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創作《風の中で》/8

【12】

  6月に入り、私は〔ホリスティック養生塾〕に参加した。
  その会は午後からだった。
  会場になっている某総合病院のロビーで、原さんと待ち合わせすることになってはいたが、私は約束の1時間ほど前に着き、会場近くのファミレスに入り、軽く食事をし、雨は降ってはいないけれど、灰色に広がる空を窓越に見ながら食後のコーヒーを口に運んでいた。
  案内によると、今日の養生塾の内容は〔免疫力を高めるつぼ治療〜お灸の話〜〕になっていた。
  私は、述語から東洋医学にも関心はあり、特に、ツボを使った指圧やお灸は習いたいと思っていた。
  ツボやお灸の本も何冊かは持っているが、ツボの位置や使い方については、これで良いんだろうか、間違っていないだろうかといったような不安があった。
  今日はプロの鍼灸の先生が講師に来て下さるということだったので、私の期待の心は弾んでいた。

【13】
  「お待たせしちゃったかしら?」
  私が病院のロビーでソファーに腰を下ろしていると、原さんがやってきた。
  私は立ち上がって「いいえ、私もいま来たところです」と応えた。
    二人は会場になっている五階の多目的ホールに向かうべくエレベーターに乗った。
  すると、「やぁ、こんにちは!  君たちも参加されるんだね」と、明るい声で乗り込んできたのは彼だった。
  彼は、この〔養生塾〕の世話人をしていたのだ。
  受付を済ませ、五列ほどに横並びの長テーブルが並べられ、それぞれに二脚ずつ配置されている椅子には既に半数以上の人が座っていた。
 私は原さんと前の方に並んで座った。
  これまでに〔癒しと復活の旅〕で顔見知りの人もちらほら居たので、軽く会釈するほどの挨拶はしたが、大半は初めての人だったので、私はICレコーダーを出し、ノートをテーブルに広げ、静かに開会を待った。
 二時になり、彼が前に立ち、今日の講習の説明と講師の紹介を行なった。
  講師は、40歳代前半のイケメンの先生(鍼灸師)だった。
  その先生の話はわかりやすく、経絡や経穴(ツボ)についても、全国に張り巡らされている高速道や国道の地図を覚えるように難しいと考えていたのだが、手足や体を前、横、後ろの三つに分け、それを外側内側(裏側)と陰陽に分けて、立体的なルートとして教えてくれ、それぞれに重要なサービスエリアや道の駅があり、そういう感じでザックリ理解した方が実際的だという話で、しかも、一人一人のところに来て、直にツボを取ってくれたので、私は一挙に〔お灸女子〕になってしまった。
  〔養生塾〕の帰り道、私は大型薬局に寄り、〔○○灸〕を手に入れ、夜、寝る前の習慣のようにお灸に勤しむようになったのであった。


※この小説は〓の和みが書いてます!
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