油絵一一。

そして、何よりも一一。

母の口から放たれた言葉が一一。

彼を毎夜、苦しめる一一。






「子供なんか、望まなければよかった」






 一直線に君が向かってくる。

 僕の腕の中に、飛び込んでくる。

 抱(いだ)いた柔らかい感触は、夢ではない事を教えてくれる。

 君の口から出て来た言葉は、僕に最高の喜びを与えてくれた。

「会いたかった」






愛してる
愛してる

この肌も髪も唇も

みんなみんな
僕のもの

共に生きて
共に死ぬ

この刻印に誓う

決して君を
離さない







もう
悪夢は見ない一一。




サイドストーリー短編 『記憶』〜シャンティ



 失った記憶がある――。






 物心ついた頃から冷たい視線に晒されていた。周りの大人達は、まるで汚らわしいものでも見るように彼を見ていた。


 何という醜い子一一。
 ヴァシュアの血を引いているとは思えない――出来損ないの半端者一一。


 そんな彼に、唯一優しくしてくれていたのが、母親だった。

「お前はあたしの宝物だよ。世界一可愛い宝物」

 そう言って抱き締めてくれる母親の暖かい腕の中だけが、彼の居場所だった。
 彼女は美しかった。その美しさは周りの者達とは違う、生き生きとしたものであった。
 周りにいるヴァシュアという生き物は、とてつもなく美しかったが、その美はまるで生気のない、儚い美のように感じられたのだ。
 その中に――父親がいた。

 抱かれた記憶はない。いつも離れた位置から彼を見ていた。
 この父親も美しかったが、彼には冷たい彫像のように感じられた。めったに口を開かない寡黙な人であった。

 ある日、彼は階段から突き落とされた。後ろから押されたのだ。幸い命に別状はなかったが、母親は血相を変えて、父親に詰め寄った。

「冷たくするならなおしも、命まで奪おうっての!?」

 その夜、母親は彼を連れて、ヴァシュアの居城を出た。ほんの少しの荷物を二人乗りの自動走行車に載せて、巨大なドームを後にする。
 彼が4歳の時であった。


 母親は舞台で父に見初められたのだそうだ。

「おそらく歌姫ハーミリオンに重ねたんだろうね。こちらは場末の小さな劇団なのにさ。ドームが丸ごとスポンサーになってたあちらとは、規模も品も大違いさ。あの方から求婚された時にゃ、天地がひっくり返る程の大騒ぎだったよ」

 母親は踊り子だった。小さな劇団の売れっ子だった彼女が、ヴァシュアの奥方になろうとは、誰にとっても信じがたいものであっただろう。
 ヴァシュアを出奔してからの1年間、母親は彼を連れて方々(ほうぼう)のドームを渡り歩いた。小さな舞台や酒場のショーで踊る美しい母親に、酒臭い男達が群がる。生きる為に、母親は何でもした。
 夜な夜な部屋を訪れる男達。そんな時、彼は誰に言われるでもなく、静かに部屋から消えた。小一時間程して部屋に戻ると、母親は必ずシャワーを浴びて待っていた。そして彼を抱き締めてくれる。男の残り香はなかった。

 ある日、母親と劇団主が口論をしていた。

「給料を引いてもいいから!何とか手に入れておくれよ!」

「冗談じゃない!辺境じゃヴァシュアへの風当たりは強いんだ!血液パックなんか手に入らねぇよ!」

 ヴァシュアは定期的に人間の血液を摂取する。半分がヴァシュアの彼も、定期的に血液が必要なのだ。だが辺境の地では、血液パックを手に入れるのは困難である。医療用輸血パックを流してもらうしかない。だが、おおっぴらに要求すれば、彼がヴァシュアのダンピール――人間の世界ではヴァシュアとの混血をこう呼ぶ――だという事が知られてしまう。辺境におけるヴァシュアへの嫌悪や憎悪の感情は相当なものであった。
 それでも母親は彼の為に、色々な手段を用いて血液パックを手に入れていた。だがそれも、次第に難しくなってきていたのだ。

