※11&12萬打文の流れくらいの位置で
※不幸せ注意
※いやな感じの大佐です
最近、寒くなってきたなと思う。
外出にコートと手袋が欠かせなくなって、既に一月は経つというのに。何を今更と思うかもしれないが、唐突にそう思ったのだった。
「何だよ。こないだの書類に不備は無かったろ?」
「君は何でも先を焦り過ぎる。まあ、かけたまえよ」
暖かい紅茶を甘めに作って、テーブルへと置く。目の前にはちょっと不機嫌な表情の子供。鋼の錬金術師も今年で17になる。
寒くなったから君を呼んだ、とは言えないので、適当な理由をつけて司令部まで鋼のを呼び出した。
私を好きだと言い続ける彼とは、一度夜を共にした仲だ。相変わらず付き合ってはいないが、最近は彼からのアタックもやや大人しくなった。彼も私も忙しくて、物理的に時間が無いのが理由だと思うのだが。
「俺、忙しいんだけど」
「私にばかりいつも色々させているくせに、それはないんじゃないか?。たまには付き合え」
あからさまに不機嫌な鋼のを、無理やり雑談に付き合わせる。
本当は関係を持った夜のように、触れたりキスしたり、抱き締めあったりして、人肌恋しい心の隙間を埋めたい所だが、そんな簡単に欲求のままぶちまける訳にもいかない。同じ時間をほんの少し一緒に過ごして、なんとなく自分の気持ちをなだめようかと思ってみたのだ。
「ああああ!、まどろっこしい!」
暫く世間話をしていたら、鋼のがいきなり叫んで立ち上がった。彼のイライラは最高潮で、目つきの悪さはこれまで見た中でもベスト3に入ろうかというキツさ。
「あんたさ、都合のいい時だけ俺の事呼んで、それでいつもは付き合う気がないとか、いい加減にしろよな!」
ああ、バレていたのか。
そうだな、そんな都合いい関係は、相手が望む訳が無いものな。
「酷いな。そんなつもりではないよ」
こちらが嘘をつき続けても、彼にはもう効かないという事なのだろうか。それでも私は大人の笑顔を優しめに作って、彼に向ける。
エドワードが、私達の間にある机を迂回して、真隣りまで来た。いつもは見下ろす彼に、今は見下ろされる。今にも泣きそうな、怒りの表情。
「人のこと子供だからってバカにしやがって、いくらでも嘘突き通せると思いやがって。俺がどんなに酷い事言われても、呼べばまた来るって自信があんだろ?、あんた本当に最悪だ。酷い野郎だ」
襟首を掴まれるが、好きにさせる。殴りたいなら殴ればいい。怒られながらも気持ちはとても穏やかだ。鋼のに構ってもらえる事が、私は嬉しいのかもしれない。
「そうだよ。呼んだら君が来てくれると思っている。甘えてる自覚があるよ」
「…くそ…っ!!」
白状に勢いよく突き放され、どんっと胸元を叩かれた。彼は何も言わずにそのまま出て行ってしまった。
怒らせたのは自分なのに、鋼のに悲しい思いをさせた事を後悔する。久しぶりに会った彼に少しくらい満足するかと思いきや、飢餓感は更に増して余計に彼が欲しくなる。心の隙間は大きく広がって、閑散とした穴になりそうな勢いだ。
怒りながらも、求められれば欲に負けてしまう彼に、まだ、私は好かれているのだと安心する。先に進む勇気は無いのに、君を手放す事を考えた事がないなんて。我ながら、酷い野郎、だ。
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オチもないですが、続きもないです。