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日常の痛みと悦び


ひきこもり生活を始めて一か月が過ぎた。

今日は久しぶりに、夜になって夫とファミレスへ行った。

夫の会社に出入りしている保険営業員さんに会うためだ。
夫と私の保険のプランをお願いしていた。

じっくりと検討したい私に対し、営業員さんは随分我の強い人だと聞いていたので、
交渉になることを見越し、
私は半年前に勤めていた時と同じようなしっかりとしたメイクをし、
髪の先を上品に巻き、
厚地の、仕立てのいい落ち着いたワンピースを着て行った。


ファミレスでの営業員は、確かに焦っていた。
こちらがすぐに契約するつもりでない態度で話しながら笑顔を向けると、
顔が引きつり、力なく目線をそらした。


良い気分ではなかった。
それと同時に、半年前まで、目の前の営業員と同じような営業努力を強いられていた自分を思い出す。

絶対にお客様が不機嫌にならないように気をつけていた。
そして、営業側の都合で押しが強くならないように、純粋にお客様を心配することだけに力を注いだ。
営業成績に対する欲を出さない。

そして私は、いつのまにか社歴に残る営業成績を打ち出し、
もちろんその時の社内トップになった。

そして、トップとして挨拶するように言われていた会議の前日、
会社を休み、会議を欠席し、退社した。




今日、目の前の営業員の気持ちは痛いほど解り、
解る分同情し、しかし不快にも感じた。
もともと、お客様に難色を見せられても退かずに契約を取ってきた私だ。
そして、契約を取る分、必死に仕事の質を上げようと努力した私だ。
目の前の保険契約を断ることくらい、出来るはずなのだが。

ひきこもり生活では味わえなかったストレスがのしかかる
一夜だった。





「仕事をするのは大変だね」


そういう私に、明日も仕事に行く夫はなんと答えたか、覚えていない。




それでもこのストレスは、嫌であると同時に、少しの快感をもたらしていた。
うまくいかないことに思案し、改善をしていくことは、いつだって楽しいのだから。



もう二度と外で働きたくはないと思っているが、
働くこと自体が嫌だという気持ちは、単なる一夜限りの好奇心で、幾分緩和されたかもしれない、
そんな印象はある。



逃げ回ってばかりいた分、
立ち向かうことの面白さに少し目を向けられただけ。









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