スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

畜生/第二回の(四)

【本能とは自然のリズム/第二回〔パラミタスクール〕】

(四)

 「さて、地獄、餓鬼に続く六道の生き方は〔畜生〕です。」
と、私は話を前に進めた。
 「コンチクショー!って叫んでいる、あれ?」
と言ったのは、勿論、阿椰だった。
 「そう言えば、昔、ネタの最後の決め台詞で、チッキショー!って叫んでいた芸人がいたなぁ。」
 そう薬師野が呟いた。
 「畜生って、牛や馬など四つ足の動物のことですよ!」
と、笑いながら日霞が二人に向かって言った。
 勿論、阿椰も薬師野も、コンチクショーやチッキショーが冗談であることを解っていて言ったのだ。
 「辞書なんかを見ると、畜生とは、けだもののこととか、鳥獣虫魚の総称などと書かれています。
 ほかには、人をののしって言う言葉という意味もあって、阿椰さんや薬師野さんが言ったのは、あとの意味ですよね。」
 和泉がノートを見ながら言った。
 彼女は〔六道〕に関する言葉の意味を調べてきていたのだ。
 「私たちが学ぶ六道の中の〔畜生〕は、四つ足動物とか、人を罵る言葉などという意味とは少し違うんですよ。」
 そう私は告げた後、
「解りますか?」
と訊いてみた。
 「六道の中で学んでいることは、私たちの心の状態や日々の暮らし方や生き様だと思いますので、獣(けだもの)のような心を持ってはいけない、獣のように生きてはいけないってことですか?」
と、日霞が言った。
 すると、阿椰が、
「獣の心、獣のような生き方って、どんな生き方?」
と、みんなの顔を見回した。
 「本能のままに生きるってことかなぁ。」
 薬師野が言った。
 「本能のままに生きるって?」
 今度は和泉が訊いた。
 「好き放題に貪り食ったり、交尾したり…」
と、阿椰がやや照れくさそうに言った。
 「それって本能?」
 日霞が首を傾げた。
 そして、続けた。
 「人間や人間に飼われている動物たち以外の野生の生物は、太陽を回る地球の周期や、地球を回る月の周期など、この自然界のリズムに従って生きているし、そうしなければ生きていけないって、何かの本で読んだことあるんだけど、そういう動物たちや鳥や無視や海洋生物たちは、決して好き勝手に貪り食ったり、交尾をしたりはしていないのよ。」
 「だよなぁ。
 そうでないと、自然体系とか食物連鎖なんか、守れないからなぁ。」
 薬師野が感心したように話した。
 植物や虫たちに季節があるように、動物にも季節がある?
 そう言えば、動物には繁殖期があるよね。」
と、阿椰が納得した口調で喋った。
 「個体の維持も、種の保存も、太陽や月のリズムという自然の法則に則って行なわれていて、それが、本当のDNAに組み込まれている本能って訳よね。」
と、和泉が本能の本質について、まとめてしまったようだった。

(つづく)

餓鬼/第二回の(三)の2

【子どもは生命の記憶で遊んでいる?/第二回〔パラミタスクール〕】

(三)の2

 「ところで、六道の餓鬼ではなく、最初に阿椰さんが言ってたガキみたいな子どもの話について、面白い話があるんですよね。」
 私が含み笑いをしたような顔で語ったので、四人の視線が私に集まった。
 「なになに面白い話って。」
と、阿椰が身を乗り出した。
 「子どもがガキみたいな遊びをするのは、彼等がガキだからではなく、DNAに組み込まれた本能みたいなもんなんだそうですよ。」
 「どういうことですか?」
 日霞が訊ねた。
 「受精卵から赤ちゃんへとお母さんのお腹の中で成長してくる時に、魚類、両生類、爬虫類、ほ乳類という生命の歴史を辿りながら赤ちゃんになっていくという話は聞いたことがあると思うんですが、生まれた後も、乳幼児から児童の頃には、その過去の生命的な記憶を思い出して遊んでいるってことらしいんですよね。」
 私が言うと、四人は何かを思い浮かべるように、腕を組んだり、上目遣いになったりしていたが、
「そうだわ!」
と、阿椰が叫んだ。
 「わたし、記憶ある。
 子どもの頃、家の中で、いつも押し入れや洋服ダンス、机の下なんかに隠れたりしていると、お母さんに、阿椰はいつも暗いところに隠れて、まるでネズミだねって言われたことあるんだよね。」
 「そう言えば、子どもって、穴ぐらとか、コタツの中とか、そんなところが好きなんだよなぁ。」
と、薬師野が言った。
 「水たまりを歩いたり、水遊びが好きなのは?」
 和泉が訊いた。
 「それって、若しかして、カエルの記憶?」
と、日霞が言う。
 「カエルを含めた両生類かな?」
 薬師野が言った。
 「じゃー、木登りとかジャングルジムとか、高いところが好きなのは、サル?」
と、阿椰が笑って言った。
 「若しかしたら、鳥かも。