「お前が自分の血をガキに飲ませりゃいいじゃないか!」

「出来るもんならやってるよ!あたしの血でいいならいくらでも!でも……出来ない……やっちゃいけないんだよ!」

 母親の叫びは悲鳴となる。血液パックがなければ我が子は死んでしまうのだ。
 結局、何とか手に入れた血液パックを持って、ふたりはそのドームを後にする。
 ところが次のドームを訪れた時、思いもよらぬ事が起きた。ドームに入る事を拒否されたのだ。どうやら前のドームから連絡が来ていたらしい。

“ヴァシュアを入れるな”

 母親は何も言わずにドームの入り口できびすを返した。
 それからの3日間は、正に地獄であった。自動走行車の燃料はすぐに尽き、ふたりは遮蔽マントを身に付け、簡易生命維持装置を持って、一番近いドームを歩いて目指す。時々すれ違う自動走行車は、母子の姿が見えないかのごとく、無視をして通り過ぎた。
 昼間の灼熱の太陽、夜は極寒の大気、時折襲ってくる電磁嵐に、荒野の獣たち――。
 だが母親は泣き言は言わなかった。遮蔽マントで彼を庇い、夜は火を焚き、獣を牽制しながら少しずつ進んでいく。しかし、前方にドームの屋根を認めた時に、その母親の口から、絶望的な呻きが発せられた。

「ヴァシュアの……ドーム……」

 ヴァシュアと人間のドームは外側の殻の色で区別されていた。ヴァシュアは黒、人間は白。向こう側に見えるドームの色は……黒。
 ヴァシュアのドームを出奔してきた自分達が、同じヴァシュアの同胞に助けを求めるわけにはいかないー―。
 母親の体から力が抜ける。それまで彼女を支えてきた何かが、音をたてて崩れていく――。乾いた大地に倒れ込む体。 もはや立ち上がる力は残っていなかった。
 彼は母親の横に座り込む。小さな手が、かつては美しかった金色の髪を撫でる。

――歌姫ハーミリオンと同じ色の髪――

 今ではすっかりくすんでしまったこの髪が、自分をヴァシュアの奥方にしたんだと、笑って話してくれた。

「母さん……」

 母親が彼を見る。そこだけは彼と同じ灰色の瞳。
 震える手が、そっと彼の頬を撫でさする。

「お前は……あたしの父さんそっくりなんだよ。最高の芸人だった。ついぞ観客を退屈させた事のない、最高の道化者……あたしの誇りだったんだ……」

 母親のまなじりから涙が零れる。それは乾いた大地に吸い込まれ、すぐに蒸発する。どんな事があっても泣かなかった母親が、遺していく我が子を思い涙を流す。

「母さんはもう駄目だよ……でもお前は幸か不幸かヴァシュアの血を引いてるから……助かる可能性が高い……だから……生き延びて……」

 母親の手が愛おしげに彼の髪を櫛けずる。彼はそうやって髪を触られるのが好きだった。
 母親は決意したように、彼にこう告げる。

「……母さんの血を飲んで生き延びなさい……」

 彼は暫くその言葉の意味を考えているようだった。そしておもむろに首を振る。きっぱりと振る。それは断固たる拒否であった。

「それはしちゃいけない。出来ねぇ」

 母親は力なく笑う。もはや体を動かす事もかなわない。声を出すのも絶え絶えである。

「やれやれ……ヴァシュアの血ってのは厄介だね……こんな小さな子でも……禁忌は本能的にわかるのかねぇ……それとも母親だから嫌なのかい?」

 彼はまだ首を振る。ひたすら首を振る。まるで、首を振るのを止めたら、目の前の母親が死んでしまうと思っているかのように……首を振る。


「いいんだよ、だって母さんはどうせ死ぬんだからね。禁忌を犯す事にはならないよ……お願いだから……母さんの血を飲んで生き延びなさい……」

 彼は聞かない。首を振り続ける。

ずっと――
ずっと――



――そこから記憶がぷつりと途絶えた――





 気が付くと、目の前に大きな自動走行車が止まっていた。幾人かの人影が動いているのが見える。
 彼の前にはひとりの上品そうな女性がしゃがみ込んでいた。女性は彼の頭に布をあてがっている。

