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大人になった君と

クリスマスも仕事……見渡せば案外そんな人だらけだって気付いたのは社会人になって二年目くらいだったと思う。

備府もここ数年はバイトや原稿に追われていて、昔のようにクリスマスだリア充だと騒がなくなってしまった。
僕もこの時期は忙しくて時間が合わなかったから、騒ぐ相手がいないというのも大きいんだろう。なんにせよ冬の風物詩が見れないのは物寂しい。

「ただいまー」

返事がない。原稿でもしているのかな。

「備府ー?チキン買ってきたよー!食べたくなるなるケン○ッキー!!」
「うっせヴォケカス集中してんだろ!」
「oh...」

備府の罵声が耳をつんざく。数日前から切羽詰まってる様子ではあったけど、今日は一段と気がたっている。こういう時は「君子危うきに近寄らず」ってやつだ。当番の洗い物が放置されている事も、とりあえず指摘は後日にしておこう。

タブレットにかじりついたままの背中。僕には一瞥もくれていない。

「はぁ……」

……一応僕だって仕事急いで終わらせて帰ってきたんだけどな。ま、いっか。思うようなリアクションを貰えないのも、もういつもの事だし。

「じゃ、先に食べるから備府も食べといてね」
「……」

聞こえているなら返事くらいしたら良いのに。あぁ僕ら、この先ずっとこんな感じなのかな。

「冷たくなるなる倦怠期ー、ってね……」



「えっ」

僕が何気なくもらした言葉に備府の手が止まった。動揺しているのが明々と伝わる。

「違……いやあの、倦怠期とかじゃ、なくって……」

しどろもどろに言葉を絞り出す背中。

「お前が帰ってくるまでに、ぉ終らせようとした……けど、お前が今日に限って早く帰ってくるから……ああぁ違う違う!お前のせいとかじゃなくって……!」

こんなに必死に喋る備府は久しぶりだ。

「だから全然、ち違うからっ……変な勘違いすんなっ」

ややおいて備府は恐々、ようやく僕の方を向いた。

「べ、別にボケとかカスとか全然思ってないし、その、お俺の言う事なんか気にすんなよ!……俺が言うのも変だけどっ……」

「備府……」

「けっ、倦怠期とかじゃ、ねーから……」



ンンン倦怠期じゃなくて現役ツンデレかよー!!!備府たん僕との時間を作ろうと必死なだけでしたーはい可愛いー!はいジャスティース!
オッケー備府、全然ダメだけど君のそういうトコ本当愛してる結婚しよ。


僕の脳内祭りなんて知るよしもない備府は、おずおずと言葉を続けた。

「そ、ソッコーで終らせるから、あとちょっと待って……下さい」

んんんんんんSUKI!!


※※※※※※


「あー疲れたあーしんどいあー腹減った」

肩をぐるぐる回しコタツに入る備府。冷めたチキンも焼き直した所だ。

「お疲れー」
「いや……そっちこそ。待たせたし……」
「ささ、早く食べちゃおう!クリスマスらしい事何もしてないけどチキン食べればノルマ達成した感あるよね」
「ちょっと意味わかんないっすね」

他愛のない会話をしているが、備府はチキンを手に取らない。かわりにスルスルと僕の隣にやってきた。

「疲れた。俺ペンより重いもの持てねぇ」

おっとこれは

「アーンして欲しいの?」
「……漫画描きの手を労ろうと思わんかねキミ」
「はいはいどーぞ先生」
「あ、そっちの骨ないやつがいい」
「ワガママー」

僕にぴったりくっついて、僕の手からチキンを食べる備府。恍惚の表情でもちもちと頬を膨らましている。

「ふふっ……餌付けみたい」
「チキンなんかに負けない!」
「即落ちですがな」


僕の指と備府の唇がテカテカになった頃、ぴったりくっついて話をしていた備府の返答が鈍くなり始めた。

分厚い眼鏡をそっと外すと

「はぁっ、一瞬遠い所に……」
「少し寝る?」

備府の目の下にはくっきりと隈ができていた。労るようゆっくり肩をたたいてあげると、これがてきめんに効いたようで

「いやいや……それじゃ何のために……」

言い終わらないうちに再び瞼がおちてしまった。

「それじゃ何のために」だって。隈まで作って健気すぎかよー!クウゥー!嫁が可愛すぎて言語中枢馬鹿になりゅう〜!

