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とある神様の物語

気がついたら、ソレは闇の中に居ました。
たった一人、自分が何者かも分からずただそこにありました。
ただただ、闇の中を彷徨っていました。

真っ暗な闇に一人でいるのが寂しくなったので、水を満たしました。
大地を広げました。
山を起こしました。
植物を生み出しました。
そう、世界を創ったのです。

真っ暗な世界は鮮やかに色付きました。
でも、足りない。
自分のように意思を持ち動けるモノがそこにはなかったのです。
そこで、自分以外の生命体を、つまり動物を、ヒトを、生み出すことにしました。

ソレは、一人ではなくなりました。
しかし、気付いてしまいました。
自分は他のどの生命体とも違うことを。
孤独はなくなりませんでした。
他の生き物達から姿を隠すように、ひっそりと一人閉じ籠ることにしました。

どれくらいの年月が経ったでしょう。
堅く閉ざされた扉を叩くものがいました。
それは小さな二人の姉妹でした。
ソレは戸惑いました。
無視をしました。
冷たくしました。
怖がらせました。
しかし、姉妹は自分から離れていかないのです。

もう、寂しくありませんでした。

それから、ソレと姉妹はずっと一緒でした。
『誰とも同じではないけれど、全ての生命の源、還る場所』という意味を込めて、姉妹はソレに『ゼロ』という名前を贈りました。
ゼロは、その時自分が何者であるかを識った気がしたのです。

姉妹は小さな村の村長の子供でした。
姉は婿を貰い家を継ぎ、妹は同じ村の占いが得意な一族のもとへと嫁ぎました。
ゼロは、少し寂しさを覚えましたが、二人の幸せを祈っていましたから、祝福を与えました。
自分の力の一部を分け与えたのです。
結婚しても、姉妹がゼロから離れていくことはありませんでした。

ゼロは、とても幸せでした。
世界が輝いてみえました。
しかし、密やかに闇は忍び寄っていたのです。

それは、突然起こりました。
世界が闇に覆われ始めたのです。
生み出された生命体達は、喜びだけでなく負の感情も紡いだのです。
奪い合い、殺し合うのです。
それらは、大きな闇を喚びました。

嗚呼、なんて愚かなことだろう。
なんて愚かな生き物だろう。
ゼロは絶望しました。
それでも、自分に幸福を教えてくれた世界を、愛する生命達を、何より大切な姉妹を見捨てることは出来ませんでした。

ゼロは、その巨大な闇を祓うために持てる力の全てを使い、闇を打ち消しました。

しかし、今度は世界に歪みが出来ました。
今まで抑えていたゼロの力は、この世界には強過ぎて、耐えられなくなったのです。

自分の大事なものを自分で壊してしまうと、ゼロは嘆き哀しみました。
そして、一つの決心をしました。
自分が深い深い眠りに就くことを。
世界を護るために自分を封印しようと。

すると、ゼロの愛する姉妹は言いました。
「貴方を一人にはしない」と。
姉は言いました。
「貴方がいつでも見つけられるように天の近くで貴方のことを想い続け、祈りで貴方の力になりましょう」と。
妹は言いました。
「独りで眠るのは寂しいから、私が一緒に眠りましょう、暗闇に、貴方の傍に、共に往きましょう」と。

そうして、世界は護られたのです。



そして、ゼロしか知らないその物語は、少し違った形へと歪められ、伝説となったのです。


これは、後に創造主と呼ばれる存在の、たった一つの真実。
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