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信じたりしないのに

〜暗いVer〜



「…こんな所に連れ込んで、一体何の用かな?」

人気のない教室には、一人の男子生徒と一人の女生徒が立っていた。

「手紙、受けとってくれたんですね」

「下駄箱に入れるなんて随分と古風なやり方でね」

嬉しそうな女に対して、穏やかに答えてはいるものの、どことなく隠せない棘がある。

「それで、用件は手短に頼むよ」

女は恥ずかしげな様子で言った。

「貴方が好きなんです、って言ったら信じてくれます?」

そうして近付いて伸ばしてきた手をはらう。

「…それで?君は俺に何をさせたいのかな」

すると、これまでの恥ずかしげな様子が一変。
ニッコリと楽しそうに笑った顔になる。

「酷いですね、企んでるなんて…」

でも、と呟き告げる。

「正解です、貴方が賢い方で助かりますよ」

「一応聞いてあげるよ、何が望みだい?」

「生徒会が持ってる生徒の極秘データ、それから三日前に執行された生徒への謝罪ですよ」

「断る、くだらないな」

極秘データの譲与なんてとんでもないし、執行に関しては相応の理由がある、謝罪なんてありえないね。

「良いんですか?そんなこと言っちゃって」

「…どういう意味?」

「実は今バラバラになっているメンバー皆さんに、外部から大人数の刺客を向かわせてある、って言ったら?」

「ありえないね」

うちのセキュリティはそんなにボロくないし、何よりうちのメンバーはそんなに甘くない。

「そんなのは嘘だ」

そう、頭では理解っているのだけれど。



信じたりしないのに
(それでも不安が捨て切れない)
(どうして心が揺らぐの)



シリアス書きにくいよね、碧さんも。
どうしてもギャグかほのぼのにしたくなるというね。
だから暗さは控えめです。

→次のページは明るい話
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嘘しか言わないのに

〜暗いVer〜

放課後、今日もどこかで行われる、生徒会執行部による取り締まり。

憐れな憐れな被害者は、大袈裟なまでに肩を震わせる。

「…っ(何で…)」

「何でバレたんだろう、って顔してるね」

簡単だよ、君が俺達生徒会を甘くみていたのが敗因だ。

どこまでも無表情に呟き、それが一層男の恐怖を煽る。

「あ、あああぁぁ」

「可哀相に、震えてるね」

ここで突然、無表情をやめ、笑う。
いっそ慈愛を感じるまで、その場にそぐわない優しい笑顔。

「ねぇ、助けてあげようか」

「…えっ」

「可哀相だから、助けてあげようか?」

男の顔にパッと希望の表情が浮かぶ。

嗚呼、助けてあげようか、なんて嘘に決まっているのに。
瞳の奥に揺らめく闇に気付かない。



嘘しか言わないのに
(それを盲信するキミの何て滑稽なこと)