跳ね返りの強い黒髪を撫でる。長い睫毛に柔らかい頬、ぷっくり艶の出た唇。一緒に暮らしていたのに全部久しぶりだった。くっつく感触や匂いも……欠けていたピースがはまったように、しっくりと僕に沁みていく。

「あー、」

何もない天井を仰ぎ

「いいなァ……」

しみじみと声を吐き出す。温泉にでも浸かったような自分の動作がおかしくて一人で笑ってしまった。


備府がまどろみから戻ったら、ちゃんと布団で寝かせよう。僕も寝て、起きれば仕事が待っている。
それまで、もうちょっとだけ、こうして君との10年に浸っていようと思う。


それから、お皿はちゃんと洗ってもらおうと思う。

おひさ

やぁ。

クリスマスイブですね。この時期になるとブログ更新しなきゃという妙な使命感でソワソワします。絵は全然クリスマスじゃないけどね!




矢追「恋人はサンタクロース♪」

備府「手の早いサンタクロース♪」

矢追「備府ってば/// 分かってるよ今夜は性」

ドカバキグシャ


備府「手 の 早 い サ ン タ ク ロ ー ス 」 ドドドド



うーん、仲良しっていいね!(^v^)

ここだけは抑えねば

 

|彡サッ


ヤンデレ小芝居

それにしてもこの二匹、ノリノリである。


ほどろちゃんちのコレ見てからずっと描きたかったシリアス風寸劇漫画でした。

こういうシーン、愛憎劇あるあるだと思う割に具体的なネタ元が思いうかばない不思議。






矢追の「直接頭を嗅ぐのもいいけど枕のにおいが好き」っていうの分かりすぎて辛い
そんなに良いにおいじゃないけど癖になるし
頭もそんなに強烈な匂いってわけじゃないんだけど、枕を通すとまろやかさが加わっていいんだよね。
何言ってんだコイツ。

二か月ぶりに備府描いた

ンァッ! ハッハッハッハー! このブログンフンフンッハアアアアアアアアアアァン!

ご無沙汰しております(スッキリ)


遅くなりましたが、リレー漫画の完成版をまとめておきます!↓

1P
2P
3P

カオスwwwそして謎の胸アツ
一緒に遊んで頂き本当に有難うございました
そして見て頂いた皆さん、有難うございます!!

あと拍手コメで教えて頂いた「ラインで男に告白された」ってやつ物凄いムズムズして可愛かったです。いいよね!青春いいよね!ウジウジとか包容力とか!!

いつも有難うございまーす!

【発掘冬ネタ】プルタブともたつく指【初夏に投稿】


「あっ、備府だ」

 もうすぐ日付が変わろうかという頃。仕事を終え帰る途中だった僕は、公園のアーチポールに腰掛けている備府を見つけて思わず声をもらした。ここは駅から少し歩いた住宅地にある公園で、備府のアルバイト先からは随分遠回りになる場所のはずだ。


 
「……ちっす」



 備府はカクンと首だけを器用に下げて会釈をしてきた。伸ばしっぱなしの黒髪を今日は珍しく結ばずに垂らしている。その野暮ったい姿がかえって愛おしくて、僕は仕事の疲れが霞んでいくのを感じた。


 

「こんな時間に備府が外にいるなんて珍しい」


「バイトの帰り。時間通りに終わったんだけど、バイトの奴と喋ってたら遅くなった」


「そっかぁ。帰り道で会うなんて偶然だね」


「……そっすね」


 


 備府の返事は妙に素っ気ない。けれどそれは不機嫌なわけではないのはよく知っている。自宅から一歩外に出れば、常に誰かが半笑いで自分を見ているように思えて腰の落ち付け所が分からないらしい。外で口数が減るのが備府だ。

