テイフェスにDEENですってええええええええ…!?

はいしんだ。本当ですか!?!?!?って思わず情報記事を五度見ぐらいしましたよこんばんはZOOKです。

二日目の日曜のほうに来るんですねDEEN!!もう嬉しすぎてほんと…ありがとうございます…!!
デスティニーから というわけではなく、もともと好きなアーティストだったんですが、ある日テレビから聞いたことがない曲が流れてきたので見たらデスティニーのCMでした…懐かしい!スターーーーーン!!
闘技場のライブも見たよ…

今回はデスティニーよりもハーツRのほうで、なんだと思いますが是非とも「夢であるように」も歌って…歌ってください…!!

私、テイフェス二日目だけ観に行きます。最初はその予定ではなかったんですが休みなんとか取れそうで!なので今回のDEENがほんとに嬉しい!
もちろん初めての生テイフェスなので、行ける事自体が嬉しいんですけどね^ワ^
ライビュは行きましたけど去年はなかったし、今年もまだ何も情報出てないのでどうなるのかなあと思ってます。
ライビュはほんと、地方のファンのためにもやって欲しいです…。両日、しかも全部やるのは難しいのかもしれませんがやっぱり見たいですし!
お願いしますよ公式さん(泣)


あ、それとお知らせというかお詫びなのですが…。
一部記事が公開になっていたのを非公開にさせて頂きました。
いや、もともと非公開にしていたつもりだったのが公開されてたんですけども、昨年のリンク2で出した本の本文下書きというか冒頭部分の一部が間違って公開されっぱなしだったようですすみません!!
このサイトの本文入力欄で書いてたり編集したりしていたもので…見ていただいた方には本当に申し訳ないのですが、サイトの方には続きを上げる予定は今のところございません。
失礼致しました…


拍手くださっている皆様、ありがとうございます…!
励みになります!






花咲く場所で逢いましょう

生を全うした後の二人のお話。 








おまえはゆっくりでいいからな
わかったか?
その顔で来たら、ただじゃおかねえぞ
…わかったらほら、もう、泣くな――




ゆっくりと瞳を開くと、目に映る景色にフレンは穏やかな笑顔を浮かべた。
辺り一面に舞う花びらが視界を覆う。その花霞の中で佇んでいると、遠くから誰かの呼ぶ声がした。
はっきりと聞こえずとも、それが誰の声なのかわかった。きっと、ここには彼しかいない。
どこだろう?
――早く会いたい。
思えば随分と待たせてしまった。怒られるだろうか。いや、むしろ褒めてもらわねば割に合わない。
急ぐな、と言ったのは彼なのだから。

「フレン」

今度はすぐ後ろで声がした。
ああ…この声で名前を呼ばれるのも久し振りだ。
瞳を閉じ、感慨に耽るように俯いた。口元には笑みを浮かべたまま、静かに振り向いてそのまま目を開けると――
懐かしい友の姿が、あの日のままでそこにあった。

「…やあ、ユーリ。やっと会えた」

柔らかな光を透かして薄紫に輝く瞳。
長い黒髪が揺れ、狂ったように舞い散る無数の花びらが幾重にも重なりながらその上を滑り落ちていく。
薄い唇が僅かに開き、紡ぎ出される声にこの上ない心地好さで全身が満たされるのを感じた。