「ひどい怪我だわ。電磁嵐が何回か襲ったみたいね。何が当たったのかわからないけど、多分脳にも傷が……」

 女性は眉をひそめて隣に立っている者に話し掛ける。

「とにかく、居城に連れて帰ります。手術が必要だわ。それと……ラヴゼイ卿の奥方のご遺体は……卿の元に送り届ける事」

「酷い状態でございます、奥方様。荼毘に伏された方がよろしいのではないでしょうか?」

「そのままの状態で……というのがラヴゼイ卿の要請です。傷まないように処置して、送って差し上げて……何もかも遅すぎたのよ。ラヴゼイ卿に何と言ってお詫びしたらいいか……せめてこの子だけでも……」

 女性は再び彼に向き合うと、ゆっくりと話し掛けてきた。

「自分の名前を言える?」

 彼は女性を見ていなかった。彼の視線は女性の肩越しに、遮蔽マントをかけられた小山を見ていた。それに気付くと、女性は小さい溜め息をついて、彼の頬を撫でた。


「名前は?」

 彼の灰色の瞳が女性を見る。そして唇が動いた。


「シャンティ……」






 おいらはいつもバルコニーの手すりに座って、ソニアが起きて来るのを待つ。

 そこに座ると、おいらの目とソニアの目の位置が同じになる。

 ソニアの綺麗な緑色の瞳に自分の顔が映っているのを見るのが好きなんだ。

 ねぇ、ソニア――。

 ソニアは言ってくれたよね。母さんみたいに言ってくれた。

『可愛らしい』

 おいらみたいなみそっかすに、優しく言ってくれた。そして抱き締めてくれた。母さんみたいに優しく一一。

 だからずっと護るよ。母さんは護れなかったけど、ソニアは護る。

 なくした記憶は戻らないし、罪を犯したかどうかもわからない。

 でもそんな事はどうでもいいんだ。

 おいらはソニアが大好きだ。

 だから護る。



 約束だよ――。
 
 

サイドストーリー短編 『人形』〜ハーミリオン



辺りは薄暗く――。

仄かな明かりさえ薄暗く――。

闇が足元から這い上ってきそうで――。

動く事も叶わず――。

ただ立ちすくす――。



 ヴァシュアが暗闇を好むのはよく知られていた。
 目の粘膜が弱いとか、肌が強い日差しに耐えられないとか、様々な理由が囁かれていたが、ヴァシュアの退廃的な美しさには、闇がよく似合う。
 足元から飛行艇の低いエンジン音が微かに響いてくる。音といえばそれだけの静寂の中、寝室とおぼしき広い部屋の真ん中で、勧められるまま湯浴みを終えたハーミリオンは、所在なさげに立ちつくしていた。

 あの求愛からの2年間――時間が許す限りゼイフォン卿はハーミリオンの舞台を観に来ていた。
 舞台が終わると必ず大量の花を抱えて控え室にやって来る。そしてひととき話をしてから帰っていくのだ。
 話は――ヴァシュアの伝説や、故郷の事、旅の話や様々な星の話――

 ゼイフォン卿は素晴らしい物語の語り部であった。ハーミリオンは暫し求愛の事を忘れて、話に聞き入った。
 だがハーミリオンは気付いていた。いつも穏やかに微笑むゼイフォン卿が、途轍もなく重い重圧に耐えている事を、彼の抱えている物のあまりの多さを……そして辛うじて支えて立っている事を……気付いてしまった。