 はじめこそ様子がおかしいと心配したものだったけれど、付き合いもこう長くなると「部屋の中の備府」「外の備府」の両方を熟知してしまうもので。備府は一度で二度おいしい。しかもギャップのある備府の姿は恐らく僕しか知らない。その優越感や独占欲のようなものは、ジワジワと僕の心を満たしていく。



 ……もしかして、僕の帰りを待っていてくれたのだろうか。


 備府の赤くなった鼻先を見つめながら自惚れた妄想をしていた所に、何かが飛んできた。


 


「うわっ!? とっ、と……」



 慌ててそれを受け止める。その温かさに驚き見ると、缶のコーンスープだった。


「やる」



 備府がぶっきらぼうに言う。その手には同じものが握られていた。差し入れの飲料にコーンスープという少し斜め上なチョイスが備府らしい。そして、夕食をとっていなかった僕には一番嬉しいチョイス。これは一体、どこまで計算しての事なのだろう……。
 付き合いが長くなっても、備府のこういうちょっとした箇所が読めなくて僕は楽しい。まるで期待を持たされて舞い上がる「友達以上恋人未満」の片割れような、むず痒く萌え出る気持ちを未だに味わえる事が嬉しいのだ。


 
「わ、ありがとー!……あー、あったかい…」



 投げ渡された缶は、冷え切った指先には温かいものの、買ってから少し時間が経過している様子が伺えた。やっぱり僕を待っててくれていたんだね…なんて、自惚れが止まらなくなってしまいそうだ。

 缶で両手を温めていると、備府はしたり顔でニヤリと笑った。



「お買い上げ一万円でございます」


「ええ〜っ!ぼったくりじゃん、備府ひどーい!」


「プレミアっすよ、矢追さん」


「う〜ん……」



 備府いわくプレミアもののコーンスープのプルタブを引く。カシュっと思った以上の良い音がした。



 


「プレミアはもう少し有名になってからにしてくださいよぉ備府先生。最近奇をてらったロリエロ漫画ばかり描いてらっしゃる様子ですけど次回作はどうするんですか?」



 からかってくる備府に負けじと、僕も悪戯っぽい言葉で返す。


「ファッキュー!ブチ殺すぞごみゅめら」
「ははは、言えてない言えてない」


「あーーあーーうっせえ!もういいそれ返せ!お前に飲ますスープはねえ!」


「しーましぇ〜ん。……じゃ、いただきまぁす」



 備府の隣へ腰掛け、へらへらと談笑しながら開栓したスープを味わう。

 コーンの甘い香りと温かさに一息つくと、カチカチと小さな音がせわしなく聞こえてくる事に気がついた。
 音のする方へ目を落とせば、備府が未だに缶を開けきれずプルタブと格闘していた。何気ないように僕と会話をしながら、その指はプルタブを立ち上げようと必死だったのだ。


 


「あれぇ備府さん?缶、開けきれないのォ?」


「うっせ!てめー深爪なめんなよ!」



 カチカチ、カチ、カチ……

 プルタブを逃がす音ばかりが響く。ニヤニヤとその様子を眺めていると備府は更に渋い顔をした。こちらをジトリと睨みながら、わざとおかしな顔で威嚇をしてくる。


 缶を握ったまま、いつまでももたついている備府の手元を眺める。

 野暮ったい風貌の主とは裏腹に、スラリと長細い綺麗な形の指。僕がこの指を好きなのは、ただ単に見た目が良いからだけではない。彼の理解されにくい繊細さがそこにヒッソリと顔を出しているようで、つい見とれてしまうのだ。綺麗な指がモタモタとプルタブを摘めずにいる様子など愛おしくてたまらない。

「指が冷えてるから?感覚がなくて開けにくいのかな」
「いーや、深爪だね。だって俺、昔は普通に開けれたし。バイトして爪を切るようになってから全然開かなくなりやがったんだよコレ。あああ!腹立つ!」