 ああ、人は昔々、鳥だったのかも知れないね、こんなにもこんなにも、空が恋しいって歌、聴いたことあるから…。」
と、日霞が節を付けて歌ったが、その澄んだ声に、みんなも鳥になったような気分になっていたようだった。
 「棒を振り回すのは、直立猿人かな?」
 薬師野が呟く。
 「だったらさ、そんな子どものような遊びを引きずっている大人って、やっぱりガキなんだね。」
と、阿椰が言うと、日霞が、
「パーラミターの状態になって心を平和にしていくためには、欲望の鬼になっている餓鬼も、この子どものようなガキも乗り越えていくことになるんですね。」
と言った。
 「純粋な子どもの心は残しておきたいわね。」
と、和泉が小さな声で言った。
 みんなも、うんうんと同意していたようだった。
 私は一言言いたいことがあったが、今はやめておこうと言葉を呑み込んだのである。

餓鬼/第二回の(三)の2

【/第二回〔パラミタスクール〕】

(三)の2

 「ところで、六道の餓鬼ではなく、最初に阿椰さんが言ってたガキみたいな子どもの話について、面白い話があるんですよね。」
 私が含み笑いをしたような顔で語ったので、四人の視線が私に集まった。
 「なになに面白い話って。」
と、阿椰が身を乗り出した。
 「子どもがガキみたいな遊びをするのは、彼等がガキだからではなく、DNAに組み込まれた本能みたいなもんなんだそうですよ。」
 「どういうことですか?」
 日霞が訊ねた。
 「受精卵から赤ちゃんへとお母さんのお腹の中で成長してくる時に、魚類、両生類、爬虫類、ほ乳類という生命の歴史を辿りながら赤ちゃんになっていくという話は聞いたことがあると思うんですが、生まれた後も、乳幼児から児童の頃には、その過去の生命的な記憶を思い出して遊んでいるってことらしいんですよね。」
 私が言うと、四人は何かを思い浮かべるように、腕を組んだり、上目遣いになったりしていたが、
「そうだわ!」
と、阿椰が叫んだ。
 「わたし、記憶ある。
 子どもの頃、家の中で、いつも押し入れや洋服ダンス、机の下なんかに隠れたりしていると、お母さんに、阿椰はいつも暗いところに隠れて、まるでネズミだねって言われたことあるんだよね。」
 「そう言えば、子どもって、穴ぐらとか、コタツの中とか、そんなところが好きなんだよなぁ。」
と、薬師野が言った。
 「水たまりを歩いたり、水遊びが好きなのは?」
 和泉が訊いた。
 「それって、若しかして、カエルの記憶?」
と、日霞が言う。
 「カエルを含めた両生類かな?」
 薬師野が言った。
 「じゃー、木登りとかジャングルジムとか、高いところが好きなのは、サル?」
と、阿椰が笑って言った。
 「若しかしたら、鳥かも。

 ああ、人は昔々、鳥だったのかも知れないね、こんなにもこんなにも、空が恋しいって歌、聴いたことあるから…。」
と、日霞が節を付けて歌ったが、その澄んだ声に、みんなも鳥になったような気分になっていたようだった。
 「棒を振り回すのは、直立猿人かな?」
 薬師野が呟く。
 「だったらさ、そんな子どものような遊びを引きずっている大人って、やっぱりガキなんだね。」
と、阿椰が言うと、日霞が、
「パーラミターの状態になって心を平和にしていくためには、欲望の鬼になっている餓鬼も、この子どものようなガキも乗り越えていくことになるんですね。」
と言った。
 「純粋な子どもの心は残しておきたいわね。」
と、和泉が小さな声で言った。
 みんなも、うんうんと同意していたようだった。
 私は一言言いたいことがあったが、今はやめておこうと言葉を呑み込んだのである。

餓鬼/第二回の(三)

【欲望で目がギラギラと/第二回〔パラミタスクール〕】

(三)

