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味方につけるべき人間とは

担当教授へ、ゼミの皆で挨拶に行ってきた。
何だか少し痩せて、子を見送る母のように、切なげに見えた。


教授「ちゃんと周りの先生にもお礼言うのよ」
Mちゃん「…でも、これからの人生に関係ないし、顔も忘れちゃうと思うんでー。」
さくら「……Mちゃん!」



相変わらずの跳ねっ返りの後輩・Mちゃんにお説教する教授と、
苦笑いの周囲、
たまに口を挟むさくら。


教授「社会に出たら何があるか解らないんだから…こういう繋がりは大事なのよ。」
Mちゃん「出来るだけ個人プレーしたいんですけど(笑)」

さくら「……卒業して、これから、周りは敵ばっかりじゃないけど……味方はそうそういないわよ。」


え、と目を丸くしたMちゃんと、
頷く教授。




確かに、
礼を尽くす価値ある人間と、そうではない人間はいるけれど―――




さあ、私自身、
"先生"と"某医者"にはどうしようかしら。

ハッタリ的希望解決

仕事決まった、
住所決まった、
親も元気!



なんてねん。
………全てハッタリな私の現状。



仕事の最終面談はこれからだし、
アパートは申し込み中だし、
親は手術前。

全然余裕ないわ。
ていうか、不安ばっかり迷い子状態。



けれど、
やっていくしかないなら泣いても迷っても仕方ない。
別に必ず成功したいなんて欲はない。
必ず成功させる気合いだけ。



私の話がハッタリでも、周りは気づかない。
゛良い話゛をしておくと、一気に羨望の眼差しで見てくれる。
゛悪い話゛をしておくと、周りはたまにフォローしてくれる。




今日も夢あるハッタリで、ご希望の周囲を作りましょ。

あたしに嫉妬なんてやめときなよ

A君に激しく片思いのHちゃんの話は、今日も長い。


………ファミレスの外の景色なんか無意味に眺めつつ、
先輩と3人で彼女の話を聞いていた。


Hちゃん「最近T君がくれた誕生日プレゼントを、受け取れないって返したんですよー。そしたらそのプレゼント、研究室のゴミ箱に露骨に捨ててあったんです…。T君怒ってますよね…」



どうやらT君からの一方的な好意に困っているHちゃん。
優しい先輩が「T君がおかしい」と、Hちゃんをフォローしている。



…それもあるけど、
プレゼントを突き返されたら誰だって怒るわよ。
と、思いながら口にはせず、
紅茶を飲みながら相槌だけうっておく。


Hちゃん「去年もいらないって言って喧嘩したのに、またなんですよ!」
先輩「はぁ〜、話の解らない奴だね!」


異性に話をしても正確に通じないのは当たり前よ、
と言おうとして、
とりあえず止めといた。
決めつける気はないが、解らないだろう。
Hちゃんの付き合った男性は一人だけ、3ヶ月でふられてる。
体重は私の軽く2倍。


Hちゃん「でも今日はA君、さくらに構いたがってた……」
さくら「…え?そりゃあ久しぶりに会ったからね」



……あたしに嫉妬?

それはミスチョイスね。
だって、ちょっと考えちゃったじゃない。
もう面倒だし、
どうせならA君が私を好きになったら面白いのにって。




……今日の私は相当の性悪だ。
あー怖い。

あたしには負けていいわよ

新潟に着いて、
一年ぶりに会った元カレKとゴハン。
小綺麗な料亭だった。
彼が得意気に言う。


K「さくらのためにちゃんとイイ店調べた!でも、コースの内容までは分からないです……」

さくら「ふーん。減点ね。」



私に怒られて、彼は心底楽しそうに笑った。


K「すげーよさくら!俺にそんなん言える人間、今周りにいねーもん!」



普段会社では上司に気に入られ、
同期たちの面倒まで見ているという。
協調性のない私にはそっちの方がよっぽど凄い。
………とは、あえて言わないわよ。



…彼は楽しそうだった。
気だるく話す私のどうでもいい話を、喜んで聞いていた。
何でもない話をしては、「こんな普通な話、誰にも出来ない」と言って笑った。


彼がとってくれたホテルの部屋には、ベッドが2つ。
ダブルベッドじゃないことで彼を見直した私に気づかなかったのか、


「ツインとダブル間違えた…ひっついて寝たかったのに…」


などと言った、彼がおかしくて笑った。
疲れていたから直ぐに各自就寝。



朝5時、出勤前の彼は私のベッドに潜り込み、私の手を握り、頭を肩に寄せてきた。
私は寝ぼけながら、彼の頭を撫でてやった。


幼くして父をなくした母子家庭の長男で、
いつでも兄弟の面倒見て、母を励まして、
誰にも甘えないで来た人。
だけど私の前でなら泣ける人。
そんな私を何年でも待つという人。


…可愛い、と思った。

一年前に私はどんな顔をしてましたか

新居を決めに東京へ行って、
その後新潟に寄った。
元カレKがいた。


K「…本当に来ると思わなかった」


嘘言わないわよ、と返すと彼は言う。


K「だって夏は来なかったじゃん」



………去年の夏。
Sに会いに東京へ行った時だ。
私は元カレの『新潟に寄って』なんて言葉を軽く受け流し、
当然のように東京から実家へ帰った。
………すっかり忘れていた自分に驚く。

あの時は彼氏だったS、空港に迎えにも来ず、電話にも出てくれなかったんだよな。
Sは家でただ寝てたんだよ。

…そんなことを思い返していると、更にKは続けた。



K「夏にさくらが来ると思って、俺、さくらが好きな曲をカラオケで練習してたんだよ。」



――――――。



何だか、ひどくびっくりした。
Sも私も、ただの罰当たりだ。



この人は純粋すぎると、思ったんじゃなく、
感じてしまった。


ものすごく、感じて、言葉が出なかった。
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