 癇癪を起こしたように握り締めた缶をブンブンと振り出した備府を見かねて、僕が代わって缶を開けて手渡す事にした。

「……ども…っす」



 バツが悪そうに、備府はそれを三口程で飲み干した。最後に缶の底をトントンとつついてコーンを出している。


 
「……備府、僕の帰りを待ってくれてたんでしょ?」
「いやいや。通りがかっただけですしおすし」



 思った通りの返事に僕は思わず含み笑いをする。シラを切る備府の鼻先はやっぱり赤い。伸ばしっぱなしの髪とマフラーに隠れた耳のふちも、よくよく見れば赤い。

「指……こんなに冷たくなってる」



 指をキュウと握り締めると、備府は慌てて周りを気にした。どうせこんな時間の公園に人などいない。見られて困るとも思っていない。僕は構わず備府の指に熱を分けた。

 細長い指は、近くで見ると随分と荒れていた。すっかり働き者の手になった備府の顔を見る。面構えも学生の頃とは少し違っていて、感慨深いような、焦りを覚えるような、不思議な気持ちにさせられる。


 


「……長居してたら風邪ひいちゃうね。はやく帰ろ」



 備府の指先を握ったまま、僕は自分のコートのポケットへ手を差し入れた。

「ちょちょ、おい、矢追」
「なに?」
「手。放せよバカ」 


「寒いから不可でーす」
「うっわ出た『寒いから』!『冬のせい』!このひとりJ-POP野郎」



「……冬のせいっていうか、『備府のせい』?」


「俺すか。いやいやないっすわ……」


 だらだらと歩き出す。ポケットの中で、備府の指が観念したように僕の指に絡みついていた。




***

社会人やおびぷ。

お久しぶりです。

あまりに更新ネタがないので凍結中の書きかけネタ(超大量にある)のうちマトモそうなものを無理やり完結させて投下。

真冬に書きかけていたもので、ここまでの仲睦まじさに暗雲たちこめるストーリーだったのですがここで観念。

近況

こんな感じ


矢追「事後?」

備府「しね」

知らない人怖い!!!

数多の天然キャラ女を見ている矢追も

「備府が一番ひどい」と思わず心配になった瞬間だったという……。


らくがきなんだけど、最近あまりに更新頻度が低いのでこっちで。
お久しぶりでごわす。

ほりさまが矢追描いてくれた!!!

ヒャホオオオオイ!!!!!
矢追があまりにも矢追で思わず鼻水噴きだしたww唐突に豪速球投げつけてくるようなこのかんじwww

そしてこの手の集中線はツボるからアカンwww

人様にキャラクター描いてもらえるのめっちゃうれしいデュフフwwww
ほりさまありがとう!!!
続きを読む

(画像分割しました) まだ便乗する

4コマだけ 絵だけ

先日のほどろちゃんの猫耳帽子ネタが可愛くて色々ぐるぐる考えてたんですけど、
「帽子で即興キラー●イーン」という設定を差し引いても、キ●ークイーンと言い張るには結構無理がある仕上がりになったので若干後悔していたり。

貰ったばかりの手編みの帽子を何の躊躇いもなく引っ張っちゃう備府(何も考えてない)
はしゃいでいる備府に「楽しんでくれて何より」と大人の対応を見せる矢追(既に今夜のやらしい予定を考えてる)

特別な気分のアレ

テロップが完全にバラエティ番組

矢追「はい、チョコだよアーンして///

かーらーのー
いっただっきまーす//////」


備府「楽しそうだなオイ」


自給自足職人・矢追

フライングバレンタインでした
これで枕を高くして寝れる
おやすみ!

矢追「備府!ツインテールやって!ツインテール!」

ぐおうふ!

元ネタ:ツインテール(ウルトラ怪獣)

今日はツインテールの日ですね
後で気づいたんですが夫婦の日でもあるそうです。そういう意味では普通のツインテ絵より凡庸性のある絵だったので助かったなと思いました。…どこがだよ!