「久し振りだな、フレン。こんなに待たされるとは思わなかったぜ」

しかし言葉に責めの色は感じられない。腕を組み、楽しそうに笑うその顔がとても幼く見えたのは…こうして再び逢うまでに過ぎ去った年月のせいだろうか。

「君に言われたことを忠実に守っただけだよ」

「…だいぶ貫禄出て、良い感じになったんじゃねえか?」

「そうかな…本当はもう少し頑張るつもりだったんだけどね」

フレンの頭にユーリが手を伸ばし、髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き回す。

「うわっ…!やめてくれ」

白いものが混じっていた髪の毛は途端に鮮やかな金色を取り戻し、鬱陶しそうに顔を上げたフレンは目の前の友人と変わらない年頃の姿となって、困ったような表情をした。

「ま、合格点はやってもいいと思うからもっと胸張れよ」

「本当かい?…ありがとう」

「…そのままでよかったのに」

「ちゃんと見せたんだからいいだろ?ずるいよ、君はちっとも変わらないのに僕だけなんて」

「そりゃ仕方ねえなあ…」

髪を翻して歩き出したユーリだったが、すぐに立ち止まるとその場に腰を下ろしてフレンを手招きした。向かいに座ったフレンに小さな盃を差し出し、笑う。

「とりあえず、再会を祝して」

「祝うようなことじゃないけどね」

「固いこと言うなって」

本当に、君は変わらない。
合わせた盃に口を付け、小さく呟く。ユーリは穏やかにフレンを見つめるだけで、何も言おうとはしなかった。

ユーリと再会できたら、言ってやろうと思っていたことが山ほどあった筈だった。
それが今では何も思い出せず、言葉が出てこない。目の前にユーリがいて、笑っている。こんなに屈託のない笑顔を見るのはいつ以来だろう。きっと彼は満足しているのだ。今ならそれがわかる気がした。

「思い残したことがあるか?」

心の内を読んだかのようなユーリの言葉に、特に驚きはしない。何故なら、おそらく彼はずっと見ていただろうから――

「さあ…どうだろう。あるような気もするし、ないような気もする」

「心残りがあると、いつまでも『ここ』から進めないぜ。なんでも話せよ、聞いてやるから」

「うーん…」

やり残したことなら確かにある。だがそれは自分がいついなくなっても問題ないようにしてあったし、周りもそのことは承知している筈だ。丸っきり心配していないと言えば嘘になるが、きっと大丈夫だろう。自分は彼らを信じて託すだけなのだ。

「今さら隠す必要ないだろ?」

意地悪く笑うユーリに、フレンはむっと唇を尖らせた。そうだ、どうせバレている。ずっと胸の奥底に沈めていた想いを、やっと言える時が来た。相手がもうそれを知っていると思うと、ほんの少しだけつまらないが…

「好きな人がいたんだ」

「へえ?」

「でも結果的に失恋した。そのせいでとうとう結婚できなかったよ。それが心残りと言えば心残りかな」

ユーリは小さな盃を指先で弄びながらフレンの話を聞いていたが、ふと動きを止めてフレンを正面から見据えて言った。

「…違うだろ?」

いつからだろう、この視線を受け止められなくなったのは…。
そう、本当に言いたいことはたったひとつだけで、その一言をいつか伝えたいとずっと思い続けていた。
敵わないな、と呟く声が僅かに熱を帯びたようだった。

「君のことが好きだった」

「そうか」

「気付くのが遅すぎて、何も伝えられなかった」

「…そうか」

本当の気持ちを伝えたい相手はもうどこにもいない。その事実に愕然として、人知れず涙を流した。少しずつ気持ちの整理は出来ていったが、想いは変わることはない。何度かあった出逢いも最終的にはその想いを超えることはなく、結局こんなところまで引きずっているのだからどうしようもないと笑うしかなかった。

「勿体ないよなあ、全く。良さそうな相手もいたのにさ」

「仕方がないさ、理想が高くなりすぎたんだ。君以上のひとがいなかったんだから」

「オレのせいみたいな言い方するの、やめろよな」

「君のせいだよ」

「……」

君のせいだ、と繰り返すフレンは今にも泣き出しそうに見えた。
ようやく伝えることができた想いは、もう決して叶わない。俯くフレンの頭をまたぐしゃぐしゃとやりながら、ユーリが優しく囁いた。

「ありがとな、フレン」

「…ずるいよ」

駄々をこねる幼子をあやすように、ユーリは黙ってフレンの髪を撫でるだけだ。フレンは目を閉じ、されるままにしばらくそうしていたが、ふとユーリの指先の感触が消えて顔を上げた。

ユーリは立ち上がり、花びらの舞う中で一点を見つめていた。フレンにはその先が見えない。だがわかってしまった。
そろそろ、時間だ。

「さて…。オレはもう行かなきゃならない」

ユーリはずっと待っていてくれた。心残りが自分だと思うと少し申し訳なく思ったが、ならばそれはもう解消されたということなのだろう。
だが、やっと会えたのにもう…と思うと切なく、つい余計なことまで言ってしまう。

