スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

屍鬼

屍鬼/小野不由美


(かなりのネタばれあり)

こんなに長い小説を読むのは初めて。文庫本で読んだのだけど、5巻あわせると2500ページを超えていて、私の読書レベルも上がり自信もついたと思う。十二国記がいくら長くても大丈夫。なんだかんだ先に読めてよかったと思った。

元々十二国記を読もうと思っていたのだけど、図書館の予約の順番を待てずに手を出したのが全ての始まり。そのまま引き込まれてあっという間に読んでしまった。夏から秋にかけての物語だけど、偶然にも物語の終わりの時期が今の時期で複雑な気持ちになった。

序盤の村の様子も退屈とも思われるけど、村の閉塞感、住んでいる人の性質を掴むことができて、物語の深みに入りやすかった。これだけの長さなのに中だるみもなく後半は一気読みしてしまうほど面白く、これから読む十二国記にも期待が持てる。

(以下、ネタバレ感想)







序章で絶望の結末を知らされて、しかも物語中希望なんて一切なかったのに面白かった。最後の最後で避難することを選べた敏夫たちが唯一の希望なのだろうか。



前半の何かわからないものからの攻撃、それが屍鬼だと分かってもなお続く攻撃の恐怖がいつしか正体を突き止めた人間が屍鬼に立ち向かい形成逆転して、その反撃の惨さへの恐怖に変わり、なんとも言えない気持ちになった。



他の方の感想を拝見すると、共感した人物(人間か屍鬼か)が結構割れていて、100%の悪または善は存在しないのでないかと頭を悩ませてしまう。



自我を持ったまま屍鬼になることは悲しい。もし自分が屍鬼になったら?と考えると誰に近いのか、これもまた考えてしまう。正雄や恵のように役をまっとうすることもできないし、徹のように攻撃をしながらも自分の良心に負けてしまうこともなさそうだし、律子のように自分の信念を突き通すこともできないと思う。自我を持ったまま屍鬼になることは悲しい。



そう思うから人間の反撃がすごく凄惨なものに思えて仕方ない。屍鬼は人間に対してほとんど外傷を与えずに死に至らしめる一方で、人間は屍鬼に対して杭を心臓に打ち込む、または頭を潰してあるべき姿(死体)に戻す。あるべき姿に戻すのに、かなり残虐に殺人をしているみたいだ。屍鬼は生きるために人間を殺す。人間は秩序のために屍鬼を殺す。何が善で何が悪かわからなくなってしまう。



登場人物ごとに見ても、ひとりひとりにスピンオフ作ってもいいんじゃないかと思うほど、作り上げられている。主要人物の敏夫と静信。はじめは結託していたが、敏夫の行動を受け入れられず静信は離れてしまう。一度離れてしまうと二度と戻らない。気持ちが離れても時折お互いの存在を思い出しているのもちょっと切なかった。敏夫のキャラクターは好感が持てた。恭子への人体実験は趣味が悪いがその機転を利かせるさまや、千鶴に襲われ暗示をかけられるも、その後千鶴を誘い出しとどめを刺すシーンはあっぱれと思ってしまった。そして最後のシーンも。自分の手で何とかして事態を支配したかったと気づいたのもよかった。本当につらかったね、お疲れ様、という気持ちになる。



一方の静信。最初は共感できることもあったのだけれども、沙子と交流し始めてからは共感できなくなってしまった。沙子にとりつかれてしまった、と思うと少し諦められるけど、この人は最後まで救われなかったな、と思う。お前、父もそうじゃん、ってなった。



結城家もかなり複雑な思いのまま終わってしまう。屍鬼の存在に気付いた夏野。屍鬼の存在を認識しながらも目を背けて夏野を死なせてしまう父。気持ちのすれ違いが再び交わることなく終わってしまい無残。散々村を出たいと言っていた夏野に対して父が夏野の最期に対して土葬を選んでしまうあたりも。さらに夏野が起き上がらなかったのも。