可笑しいなぁ、こんな話になる予定じゃなかったのに。
これじゃただのドS(笑)
この後嘘に決まってんじゃん、馬鹿と言って鼻で笑われます。

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君しかいないのに

〜暗いVer〜



それは、突然訪れた崩壊。


「ごめんね、母さん」

俺、もう使い物にならないみたい。
そう言って、悲しげな笑いを浮かべた、目の前の紫。
見渡す限り真っ白な空間で、ボロボロで横たわっていた。

「良いよ、執行部でいられなくても構わない」

だからいつもみたいに笑って俺の傍にいて。
そう必死に言うけれど、

「ごめん」

一つ、蒼いパレットから色が消えた。



「時間がきてしまったみたいだ」

もう、戻れなくなってしまった。
そう言って不自然なくらい明るく笑う、目の前の黒。

「ははっ、俺さ、最近人を壊すのが楽しくてしょうがなくなっちゃった」

これじゃただの化け物だ。
だから、完全に壊れてしまう前に、最後の挨拶に来たんだよ。

「可笑しくなっていても構わないから」

だから俺の前からいなくならないで。
そう必死に引き留めるけれど、

「ありがとう」

また一つ、蒼を飾る色が消えた。



「どうしようもなかったんだ」

ごめんね、何も出来なくて。
そう言って、泣きそうな顔をした、目の前の紅。

「外国に、行かなくちゃいけなくなって」

もう一緒にはいられない。
もう会えないかもしれない。

「どれくらい先になっても構わない」

だからまたねって言って。
そう必死に再会の約束をしようとするけれど、

「今まで楽しかったね」

もう一つ、蒼に寄り添う色が消えた。



そうして、たった二人になってしまった。

「生徒会室って、こんなに静かだったんだね」

「…そうだね」

つい最近まであった筈の賑やかな日々が、まるで夢であったかのように。
掌の上に確かにあったモノは、一つ、また一つとこぼれ落ちていく。

「それでも俺は会長だから」

頑張って立ち続けていなければいけないんだ。

「じゃあ、」

倒れそうな時は、俺が支えてあげるね。

そう言ってくれた君が居たから、俺はまだ踏み止まっていられたのに。


「ねぇ、何で?どうして、兄さん…」

掴もうとした彼は、しかしまたこの手をすり抜ける。

「…さよならだ、」

これじゃあまるで、世界に一人ぼっちだ。



君しかいないのに
(君も置いて行くんだね)
(そうして蒼一色が暗闇に取り残される)



まとめるつもりが大分長くなったよ…。
そして一番暗い…かな?(←)
会長さんはメンバー全員関わらせたくなるんだよね。
ちなみにこれは「君は素敵な」の明るいVerに続く予定。

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届かないのに

〜暗いVer〜



とある人気のない教室、普段なら楽しげな笑い声が響くその部屋にはたった一人のメンバーと女生徒一人しかいなかった。

「嘘、嘘でしょ、ねぇ」

「嘘じゃないよ、」

貴女の彼氏は悪いことをして執行部に取り締まりを受けた。

「嘘よ、彼がそんなことするわけないじゃない!でたらめ言わないで!」

ヒステリックに叫ぶ女を、悲しげに見つめる。

「嘘じゃない」

その証拠に彼は昨日から学園に存在していないでしょう?

丁寧に、穏やかに、けれど非情に放たれた言葉は女をズタズタに引き裂いていく。

「嘘、嘘嘘嘘!!ねぇ、返事をしてよ!和樹!いるんでしょ、聞こえてるんでしょ!和樹、和樹、和樹っっっ!!」

いくらこの空間で叫んでも、彼には聞こえやしないのに。

「返してっ!私の彼を返してよ…!!!」

「…私は、ただの会計、執行部じゃない」

だから、何も出来ない。
取り締まりを手伝うことも。
その複雑な気持ちを共有することも。

手を伸ばすことは、とうに諦めてしまった。



届かないのに
(掴めなかった手を求め縋る姿が美しく見えた、なんて)
(私には出来なかったことだから)



あれぇ、何か意味分からない文章になった…。
紅さんはどちらかというとシリアス書きにくいです。
和樹誰だよ、とかツッコんだら負けですよ。

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充電がないのに

〜暗いVer〜



「はぁっ、はぁっ、」

一人の男が走る、走る。
何かから逃げるように。

「…っ、くそっ!!」

そこは、行き止まりだった。

ジャリ、ジャリ。

男に追い打ちをかけるかの如く、足音が響く。

「あんま時間とらせんなって、癒しと戯れる時間がなくなっちゃうじゃん!」

その場の緊迫した空気をあえて壊すかのように、明るい声がする。

「くそ、いつも二人でいるが、ばらばらに行動してる今なら」

「たいしたことないと思った?」

けらけらと笑って言葉を遮る。

「いやいやいや、そんなわけないじゃーん、なめんなし」

相変わらず笑ったまま言葉を放った。

「そろそろ飽きたし終わりにしよっか、」

「こうなったら携帯で…あぁ!?」

携帯に表示されるのは沈黙のみ。

「あ、充電切れ?残念だったなー」

ま、仲間呼ばれても負けないけどさ。

「あ、あああ、畜生、かかれ、かかれよ電話っ!」



充電がないのに
(助けを求めようとする君は愚かな、)





…何かテンションおかしい変な人になってしまった…。
このシリーズは比較的短めにまとめる、つもりです(笑)



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