「返事は聞かせてもらえないのかい?」

歩き出していた背中に向けて問いかけると、足を止め振り向いたユーリがわざとらしく肩をすくめて見せた。逆光で表情は見えない。でも想像はできた。
きっと彼は呆れたように瞳を細め、小さくため息を吐いているに違いない。そしてあの皮肉っぽい笑みを唇に浮かべているのだろう。

「返事は、次があればその時にしてやるよ」

どこか楽しげな声に、フレンはやれやれと天を仰いだ。あんなに降り注いでいた花びらも今はもうどこにもない。視線を戻し、霞む視界の中で遠ざかって行く影に向け、言った。

「また会おう、ユーリ。その時を楽しみにしているよ」


言葉は光に吸い込まれ、届いたかどうかわからない。
彼は都合の悪いことはすぐ忘れてしまうから、自分が絶対に思い出させてやらなくては。

きっと会える。その時こそ、もう一度あの言葉を伝えよう。

緩やかに溶けてゆく意識の中、最愛の面差しを強く、強く魂に焼き付けるように――

薄紅色をした小さな花弁が、ゆっくりと流れて落ちる。
フレンは手の中に握りしめたひとひらを胸に抱き、満ち足りた笑顔のまま静かにその瞳を閉じるのだった。
▼追記

お知らせ・拍手文更新

もう既に3月とか一年の四分の一が過ぎてしまいますよ恐ろしいですねZOOKですこんばんは。

拍手文をやっとこ更新しました。
長い。長くなってしまった…

スマホに変えてから今までみたいにメールで文章を書かない事が多くて、パソコンで文章用のソフトで書いたりしてるんですが文字数がわからなくて…。メールだと残りが出るのですわかるんですが。
で、今回なんだか長くなって、いつものようにセリフとセリフの間を空けていると文字数オーバーになってしまうので空けずにそのままにしてます。拍手文のページで見るぶんにはまだいけるかなと…通常の投稿ページだと横幅が狭いので空けないと読みにくそうですけど、通常ページは文字数の追加ができるので多分空けられるはず。まあ個人的なこだわりでしかないんですが。携帯向けサイトなので、携帯から見た時の読みやすさ重視です!


ところで。
ダンガンロンパを勧められてプレイしました。面白かった!ただまあ内容がちょっとグロい部分もあるので好き嫌いは分かれるかもですが、推理アクションの部分が面白かったです。斬新。アクション下手すぎて、犯人もトリックもわかってるのに先に進めなかったりしましたけどね…(泣)
その勢いで2も買ったんですが、プレイはもうちょっと先に…やること多すぎてヤバいのです…。


拍手くださっている皆様、ありがとうございます。励みになります!! 

SWEET&BITTER LIFE・12(拍手文)

その日、僕は結局ユーリとなんだか気まずいままだった。

喧嘩…したわけじゃ、ない。ただ、確実に浮かれてたんだと思う。それが無意識のうちに態度に出まくっていたみたいだ。『誤解』を解くのに必死だった。

だって当然だろう?

一度は嫌われたと思ったユーリと友人になれた。
意外にも、ユーリから遊びに誘われた。
…まあ、遊びにと言うよりは彼の趣味に付き合わされた、と言ったほうが近いのかもしれないけど。

出掛けた先で話をして、また少しだけ彼を知る事ができた。偶然にも彼の仕事を見る機会までできて、更に彼の思いを知った。
もっとユーリの事を知りたいと思った。

ユーリに惹かれていることは自覚したけど、それでもまだその感情が『友人』としてなのか、『それ以上』の存在としてなのかは曖昧なままだったと思う。

…今となってはもう、いつからその境界が曖昧だったのかさえよくわからない。

でもそんな僕の態度というか言動というか…そういうのをユーリに不審がられて、作業を終えたユーリにあれこれ問い詰められる羽目になったんだ。


そして、その中でとうとう、はっきりと気付いてしまった。
自分自身が、ユーリのことをどう思っているのかを…


僕は、ユーリの事が好きだ。


エステルさんが彼女かもとか、そうじゃなくても恋人はいるのかとか、自分で思う以上に気にしてたみたいだ。
一気に押し寄せた様々な感情に自分のことながら混乱したけど、でも『やっぱり』と思った。
…僕はユーリのことをもっと知りたいし、もっと…踏み込みたいんだ、きっと。それは単なる友人に対する感情なんかじゃない。今まで、誰に対してもこんな気持ちになったことはなかった。