メガネーズ


今日も今日とて、授業を終えたその足でスーパーへと向かう。私はそこで、夕方から閉店までレジ打ちのアルバイトをしている。

単身者用のマンションや社宅が多いこの一帯だけれど、その分スーパーはそこらかしこにある。夕方の戦場をやり過ごした後は、そこそこのんびりとしていられるのだ。二一時にもなれば、レジ回りの商品やサッカー台を整理しながら、ぱらぱらとやってくる商品を馴れた手つきで流しいていくだけ。

このバイトをやっていると、よく来るお客さんの顔も覚えたりする。今日はそのなかでも意外な組み合わせの二人が一緒にやってきたので、並んだ横顔をヘェと眺め、店内へ見送った。


どちらも男で、十中八九、一人暮らしの大学生だ。二人とも似た背格好で眼鏡をしているので、メガネーズとでも名付けようか。……そう思うと意外な組み合わせでも何でもないのだけれど、そういう事ではない。メガネーズの片割れに「一緒に買い出しに来るような知り合いがいたのか」と驚いた、というのが正確な所だった。

メガネーズのうちの一人は、イケメンと言うわけではないけれど人懐こそうな顔をした、感じの良いお客さんだ。レジの際に明るく柔らかな声で「お願いしまーす」、会計後には「どうもー」と言ってくるのですぐに覚えた。暇な時には二・三言の世間話を交す事もあるし、「がんばってね」と言ってくれる。それだけの事なのだけれど、この人が私のレジに並ぶかどうかでひそかに明日の運勢を占っていたりする。私は心の中で彼をメガネくんと呼んでいる。

もう片方は、ちょっと不審者じみたメガネだ。バサバサの髪とメガネで顔が隠れていて、背を丸めたまま異様に早歩きで店内を回る。その様子を初めて見た時は、バイト仲間と顔を見合わせて「ヤバい、あれヤバイ」とアイコンタクトを交したほどだ。
加えて、まともな会話ができない。以前「キャンペーンのシールはお集めですか?」と尋ねた時など、「あっ、あっ、あっ……」と不気味な声を発してきたので、恐怖のあまりお金を取り落としてしまった。


同じ学校の知り合いで、マンションが近いのだろうか。チラチラと体を前後させ二人を見つけようとするが、商品棚が立ちふさがっている。

「だーかーらー!!その話はもうするなって言っただろーが!馬鹿!バーカ!このカスが!!」

突然店内に響いた大声にビクリと肩が跳ねあがった。やだなに、喧嘩……?恐々と様子を窺うと、どうやらメガネーズの気持ち悪い方の声らしかった。感じが良い方のメガネくんの呑気な笑い声がそれに続き、内容は聞き取れないもののどうやら喧嘩ではないようだと分かった。

ああ、びっくりした。気持ち悪い方のメガネはあんな声だったのか。というか、普段そんなに大きな声で話したりするんですねアナタ。ウワー余計に怖いなぁ、声量の調節が出来ない人って、どこかおかしい人が多いんだよなぁ。


「あのぉ、すみませーん。今日の広告に載ってた10kgのお米、まだありますか?」

メガネくんがひょこりとやってきた。

「あっ、それでしたらお米のコーナーじゃなくて、こちらに積んでありますよー」

案内しようとレジを出ると商品棚の奥から猫背がジトリと覗いていて、思わず声をあげそうになった。

「ほらな言ったろ。俺はレジ裏っつっただろ、最初から。10kgなんて重いモノ、客に遠くから持って来させる筈ねーんだよ。ヒヒッ」

気持ち悪い方のメガネは、いつの間にかメガネくんの背後にやってきてボソボソと呟いている。ヒイイ、やだやだ怖い怖い無理無理……!