個人的には矢野家が一番しんどかった。妙が起き上がりほかの屍鬼に見つかることなく自宅へ帰り、加奈美と再会するも仲の良かった元子の告げ口によって、ほかの人間にあっさり狩られてしまう。元子の最愛の子どもが起き上がらなかったために。加奈美の母に対する思いと、元子の嫉妬による裏切りで感情がおかしくなってしまう。



元子もそうだが、追い詰められた人間の様がそれぞれ描かれており、そこもつらかったけど楽しめた。結城はじめ、現実から目を背けてしまう人の中、孤独でも立ち向かうかおりの姿はぐっと来てしまった。かおりの成長物語として一つ話をつくれるのでは。それでもかおりの境遇は不憫。昭も幼いなりによくがんばった、、、。


山火事から物語が始まってしまったため、誰が火をつけるのか想像しながら読んでいたけど、最後まで分からなかった。敏夫や静信が自棄になってでもなく、屍鬼側が証拠を隠蔽するわけでもなく、不慮の事故というわけでもなく。お前、物語の主要人物じゃなくない?って奴があっさり火をつける。その物語の展開としての無情さもよかったなと思った。



そしてすべて読み終わってから序章を読むとさらにぞっとしてしまい、これも楽しめた。前田さんってあの前田さんじゃん、とか、棺を乗せたワゴン車は結局何だったのかは永遠に謎のまま、とか。何一つ報われない物語だった。なのにここまで引き付けられた。本当に面白かった。



ベロニカは死ぬことにした

ベロニカは死ぬことにした/パウロ・コエーリョ


(ネタバレあります)


中学生の頃、図書室で見つけてハッとして借りたけど、難しくて断念してた。何年も経ってから思い出して探して買った。今となっては忘れてしまった本もたくさんあるけど、ふと思い出せたのはそれだけ気になっていたからなのかなと。

今でこそこれだけど、中学生の頃のわたしは生命力あふれていて、え?なんで死にたいって思うの?wみたいな気持ちになったのを覚えている。

感動的なタイミングで読めた本は色々ある。この本は「まさに今」とも言えるし、そうでもないとも言えるけど、間違いなく中学生の頃ではないと思った。

海外作品のためか、文章に馴染めなくてぼんやり読んでしまった部分があった。

でも、扱うテーマは良かったなと思った。クワイエットルーム〜の話になるけど、正気と狂気は紙一重だし、必ずしも狂わないなんて、誰にも分からないことなんだと思った。

「みんな」と同じでいることって難しいし、「みんな」と違っていてもそれでいいと思えるようになるのも難しいよな、と思う。
しかもそもそも「みんな」って何?ってなるし。

ベロニカの愛の力は主人公なだけある、周りの患者をも変えてしまう。愛ってエネルギーだ。人間としてほしい力だ。正しく動けば生きたい気持ちに繋がる素晴らしい力。間違って動くことはここでは考えないでおく。


また荒波に揉まれることになるけどそれでも生きていくという気持ちになるのはすごいこと。わたしも思ったり思わなかったり。

正直展開が見えてしまって「まあまあ、そんなものね」と思ってしまった。でも読んでよかった。

リバース

リバース/湊かなえ



湊かなえさんの本は3冊目かな。
ミステリーはそこまで好きじゃないのだけど(展開に圧倒されてつかれるから(笑))、最近少し耐性ついたと思う。はじめはドラマで見ていたのだけど、録画に失敗して断念して、せめて原作だけでもと思って本を買ったのだけど気力がなくて読めていなかった。

