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春は恋の季節

ろい→→←←←←←えど。兄さん積極的。



春が近付き、だんだんと生暖かい空気に包まれる頃になると、あちらこちらで猫が盛り、1人残業で寂しく過ごす私に当てつけるかのように、うるさく響いてくる。
にゃあにゃあという耳障りな鳴き声は、窓を閉めてもまだ司令部の中まで聞こえる。それが頭を抱えるほど気になって仕方無い。実は、今の私には違う何かに聞こえてしまう。

「大佐、今日も残業か。大変だな」

軽いノックから待たずに、執務室の扉が開いて金色の小さな頭が覗く。この時間からの来客は、普段なら有り得ない。だが、彼はわざわざ二人きりになれる時間を狙ってやってくるのだ。

「また邪魔を…」
「邪魔してねえじゃん。俺は大佐に会いに来てんだ。あんたの顔、見に来てるだけだよ」

鋼の錬金術師と言えば、目つきが悪くて生意気で。可愛げが無いのがデフォルトだと言うのに。
今、顔を覗き込んでくるその顔は、目を細め優しい表情で、愛しげにこちらを見つめている。まさか、こいつからこんな表情を見ることになるなんて。

「そろそろ決心ついたか?」
「…その話はもう終わったろ」
「なんで?俺は大佐が好きで、大佐も俺が好きなら、断る理由ないじゃん」

ひょんな事から、互いを好いている事が判明してしまった。倫理と世間体を大切にする私に対して、エドワードは思ったよりもずっと自由であった。
それからほぼ毎晩、私を直接落としにかかって来るようになって、こんな事になっている。

「大佐、触っちゃだめか?」
「触るな。仕事中だ」
「大佐はかわいいから、ぎゅ〜ってしてやりたいなあ。頭撫でてあげたいなあ」
「立場は逆じゃないのか」
「じゃあ、逆でもいいよ。俺に触ってよ」

ほら。と、私の隣から両腕を広げて、小さな体が抱き締められるのを待っている。
残業までさせられている私が、疲れていない訳がない。目の前の誘惑は、クリームがたっぷりの上に真っ赤な苺が乗ったケーキ程に、魅力的で甘い。

「なあたいさ。触りたいなあ。いいだろ?」

この「なあ」とか「ねえ」と響く声音が、表で盛る猫の鳴き声と被って仕方無い。私は動く指先を強い理性で押し止めるが、今日のエドワードは少し積極的だ。

「俺様の事、かわいいと思ってんだろ?」

そっと、重ねられる生身の手。子供の体温は高いらしく、触れた所が柔らかく熱い。

「いい加減、負けちまえよ」

照れに偉そうな口調ではあるが、耳元で囁かれるのは、艶を含んだ声。こんな声、彼から聞いた事がない。

「き、君は、図々しいな、本当に」
「図々しくても、本当の事だから仕方無い。俺は格好いいし可愛いし、大佐はそんな俺の事が大好きだし。あれ、指先が冷えてるね。俺があっためてやろうか」

ああ、神様。信じてはいないけど神様。明日からちょっとは祈りを捧げますから。とりあえず庭の猫からどかして下さい。そして、私の隣で誘惑を続ける、金色の子猫も一時的にどかして下さい。

エドワードの小さな手のひらが私の左手を奪って、包むように何度も指を撫で始める。指の股から、手のひらの内側まで。細い指先で擦るように弄られ、背筋がぞくりとする。

「大佐の指はきれいだね。食べちゃいたいなあ」

うっとりとした表情は、私の指を今にも舐めしゃぶりそうな勢い。
神様、神様。どこに居るかは判りませんが、こんなマセガキの誘惑に負けないよう、私の倫理観をお守り下さい。
しかし未だ夜に吹く風は冷たく、寝しなは人恋しさに拍車がかかる。この小さいのが隣にいたら、場所も取らないし暖かいだろうに。まあ、隣に寝かせたらお互い無事な訳はないのだが。そんな考えも平行して沸いてくる。

「ねえ。今日は帰らないかもしれねえって、アルに言ってきたんだよ」

神様、子猫は全力の捨て身で誘惑して来ます。近い距離からはエドワードのシャンプーの甘い匂い。私の手はさっきからすっかり止まってしまって、仕事どころではありません。春が過ぎれば子猫も落ち着くんだろうか。しかしそこまで身が持ちそうにありません。もう、どうしたら…!。


******************

あからさまに誘惑してくる兄さん。
大佐はちっぽけな理性をかなぐり捨てて、兄さんに色々してしまえばいいのに。そんな両想いの話。
てか、端から見てれば、二人でいちゃいちゃしてるようにしか見えない(笑)。
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