だけどユーリがそれを理解してくれるかなんてわからない。
少なくとも、自分が僕から『そういう意味で』好意を持たれてると知って喜んでくれるとは到底考えられなかった。
…それまでの会話で、なんとなくわかるじゃないか。まあ、当然と言えば当然だ。

だから僕は、現時点でこれ以上ユーリに警戒されたくなくてその場を取り繕うことだけ考えてた。
言い訳をしてごまかして、多分『誤解』は解けた…はずなんだ。
ユーリは、もっとゆっくり親しくなればいいという感じのことを言ってくれた。また今度、一緒に飲みに行くことだってあるかも、って。

そう…そう、なんだよな。それが普通だ。
友人だって、恋人…だって。焦ったって何もいいことはない。とりあえずユーリが僕との友達付き合いをやめたいと思うんじゃなければ、まだまだこれから、なんだ。
ユーリに対して、どうも僕は上手く感情を抑えられない。我ながら少し不安になるな…今までだって、何度かそのあたりをユーリに突っ込まれてるし。

結局、なんとか僕の本心は気付かれずに済んだもののやっぱり微妙な雰囲気は拭いきれなくて、これからどうしよう、と思っていたところで店の電話が鳴ったんだ。

不意を突かれて驚く僕を呆れたように見ながらユーリが電話に出ると、相手はその日、娘さんのバースデーケーキをお願いしてきた人だった。
もうケーキは出来てたし、少ししたらその人がお店に来ると聞いて僕はそこで帰ることにした。
ユーリも何も言わなかったよ。まだ夕方前だったし、どこかに行こうと思えば行けたかもしれない。だけど、さすがにそんな気持ちにはなれなかった。


店を後にして自宅に帰り着いた途端、どっと疲れが押し寄せた。疲れの原因のほとんどは自分にあるんだけど、着替えもせずベッドに突っ伏してたらなんだかやるせないというか…そんな気持ちだった。

当然だけど、ユーリは僕に友人以上の感情を持ってはいないし、親しくなりたいと言ってもそれは僕が望むような関係じゃないんだ。
……この先、僕はどうやって彼との距離感を計ったらいいんだろう。
下手な事をして嫌われたくない、でももっと近付きたい。
焦ることはないと思う反面、自分の取るべき行動がよくわからなくなっていた。

ふと、床に放り投げたままの鞄が目について携帯を取り出す。待受画面には何の通知もない。メールの着信も、電話の着信も。

(…ユーリから連絡来ることって、あるのかな)

何となく、そういうことにマメじゃないような気がした。そう思って、その日のお礼とか次の予定とかメールしようか…と考えたものの、指が動いてくれなかった。

(明日、冷静になってからにしよう…)

携帯を握り締めたまま枕に顔を埋めて、いつの間にか眠っていた。
翌朝シャワーを浴びて、鏡に映し出された自分の顔に思わず溜め息が出たな…。ユーリと出掛けたこと、それ自体はとても楽しくて有意義だったのに。


出勤した僕は同僚に『体調でも悪いのか』と心配されたり、疲れた様子を邪推した奴にからかわれたり、散々で…なんだかんだ仕事も忙しく、ユーリに連絡するきっかけを掴めないまま、一緒に出掛けたあの日からただいたずらに時間が過ぎていくばかりだった…。