ドラマは3話くらいまで見て止まってしまっていたから、いい感じにイメージしやすかった。ドラマでの結末を見たい。藤原竜也よ叫んでくれ。戸田恵梨香の演技も見たかった。

いつもは容赦なくネタバレ含め容赦なく感想書いているけど、この本は流石に考えてしまう。

情緒に訴えかけられた、とか、登場人物に共感した、とかはあまりなくて、ミステリーを楽しんだ、という気持ちが強い。


解説読んで、後味が「イヤ」な感じの「ミステリー」いわゆる「イヤミス」という言葉を知ったよ、、前に読んだ重力ピエロとは対照的かな?こちらさんはラストがえげつない。
伏線がたくさん張り巡らされていて、全てが結末に一直線に向かっているようなのを感じた。ぞくぞく。

重力ピエロ

重力ピエロ/伊坂幸太郎


(ネタバレあります)




あ、読みたいってひらめいて手に取った本。
昔に一度読むの挑戦したけど挫折した記憶がある、気がする。読むべきタイミングがあるのだ、きっと。あの時の私ならきっと遺伝子があーだこーだ言う話、ちんぷんかんぷんだったと思う、今もちんぷんかんぷんで読んでいたけど。

内容知ってたのかな?ってくらい展開が読めてしまい気持ちも穏やかなまま終わってしまった。だけど、思い悩んでしまうよな、、葛城を許せば春の存在も否定してしまうし、春の存在を許すと、例の犯罪も許してしまうことになる。

生まれてくるべきではない命なのか。でも生まれてくるべきではない命って言葉、あってはならんよなって今思った、生まれちゃいけないって思うの人間くらいでしょ、、。

だから父も「自分で考えて」産むことを決めたんだろう。犯罪から生まれた子ではなく、自分の息子として。その結果が泉と春の最強の兄弟ができあがる。
そしてその父の言葉がその兄弟を救ったのだろう。家族の絆は遺伝子をも越える。

文書がおしゃれ。サブカル女子が好きそう。(勝手なイメージ)

伊坂さんの本読みかけで止まってるのもあるから読んでしまいたい。




時の尾

時の尾/新藤晴一


(ネタばれあります)




晴一さんの小説、やっと読めた。買ったのはいいけど、難しくて読み進めなくて挫折してしまった。
わりとさくさく読めたけど、やっぱり最初は読みづらさあった。設定も表現も、よくもわるくも晴一さんらしい。たくさん飾られていてくどさも感じた。個人的な好みはあるだろうけど、第三者からの視点で物語が進んでいくから点のような話を追いかけるのも頭を使ったな、、。それでも物語がつながっていくのは読んでいて快感でした。

ユリがオヂと接触してミナの存在を知った瞬間のぞっとするさまが読み手にも伝わって、先に読んで知っていたのにも関わらずまたぞっとしてしまった。
あと本文で「時の尾」が出てきた瞬間鳥肌が立った。こういうことか!というようなつながり。物語の中ではヤンの役割が本当にすごかった。何枚も上手だったんだね。

物語の展開もうまくまとまって、私的にはすっきり終われた。戦争も戦後も知らないから想像でしかないけど、貧しさから生まれる悲しみは誰のせいでもないのだけど、つらいものがある。ヤナギが子どもであることも、ミナが最後はオヂを選んでしまうのも無情。時代のせいなのか、あまりにも時間が経ちすぎてしまったからか。

そのあたりのモヤモヤはあったけど、そのモヤモヤがエネルギーになってくれたらと思う。
生きているのかさえわからなかった姉を探し、内戦後の混乱に呑まれながら、姉に会うまでは死ねないと負いながらもあてもなく足掻いている。希望の光はなく、どこかあきらめたところもあって、手を貸してくれるヤンの言葉ですら受け入れられないでいる。だけど、姉と再会を果たした後のヤナギの行動力はそれまでのヤナギとは別人と思うほどである。それほどの感情の動き、姉との思い出の記憶の強さ、よかったな。

ポルノの曲聞きながら読んでいたんだけど、びっくりするくらい物語と曲がリンクした。カルマの坂の世界観みたいっていう人もいて、わかるーって思った。そういう雰囲気の曲じゃなくとも晴一さんのギターソロ聞いているだけで物語に浸れるよー。



<<prev next>>