昔から本を読むのが好きで、それなりに量を読んできましたが、こんなに強烈な余韻を受けたのはこの作品が初めてです。
登下校中に4月から読んでました。二回目です。白夜行は、繰り返し読むことでさらにおもしろくなる作品だなぁと感じました。何も知らないで読む一回目、内容を知ってから読む二回目とでは、ずいぶん印象が変わりました。結構分厚いのですが、何回でも読みたくなる本です。
★以下ネタばれ含む感想ですので注意です★
小説、ドラマ、映画、と発売してから月日が経っても拡大するということは、それだけファンがいて、評価も高いということでしょうか。
始まりは、質屋の店主殺人事件から。結局この事件は時効を迎え、迷宮入りになったみたいです。事件以降は、主に事件の容疑者の娘、雪穂を中心として終盤まで展開されます。
この物語で一番インパクトがあるのは主人公2人ですね。1人は雪穂、もう1人は質屋の店主の息子、亮司。話の核は、この2人です。
特に印象深いのは雪穂。冷静沈着、眉目秀麗、文句のつけようも無い女性です。が、裏には冷酷で誰も寄せ付けない鋭さがある。本人が裏の自分を見せる場面は無かったと思いますが、回りの人々、とくに雪穂に警戒心を抱いている人たちの話から、裏の雪穂が窺えます。
早い話、雪穂は悪女ですね。そして不気味。知れば知るほど怖い人物です。悪女ということで、大人な女性という感じですが、子供じみた一面もあったかと。たぶん、全てが思い通りにならないと気が済まないタイプでしょう。
亮司は、終盤まで雪穂と何も関わりが無いかのよう。少しも接点なんて無い。でも実は雪穂の裏で、彼女の成功を助けていたり、守っていたりした。人柄は、セリフから冷たい感じを受けました。荒んでいる感じ。こちらも得体の知れない人物で、不気味。逆鱗に触れたらヤバイ人。
この物語の骨格は何だろう?と考えると、二人の絆(純粋な絆とは違うと思うけど)かと。言葉では表せない複雑な関係の二人です。
登場人物が非常に多く、群像劇の形式になっています。一見関係ない人の話かと思っても、後々繋がってくる。「なるほど…!」と何度思ったことか。他の人の目線から雪穂、または亮司を見ることによって、2人がどんな人物なのかを説明しているのでしょうか。
2人の関係についてですが、恋愛関係にあったのか、結局一かけらも書かれていませんでした。そもそも、よく読まないと二人が裏で繋がっているなんてわからない。読者も、作中に出てくる二人以外の登場人物と同じ心境になります。何かありそうだけど、全く見えない、もどかしい感じになります。
上手く言葉にできないくらい、濃く重い内容で、衝撃的です。
なぜ2人がこんな風になってしまったのか、これを考えると、2人(1人ずつ)を取り巻く環境を思い出し、どろどろとしたものだと思います。人が変貌するきっかけは、自分ではなく他人なのです。ある意味、一番の被害者だろう。でも2人がやってきたことは許されない。でも元はと言えば…と考えると、本当にもどかしいです。
言葉にできない、こんなに心に残る衝撃的な作品はあまり無いでしょう。ぜひ一度でいいから読んでほしい作品です。
ドラマも見ました。
そういえば、私がこの本を買ったのはドラマが始まってからですね。本当に一瞬だけテレビで見て、そのシーンが忘れられなかったんですね。たしか、子供時代のお別れのシーン。なぜか頭から離れなかった。正直、タイトルも知らなかったんですが、人づてに聞いて、ようやく辿りつきました。
泣けました。純愛物としては。ただ、原作とは別物という印象を受けました。
雪穂はともかく、亮司がへたれすぎて残念でした。もっとできる男なイメージだったもので…。
でも、原作では全く描かれなかった二人の様子が子供時代から描かれていて、なるほどこういう関係だったのか、と納得。そして、2人がこうなった原因はやはり環境にあるんだ、と痛感しました。雪穂の教会で叫んだ回で。そして私も泣けた。あまりにも可哀想で、哀しかったです。
小説、ドラマ、映画(私は見ていませんが…)と、それぞれ別の側面から描いているようです。原作をさらに楽しむために、ドラマ、映画もぜひ一緒に!
そして何より、原作はぜひ読んで欲しい。おすすめします!