「はあ、出張、ですか…」

上司に呼ばれて行った喫煙室で、僕はつい気のない返事を返してしまっていた。

「…なによそのやる気ない感じは。珍しいねえ、真面目で仕事熱心なおたくにしちゃ」

「す、すいません!そういう訳じゃ」

「わかってるわかってる。いちいちマジに取りなさんなって」

この前ユーリにも言われたなあ、そんなこと…。

椅子に座って僕を見上げながらひらひらと手を振って軽い調子で話すのは、僕の所属してる部署のチーフだ。女性に声をかけまくったり、二日酔いで出勤してきて午前中デスクに突っ伏してたり、何かとだらしないところも多いけど何故か憎めない。締めるところはきっちり締める…そんな感じだと思う。
一応、上司として尊敬はしてる。

…一応っていうのは、たまに本気でポカをやってそのしわ寄せが僕らに回ってくることがあるからだ。
この前も最終の決定稿に編集長のチェックを貰い忘れたとかなんとかで、その一つ前の段階の記事が誌面になってしまって…関係者へのお詫びやら次号での修正やら、大変だったんだ。

要するに、こういうことがあったりしたんで忙しかったんだけどね。
それで今日、わざわざ呼び出されたものだから『また何かあったのか』とちょっと警戒してたんだ。

普通に仕事の話のようだから、つい肩の力が抜けたというか。
…でもよく考えたら、まだ何の出張かわからないよな…。
まあ、そう構える必要もないとは思うけど。出張自体は、別に珍しい事じゃない。

「急で悪いんだけどさ、明後日からとりあえず三日間、ちょっと行ってきて欲しいとこがあんのよ。国内初出店のジュエリーブランドで、プレオープンの招待もらったんだけど」

「ジュエリー…ですか?」

「なによ不満?スイーツのショップのがよかった?」

「はい?どうしてですか?」

「例の店、取材拒否られたのに何度か行ってるって聞いたけど〜?そんなに美味いの?それとも店員にカワイコちゃんでもいた?」

「……いえ、そういうわけじゃ…たまたまです」

「ふーん?ま、いいけどね。で、出張の話だけど………」

なんでこの人が知ってるんだろう…。
ユーリの店に入るのを、知り合いの誰かにでも見られたのかな。別に困る事じゃないから構わないけど、そもそもまだ数回しか行ってないのに。
よっぽどああいうところに行きそうにないと思われてるのか…?

それにしても、ジュエリーか。僕はもともとフード関係の担当が多くて、ユーリのところに取材に行ったのだってそういう理由からだ。だからと言って他業種に興味がないわけじゃないし、行けと言われれば行くけど…。

「あの」

「…で、明日は出社しなくていいから、今日のうちに交通費だけ先に経理に申請しといてー。ホテルは社割効くとここっちで手配しとくから…って、何か質問?」

「いえ、どうして僕なのか、と思っただけなんですが」

「あ〜…ほんとは俺様が行く予定だったんだけどね〜。こっちでどうしても外せない用事が入っちまったのよ。おまえさんになら俺様の名代、任せられるし」

「そんな…恐れ入ります」

「ま、たまには別ジャンルもいいっしょ。それに、何かと参考になるかもしれんし」

何故かニヤニヤし始めた上司を前にして、これはさっさと話を切り上げたほうがいいな、と感じた。何の参考になるのか気にはなるけど、聞かないほうがいいような気がする。

「わかりました。初めての事で調べておきたいこともありますし、そろそろ戻っ…」

「カノジョ出来たんならさ、ついでにプレゼントになりそうなもん見繕って来たら?」

「何の話ですか…失礼します」

軽く会釈して喫煙室を出る。ガラス張りの部屋の中から背中に視線を感じつつ、自分のデスクに戻った僕はつい溜め息を零していた。参考って…そういうことか。聞かなくてよかったよ、全く。

彼女、か…。

あの日から半月、何となくそういう勘違いをされてるんだろうとは思ってた。同僚に言われるぶんには適当にスルーすればいいけど、上司にまで言われるとちょっと面倒だ。
自分では気付かないうちに、何か態度に出てしまってるんだろうか。

『彼』が『彼女』だったら、こんなに悩むこともないのかもしれない。
でも、仕方ないだろ?僕が好きになったのは、ユーリという一人の人間なんだから……

あれから一度もユーリと連絡を取ってない。微妙な空気のまま帰ってしまったから、もしかするとユーリも僕に連絡し辛いのか。…それ以上に、どうでもいいというか気にされてないほうが可能性は高そうだけど…。