「残ってて良かったね、備府」

メガネくんはいつもと変わらない様子でニコニコしている。

「どうせ元々余るように仕入れてあるんだよ。安く仕入れたやつを明日には定価で売りやがるんだぜ……フヒッ」

コッチは喋るほどに気持ち悪いし嫌な奴だな。

「じゃあ僕は先にレジに行っとくから、備府はお米持って来てねー」
「はあぁ!?ちょ、矢追おまっ、まじふざけんな!!!」
「あ、これ先にレジお願いしますー」

至近距離で突然特大ボリュームで喋られても、メガネくんは一切動じていない。私なんてあまりの音量の振り幅に思わず顔をしかめてしまったというのに。



「お知り合いなんですか」

やおいさんって言うんだ。そんな事を思いながら私はメガネくんに話しかけた。

「部屋が隣同士で、お互いよく行き来してるんですよ。家でご飯もしょっちゅう一緒に食べてるし、いっそ共同でお米を買って置いとこうかーって話になって。ほら、お米ってチマチマ買うより大きいのを買った方が割安でしょ?ちょうど特売もあってたから、買いに来たんです」
「わあ、有り難うございます」

そ、そんなに仲が良いんだ……。いよいよ意外すぎる、この組み合わせ……。

「おい、持ってきてやったぞ」

重い足どりで片割れがやってきた。男の癖に10kgくらいで大げさな、と思ったけれど、いかにも非力そうな出で立ちを見ていると……うん。まあ、頑張れとしか。

「……」
「えぇ?お箸なら家にあるよ」
「ちがう、…………」
「はは、貰えるかなぁ」

片割れのメガネが、やおいくんにボソボソと何かを耳打ちしている。何かを、というか、完全に割り箸を貰おうとしてるんだけれど。アナタそれくらい自分で言いなさいよと。

「すみません、割り箸を四膳貰えませんか?」

結局やおいくんが尋ねてきた。片割れはその後ろで素知らぬふりをしている。ああ、基本的に惣菜を買ったお客さんにしか渡さないように言われているんだけれどなあ。

「後ろの人が、どうしても割り箸で鉄砲を作りたいって」
「わー!!!わー!!!」

少し意地悪な顔でやおいくんが笑って、片割れが本日三度目の大声をあげた。

「五連射できるやつを作るんだって言ってます」
「あっあっ、ちっ、違っ、その、嘘ですから!!!いりません!!箸!!いりません!!」

引くくらい顔を真っ赤にして、脱兎のように駆けだそうとする片割れの袖をやおいくんが捕まえた。

「備府さ〜ん、お米運搬大臣でしょ〜。じゃんけんで決まったでしょ〜」
「だああ!クソ!」

ガサリと米の入った袋を抱えて去ろうとするも、スムーズに持ち上げきれずレジの端でグズグズとしていた。結局サッカー台でふてくされながら支払いを待っているのだけれど、10kgの米とはそんなに重いものだったろうか。


「あの……これ。ほんとは惣菜を買っていないお客さんには渡しちゃいけないんですけど…、」

レジ袋に割り箸を四膳しのばせると、やおいくんは真ん丸な目をキューっと細め、小声で「ありがとう」と言った。

「素材が調達できた事、彼にはもうちょっと後で教えてあげることにするよ」

居心地悪そうにソワソワと張り紙などを眺めている片割れクン。その背中を眺めてはうふふと嬉しそうに含み笑いをしているやおいくん。見ているだけで、なんだかこちらまでにやけてしまいそうだった。


後からやってきたお客さんの商品を流しているうちに、メガネーズは店を出てしまった。

次はいつ来るだろうか、と名残惜しく思っていた所に本日四度目の大声が聞こえた。
ガラスの向こうにメガネーズの後ろ姿が見える。半分こに持たれたお米の袋が、二人の間でぶらぶらと揺れていた。やおいくんが先程の調子でゴキゲンに荷物を振り回して、片割れクンに怒られたのだろう。

はたして五連射は成功するだろうか。彼らが割り箸でチマチマと工作している姿を想像して、私は今度こそふふっと笑ってしまった。

 

フィギュアっぽい感じが出なかった

こないだ備府を描いたので矢追も描いた

既存のねんどろいど画像をだいぶトレスしたせいもあって、前回の備府に比べて少し違和感があります。
トレス元のねんどろいどはとても可愛い女の子だったんですが、矢追になった途端あざとくて若干いらつく感じになったので不思議なものだと思いました。

「てへぺろ」のノリですぐにブリッコする矢追。
ブリッコがネタなのか地なのかなかなか周囲に伝わりにくい矢追。
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