部屋を片付けていると一冊のスケッチブックが出てきた。
だが、自分の部屋から出てきたそれに見覚えは全く無い。こんなの持っていただろうかと、そう思いながらペラペラと捲るとページとページの間から、自分が描いたイラストや落書きが描かれた紙が数枚こぼれた。
あれ?と云う事は自分のものか?
スケッチブックからこぼれた紙を鷲掴みする様に拾うと、首をひねりながら改めてページを捲る。
B5版程の画用紙には抽象画と云うのか、あまり美術には詳しくないので分からないがそんな感じの絵が何枚も描かれていた。
どの絵も基本的に青を基調とした背景に赤や緑、黄色等を重ね塗りし、それによって場面を表現している様だ。
そして、その背景に白く穴を空ける様に単純な人の形がぼんやりと存在していた。
その人形は絵によっては首が無かったり、上半身と下半身が真っ二つに分かれていたりと見るからに可笑しな感じがした。
一体何の絵なんだろうと絵を隅々まで見ていると、画用紙の下にその絵のタイトルの様な物が書かれているのに気付いた。
『首吊り』
『カニバリズム』
『真っ二つ』‥‥‥‥
明らかに可笑しなタイトルだが、絵を見ていると成る程と納得出来る。
更にページを捲った。
『バラバラ』
人形の四肢がバラバラになっており、青の背景に赤い絵の具が滲む様に広がっていた。
上手く絵の内容を説明出来ないが不気味な絵だ。
と、
ベリッと何かを裂く様な音が耳に届いた。
何の音だろう?
辺りを見回し、ふと視線を落とすと足元に誰かの腕がゴロンと落ちた。
えっ?
思わず自分の右腕を見た。
…良かった、ちゃんとある。
次に左腕を見た。
だが本来、其処に存在する筈の腕は無かった。
嘘だろ?
何でだ?
嫌だ嫌だ…
そう頭に浮かび、腕が無くなってしまった肩を擦った。
ベリッベリッベリッ
あの裂く様な音が再び耳に入った。今度は数回。
ああ…そんな声しか最早出なかった。
残っていた右腕、両足が胴体からバラバラに落ちゴロンと散らばる。
ふと気付くと胴体だけになった自分を見下ろしていた。
ベリッ
あの音が鈍く聞こえた。
そして視界の中の自分の首が胴体からゴロンと離れていった。