 この方は、私に救いを求めている――。

 あの時、舞台が終わってゼイフォン卿が現れた時、“彼女の命を救う”事だけではなく、ゼイフォン卿を救いたい、と思った事も事実であった。

 だから私は彼に付いて来た。もう戻れない。


 ふと浮かぶアガサの悲しそうな顔……お兄様……ニーナ……ああ、そしてジニー!赤い髪の小さな天使……そして……。

――海の見える家に住みたい――

 そう言うハーミリオンの為に、美しい海の絵を描いてくれた――


 不意にドアが開き、ゼイフォン卿が静かに入ってきた。いつも羽織っている夜色のマントはない。そうすると、少し神秘的な雰囲気がなくなり、より人間らしく見える。ハーミリオンにはそんな姿の方が好ましく思える。
 ハーミリオンはゼイフォン卿に駆け寄り心配そうに尋ねた。

「どうなのですか?その……容態は……」

 ゼイフォン卿はハーミリオンに微笑みかけた。そして安心させるようにその肩に手をかける。


「命は……取り留めました。後の処置は、私の居城で医師団に任せねばなりません。どうか心配しないで……」

 それを聞いて安堵の溜め息をつくハーミリオンを、ゼイフォン卿の腕が抱き締める。

「ハーミリオン……」


 ゼイフォン卿の胸に顔をうずめたハーミリオンが、意を決したように両手を回して抱き締め返すと、ゼイフォン卿の体が喜びに打ち震えたようだった。

「ハーミリオン……喩え貴女が彼女の為にここに来たのだとしても、私は構わない。貴女は今ここにいる。私の腕の中にいる。もう……離さない……」

 ゼイフォン卿の指が愛しげにハーミリオンの髪を櫛とく。唇が額から頬へ、そして唇に重なる。軽く……深く……吐息を吹きかける。
 ハーミリオンは何もかも受け入れる覚悟で立っていた。

――私が救えるものならば――

 やがてゼイフォン卿は、そっと両手でハーミリオンの頬を包み込んだ。銀色の瞳が熱く見つめる。彼は意を決したように口を開いた。

「貴女に……お願いがあります」

「お願い?」

 ゼイフォン卿の声にただならぬものを感じたハーミリオンは、不安げに首を傾げた。

「貴女を私の奥方として領地に連れて行く前に、ある儀式をやらなければなりません」

「儀式?それは一体……」

 ハーミリオンの不安が増す。それ程、ゼイフォン卿の口調は真剣なものであったのだ。

「血の交換」

「えっ……」

 ハーミリオンは思わず声を上げた。

「ハーミリオン……落ち着いて聞いて下さい……血の交換とは、互いの血をほんのひと口摂取し合う事です。その結果、体のどこかに刻印が刻まれます。直接血を吸う行為は、ヴァシュアではこの儀式でしか許されていません。これを《縁(えにし)を結ぶ》と言います」

「縁(えにし)を……結ぶ……」

 ハーミリオンが小さく呟く。ゼイフォン卿はそんなハーミリオンを安心させるように、金色の髪を撫でる。

「どうか……お願いします……無理矢理には出来ないのです」

 ハーミリオンは静かに目を閉じた。そして再びその目が開いてゼイフォン卿を見る。
 その瞳には迷いはなかった。

「私は貴方について来ました……どうぞ……縁(えにし)を結んで下さい」

 ゼイフォン卿はハーミリオンの頬にくちづけた。そして気遣わしげに言う。

「大丈夫、痛みはありません……ただ……」

 そう言葉を切ったゼイフォン卿を、ハーミリオンはじっと見つめた。ゼイフォン卿の表情が少し陰る。

「この……行為は……神聖で、ヴァシュアでは大変重要なものなのです。縁(えにし)を結んだ者達は、共に生きて共に死す……」

 ゼイフォン卿の声が微かに震える。

「私は貴女と縁(えにし)を結びたい……愛しています、ハーミリオン……でも……きっと貴女を傷付けてしまう……」

「傷付ける?どうして……?」

 そのハーミリオンの問い掛けに、ゼイフォン卿は頭(かぶり)を振る。


「言葉には……出来ない……だが刻印は……刻まねば……」

 ゼイフォン卿の唇がハーミリオンの首筋に押し付けられた。ハーミリオンは体を固くした。開かれた唇から吐息と濡れる感触――。
 そしてふたつの圧迫感と共に、吸われる気配――。

「あ……」

 思わず洩れる声を抑えて、ハーミリオンは耐えた。やがて唇が離れる。

「ハーミリオン……次は……貴女が……」

 血を吸う?
 どうやって?

