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件と牛女と最近の都市伝説ってさー、の巻


※別に怖い話ではないんですけど、こういう話題そのものが苦手な人はご注意。無駄に長いしね。


どうして日本の牛系の妖怪ってなんか色々えげつないのが多いのでしょう。

ビジュアル面でも、その怪異がもたらすものについても、結構半端ない感があるなって思います。

と、言っても私が知ってる牛の怪異なんて、件に牛鬼、中国の白沢、地獄の牛頭馬頭の牛頭くらいのものなのですが。

菅原道真をお祀りしている神社では牛の銅像があったりするし(天神信仰では牛は神の遣いだとか)、そしてそれを撫でると頭がよくなるとか言ったりするし、仏教発祥の地インドでは牛は聖なる生き物だし、とにかく昔の人は牛=なんかすごいみたいな感じだったんでしょうか。


そういえば『牛の首』という、今で言う2chの『鮫島事件』みたいなノリの話もありますしね。


上であげたやつの中で、特に私がぞっとしつつも惹かれてしまうのは『件』です。

『件の如し』の『くだん』ですね。


吉兆と呼ばれて、貘みたいにその姿をおさめた絵がありがたがられたり、はっきりと凶事の前兆と呼ばれてたり、良い側面と悪い側面の差がデカすぎて結局どっちが本当?って感じが気味悪いです。色々とああだこうだと言われてるけど、結局なんだかよくわからないものってすごく気持ち悪いですよね。

たとえばビールの銘柄の座までゲットした蛭子さんだって、本当はなんだかよくわからない神様らしいし。

件と言えば

小松左京の『くだんのはは』(石ノ森章太郎によるコミカライズもおすすめ)

岩井志摩子の『依って件の如し』

地獄先生ぬ〜べ〜の件がメインの話(タイトル忘れました)

そして内田百間の『件』


等々、私の知るだけでも色々なお話がありますが、件をモチーフにした話はどれもそのよくわからない気味悪い感じがしてうわっ……となります。『くだんのはは』も『依って件の如し』も、戦時中の雰囲気や閉鎖的な環境も手伝って、より薄暗い感じがするんですよね。


今、なんか微妙にそわそわしてきた。


よくいますよねー、ビビりの癖に怖い話読みたがったり、こういう話したがるやつ。私ですね。でもホラーゲームは全然クリアできないんですよね。四十八(仮)も全然クリアできなかったですからね。ああ、あれは元からクリア出来ない仕様だったね!流石伝説のクソゲーだよおおおお!!



牛と言えばあと一つ、関西ではなかなかメジャーなやつがあるんですけど。その名もストレートに『牛女』ってやつです。そのまんまだなあ。

『牛女』の噂のバリエーションは色々あって、ただ現れるだけでなく『○○神社の祭りの後にいつまでも夜遅く遊んでいると、牛女が現れる』とか『深夜の六甲山を車やバイクで流していたら牛女が現れて、後ろを追いかけられる』なんてやつまであります。このように提灯お岩からターボババアへとジョブチェンジするレベルでメリハリの効いた行動変遷を続ける牛女ですが、そのビジュアルだけは昔からずっと一緒みたいで、小松左京の『くだんのはは』同様、牛の頭に着物姿の女性という所だけは変わらないようです。


そして『くだんのはは』の話も、この『牛女』も、戦時中のある都市伝説から作られたという話です。


どういう話かっていうと


・空襲で兵庫の西宮〜六甲一帯が焼け落ちた

・その中には牛の屠殺場もあった

・その屠殺場の地下の座敷牢から、牛の頭をした着物の女がみつかった

・どうやら屠殺場(もしくは富豪)の家の娘らしい。そのような姿だから閉じ込められていたのだろう

・その娘を閉じ込めていた牢が空襲の折りに壊れて、娘が逃げ出したらしい

……と、こういう話です。


ここから

『屠殺場の焼け跡に夜行くと、牛女が現れる』『○○岩で牛女を見た』『○○の屋根の上で踊っている牛女を見ると災いがある』『○○寺には牛女が現れる』『○○寺のある場所を三度回ると牛女が現れて、追いかけられる』『○○神社の祭りの後に牛女が現れる』『○○洞穴に牛女が現れる』『夜六甲山を車やバイクで流していると牛女が現れて、後ろを追いかけられる』


等々、やたらバリエーション豊かになってゆくわけです。
私が昔聞いたのは、六甲山の話と神社の話くらいですが。


『牛女』の伝説も『くだんのはは』も、舞台は兵庫の山の手です。
ただし『くだんのはは』は架空のお金持ちの家で『牛女』は最も噂が集中したのはある実在のお寺でした。


それというのも、TVや雑誌などのいい加減なデマが原因だったらしく、TV などの影響で牛女伝説が流行ったせいで、そこのご住職は噂を信じて胆試しにやってくる人たちの対応に追われて大変だったようです。


ウェブサイトにわざわざページを作って、懇切丁寧に噂の真相について書かれてました。確かに自分が暮らしている場所へ毎晩毎晩、廃墟や樹海へでも胆試しにやってくるかのようなノリで来られたらそれは迷惑というものですね。
お寺の人は朝も早いだろうし、大変だったに違いない。


その苦労の末に『牛女は引っ越しました』という立て札を作ってみたところ、真夜中の訪問者が減るという漫画のようなオチまでついています。是非『さんすくみ』(※私が最近はまってる、神社の跡取りと寺の跡取りと教会の跡取りが主人公の宗教法人コメディ。舞台は奈良。少女漫画だけど男性にも読みやすそうな感じの作風なので、いろんな人におすすめしたい一冊)でこんな漫画を描いて頂きたい。


牛女の伝説の爆発的な流布はメディアのリテラシーの低さが招いた一種の風評被害だったとはいえ、未だに古い都市伝説が怪異として恐れられるっていうのはなんだかすごいことにも思えます。経緯は全っ然誉められたものじゃないけど。

ここ最近はどうしてそれが現れ、何故そういう行動に出るのかみたいな所以も経緯も何もない、とにかく何かおそろしくて気持ち悪くて逃げられないものの話が流行じゃないですか。一種のテロ的な。牛女はもちろん、口裂け女ですら過去のスタンダードな怪異におさまった感があるじゃないですか。


これは日本だけの話でなく、アメリカでもめっちゃ背が高くて棒みたいな体で顔がない男の不気味な噂(名前は忘れた)が爆発的に流行ってたし、いわゆる『恐い噂』全体がより『結局なんだかよくわからないもの』の側面を持つようになったんじゃないかなー『件』みたいに。よくわかんないけど!


……と、話が一周した所でこの話終わり!


鼻で笑っちゃってください。
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