…会いたい。

ユーリの顔を見て、なんでもいいから話がしたい。明日は移動日で、出勤しなくていいことになった。極端な話、最終の新幹線に乗っても現地に着きさえすれば問題ない。今日のうちに準備を済ませてしまえば、明日ほぼ一日空く。
居ても立ってもいられず、僕は教えてもらったアドレスに初めてメールをしていた。ユーリの都合がどうか、というのはとりあえず考えてなかった。仕事ならそれでいいんだ。出張に行く前に、少しでも会って話せたら。

ユーリからの返信があったのは、その晩だいぶ遅くなってからのことだった。





「とりあえず座っとけ」

ユーリに言われるまま、喫茶スペースのテーブルに腰を下ろす。荷物を預かってくれたエステルさんにお礼を言い、僕は作業場に戻るユーリの後ろ姿を見つめていた。

昨日の晩、資料や身の回り品をまとめて荷造りを終えたところでユーリからメールの返信が来たんだ。午前0時を回ってたけど、あんな時間まで仕事してたんだろうか。朝も早いんだろうに…。

『明日、会いに行ってもいいかな』

僕の送ったメールに、ユーリからの返事はこうだった。

『昼過ぎにしてくれ』

昼過ぎ、って。具体的に何時ぐらいがいいのか、僕が悩んだのは言うまでもない。でもなんとなく、またメールするのは躊躇われた。だから今日、概ね昼過ぎだろうと思う時間に来たわけなんだけど。

…なんだか、ユーリはあまり機嫌が良くなさそうなんだよな…。
また、と言うかまだ、と言うか。さすがに半月前の事を今だに引きずってるとは思いたくないけど、実際こうやって気にしてる自分がいるだけに何とも言えない。

今日は普通にお店は営業してるけど、今はそれほどお客さんが連続して入ってるわけじゃない。喫茶スペースにも僕だけだ。指定された時間帯は間違ってなさそうだし、邪魔もしてないと思う。
…たぶん。

落ち着かないまま暫く待っていたら、ユーリが作業場から出て来た。バンダナを取って、まとめた髪をほどいて…両手を腰にあてると、わざとらしく肩を落として見せた。

「…はぁ」

「いきなりなんなんだ…!」

「あ?そりゃこっちのセリフだっての」

「どうして」

「……」

「ユーリ?」

僕の顔を見るなり溜め息を吐いたユーリについ噛み付いてしまったけど、まさかほんとにこの前の事をまだ…

「とりあえず、メシ食うか」

「え?あ、昼ご飯?今から休憩?」

「そうだよ。だから昼過ぎに来いってメールしたんじゃねえか。他に時間取れそうになかったしな」

「ああ…なるほど…」

「じゃあほら、ついて来いよ」

そう言って僕に背を向けたユーリの後について店の外に出ると、彼はそのまま裏手に回って建物の外階段を上っていく。

休憩室か何かが二階なのかな…?独立店舗だし、特に珍しいことでもないけど。

そんなことを考えながら階段を上ろうとした僕を、先をゆくユーリが振り返って見下ろした。

「急だったから散らかったまんまだけど、文句言うなよ」

「そんな、文句なんか言わないよ。むしろ、僕みたいな部外者が入って大丈夫なのか心配なぐらいで」

「部外者?まあ…そうかもしれねえけど、別にそういうもんでもないような」

「そうなのか?他の人が利用し辛くないかな」

「他ぁ?なんで他の奴が……あ、もしかして事務所かなんかだと思ってんのか?」

違うんだろうか。

「事務所っていうか、休憩室じゃないのか?」

「あー、違う違う」

「ふうん…?」

喋りながら再び階段を上っていくユーリの後を追う。上りきったところで僕を待ってくれていた彼はこう言った。


「オレ、ここに住んでんだよ」



……予想外だ。

扉の鍵を開けるユーリの横顔を黙って見つめながら、妙に緊張している自分がいた。




ーーーーー
続く
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