 戸惑いながらゼイフォン卿を見たハーミリオンは、驚きに目を見張った。
 ゼイフォン卿の銀色の瞳が赤く染まっている。
 ハーミリオンはこの時初めて恐怖を感じた。


――この方はヴァシュア――

――得体の知れぬ者――

 周りがいつも言っていた言葉が蘇る。
 ハーミリオンは身を捩ってゼイフォン卿の腕から逃れようとした。しかしその腕は、まるで鎖のようにハーミリオンを締め付ける。

「ハーミリオン……私の血を……」

 ゼイフォン卿の様子は明らかに違っていた。いつもの穏やかな貴人ではない。
 彼はおもむろに……自分の右手の甲に牙を立てた。

「!」

 ハーミリオンの顔が引きつる。ゼイフォン卿は傷ついて血が流れ出した手の甲を、ハーミリオンの唇に押し付けた。

――血の匂い――

 容赦なく口腔に侵入してくる血を、むせながら飲み込んだハーミリオンの血に濡れた唇に強く自らの唇を押し付けてくるゼイフォン卿は、ハーミリオンの体を折れんばかりに抱き締めた。

 苦しい……。

 驚きと恐怖――ハーミリオンの中で、満たされる不安はやがて現実のものとなる。
 右肩にチリチリとした痒みを感じた次の瞬間、ハーミリオンの服はゼイフォン卿の爪に切り裂かれた。
 悲鳴を上げる事も、抵抗する事もかなわず、ハーミリオンは抱き抱えられて寝台に投げ出される。
 のし掛かってくる影は、あの穏やかな微笑みをたたえた貴人ではない。赤光の瞳がハーミリオンの動きを封じる。もはや逃れる術はない。


――これは誰?
――これは何?


 体のあちこちに痛みが走る。触れ合う肌が冷たい。


――私は何かをした?
――私は何処に居る?



 最後の痛みが襲った時、影の口から苦しげな呟きが洩れた。

「……止まらない……」

 ハーミリオンは天井を見つめる。
 望んでいたのはささやかな夢。
 海辺の小さな家で、貴方と暮らす。
 子供は3人――上の男の子達は一番下の妹を可愛がるの。私がお兄様に大切にされたように。
 海の見えるテラスでは、貴方が絵を描く。
 私はアップルパイを焼いて、子供達と運ぶの。
 貴方の笑顔はいつも優しくて、私は安心していられる。


――そんな小さなささやかな夢――


 もう叶わない。


 いつの間にか痛みを感じなくなっていた。
 苦しみも悲しみも恐れも何もかも……。


――感じない。
――感じない。


 ああ、そうだ。
 私は人形だ。


 いつか舞台で演じた人形。身じろぎもせず、ただ座っているだけの人形。
 あの人形は持ち主を愛して人間になった。
 私は誰も愛さずに人形になる。


――痛みも
――悲しみも
――怒りも


 そして喜びさえも、感じない無機質な人形。


 私は人形になる。


 ついと目尻から涙が流れる。
 人形ならばこれはただの雫。


 人形が両腕を伸ばして虚空を掴む。
 その手が、自らにのし掛かる背中に回される事はない。


――人間だった頃の願いはただひとつ――。


「また会えますか」




 もう会えない……。




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プロフィール
月乃みとさんのプロフィール
性 別 女性
誕生日 12月15日
系 統 普通系
血液型 O型