 「では、話を六道の二つ目のガキに写しましょうか。」
 私はそう言って、〔餓鬼〕とボードに書いた。
 「ガキみたいな生き方をしている人のこと?」
と、阿椰が言った。
 「ガキみたいって、どんな感じかしら?」
 日霞が阿椰を見て言った。
 「そうねー……、わたしみたいなオトナじゃない人?
 水たまりがあればジャブジャブ入って行くし、高いところがあれば登りたがるし、棒を見つければ振り回すし、直ぐに隠れたがるし…、もうガキって感じ?」
 「それって幼い子どもってことかな?」
 阿椰の答えに薬師野が疑問を投げ掛けた。
 「子どもっていうと…、」
 次は和泉が話し出した。
 「言うことは聞かないし、駄々はこねるし、急に走り出すし、悪戯(いたずら)はするし、可愛いけど、手に負えない、目が離せないのよね。」
 「先生!
 そんなことばかりしているガキのような生き方から離れて、わたしのような理性在る大人になりなさいってことですよね!」
と、阿椰がすまし顔で言ったので、みなはどっと笑った。
 「ガキって言うと、そんな感じなのかも知れませんが、餓えた鬼と書く六道の餓鬼は、少し、いや、かなり違うンですよね。」
 私は言い、話を続けた。
 「仏教的には様々な説があるんでしょうが、私たちが〔パラミタスクール〕」として学ばなければならない餓鬼の世界、心の世界という視点で言えば、貪欲にならない、欲しがることに執着しないということでしょうか。
 有っても有っても欲しがる人、人の持っているものは何でも欲しがる人って居ると思うんですが、そんな欲望だけの心、欲望に対して餓えた心だけで生きている、そんな醜い心の状態、そんな感じだと思いますね。」
 私の説明を聞いた薬師野が、
「布施の心を持ち合わせていない、慳貪(けんどん)の心で生きている、そういう状態を餓鬼って言うんだ。」
と呟いた。
 「いるいる、そんな人。
 本当は満ちている筈なのに、不満ばかり言って、欲しがって目がギラギラしている人。
 確かに、餓えた鬼だわ。」
 阿椰が納得の口調で喋った。

(つづく)

餓鬼/第二回の(三)

【/第二回〔パラミタスクール〕】

(三)

 「では、話を六道の二つ目のガキに写しましょうか。」
 私はそう言って、〔餓鬼〕とボードに書いた。
 「ガキみたいな生き方をしている人のこと?」
と、阿椰が言った。
 「ガキみたいって、どんな感じかしら?」
 日霞が阿椰を見て言った。
 「そうねー……、わたしみたいなオトナじゃない人?
 水たまりがあればジャブジャブ入って行くし、高いところがあれば登りたがるし、棒を見つければ振り回すし、直ぐに隠れたがるし…、もうガキって感じ?」
 「それって幼い子どもってことかな?」
 阿椰の答えに薬師野が疑問を投げ掛けた。
 「子どもっていうと…、」
 次は和泉が話し出した。
 「言うことは聞かないし、駄々はこねるし、急に走り出すし、悪戯(いたずら)はするし、可愛いけど、手に負えない、目が離せないのよね。」
 「先生!
 そんなことばかりしているガキのような生き方から離れて、わたしのような理性在る大人になりなさいってことですよね!」
と、阿椰がすまし顔で言ったので、みなはどっと笑った。
 「ガキって言うと、そんな感じなのかも知れませんが、餓えた鬼と書く六道の餓鬼は、少し、いや、かなり違うンですよね。」
 私は言い、話を続けた。
 「仏教的には様々な説があるんでしょうが、私たちが〔パラミタスクール〕」として学ばなければならない餓鬼の世界、心の世界という視点で言えば、貪欲にならない、欲しがることに執着しないということでしょうか。
 有っても有っても欲しがる人、人の持っているものは何でも欲しがる人って居ると思うんですが、そんな欲望だけの心、欲望に対して餓えた心だけで生きている、そんな醜い心の状態、そんな感じだと思いますね。」
 私の説明を聞いた薬師野が、
「布施の心を持ち合わせていない、慳貪(けんどん)の心で生きている、そういう状態を餓鬼って言うんだ。」
と呟いた。
 「いるいる、そんな人。
 本当は満ちている筈なのに、不満ばかり言って、欲しがって目がギラギラしている人。
 確かに、餓えた鬼だわ。」
 阿椰が納得の口調で喋った。

(つづく)
前の記事へ 次の記事へ