7/6 20:54 拍手コメントよりリクエスト
フレユリ前提でエンテレフレン。ある意味死ネタかもしれないのでご注意下さい。
何度でも生まれ変わって、
何度でも見つけてやる
異変が顕れたのは、世界から魔導器が失われてまだそれ程経っていない頃だった。
忙殺されそうな日々の中、寝食を忘れて働いた。
…文字通り、『食』を必要としていない自分に気が付いたきっかけは何だったか。今ではそれすら思い出せない。
はじめは『気のせい』だと思い、次に『まさか』と思い、最後にやっと『確信』に至った時、頭の中を占めていたのはたったひとこと
何故、僕が
震える僕を抱く彼の腕も震えていた。
五年、十年
ほんのわずかも伸びない髪の毛、変わらない姿
季節が巡り、見馴れた顔が変わって行く。
子供だった彼らは成長して、かつての自分の年を追い越した。
変わらないのは互いの想いだけ。『人』である事を忘れさせまいと、暖かな場所と料理を与えてくれる愛しい人。
彼がいなければ、僕はとっくに壊れていた。
十五年、二十年
伴侶を得、子供を得たと語る幸福に満ちた笑顔。
僕は一体、それをどんな顔で見ていたんだろう。
祝福したのに、共に喜びを分かち合ったと思っていたのに、誰も居なくなった部屋で彼は無言のまま、僕を抱き締めた。
もう見るな
何も考えるな
最期まで一緒にいてやるから
歳を重ねても美しい彼の胸の中で泣いていた。
ひとり、ふたり
愛しい人達が、僕の世界から消えてゆく。
充分なのか、早過ぎるのか、そんな事はわからない。わかる事はひとつだけ、それは全て『天寿』なのだということ。
いかないで、独りにしないでと声を涸らすまで叫び続けた僕に、彼は困ったように微笑んだ。
ごめんな、先にいく
でも、おまえはおまえのままでいてくれ
そうすれば―――――
果てしない紺碧の海に君を散らして、何も抱かない墓碑を飽く事なく見つめ続けた。
残ったものは、君の想いが染み付いた一振りの刀だけ
君を失った世界で、僕は何を求めて生きればいいんだろう。
いつか海を眺めたこの丘で、紅い瞳と銀の髪が揺らめいた。
役目を果たせ
全ての事象には意味がある
あの日と変わらない姿のまま静かに語る彼に、僕はどう見えていたんだろう。
彼は世界と共に生きる選択をし、全ての命の安寧の為に生きている。それは彼が望んだ事だ。
僕はこんな生き方を望んでいない
役目なんて知らない
あなたのようには生きられない
慟哭と共に吐き出される言葉を、ただ受け止め続ける紅い瞳が恐ろしかった。
役目がわからなければ、探す事だ
最愛の友が望んだこと、それがおまえの役目
答が見つけられずに彷徨う日々の始まりだった。
最期の言葉を胸に、ただ君の姿を探し続ける。
君の望みは何だったのか、僕は君の望んだように生きられるのか。
わからないまま世界を巡り、変化し続ける人々の中で繰り返される争いに絶望した。
僕が、僕たちが守りたかった世界。今、君がこの世界を見たらなんて思うだろう。
もしかしたら、何処か僕の知らない場所で同じ世界を見ているんだろうか。
君ならどうする?何を望む?君は何を守りたい?
再会のその時に、君に恥じることのない僕で在りたい。想いを乗せて振るう刃が、君の想いと重なっていると信じさせてくれ。
君の望んだ世界を守ること、それが僕の役目
答えは最初から示されていたのに、争いと混迷の中でやっとそれを思い出した僕を、君は叱るだろうか。
ごめんね、君がいないと僕はこんなにもみっともないんだ
だから頑張るよ、こんな姿は見せられないから。
きっと君も頑張ってるんだろう?
姿が見えなくても、声が聞こえなくても、この掌に想いを握り締めて頑張るから。
だから早く見つけて、僕のことを。
僕の想いが間違いではなかったことを、確かめたいから。
君の想いと重なっていたと、その唇から聞かせて欲しい。
本当は、僕にも見つけられる筈なんだ。
だって君は僕の半身、魂の片割れ
姿が変わっても、声が違っても、求め合い惹かれ合う運命と信じている。
でも、僕は君を探さない。ただ君を探すだけの僕を、君は望まないだろう?
だから僕は君を探さない。その代わり、今を生きているこの笑顔をひとつでも多く、守っていくよ。
どれだけ人が変わって、街が変わって、国が変わっていったとしても、ただひとつ、変わらないもののために生きていく。
きっとそれが、再び僕らが出逢うための道標になる。
今は遥か遠いあの日、互いの剣に交わした誓いを守り続けてみせるから。
だから君も、約束を守ってくれ。
何度でも、見つけてくれるんだろう?
ただ待ってるだけじゃ叱られてしまうだろうから、僕は僕の役目を果たしながら君を待つことにするよ。
君をがっかりさせたくはないからね。
君と会った時に、胸を張って笑えるように生きてみせる。
だからいつか見つけて、僕のことを。
その時は、思い切り甘えさせてもらうから。
満天の星空にただひとり、君の瞳を想う
かつては夜空の色をした瞳が、この身の蒼穹を映す日が必ず来ると信じている
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終わり