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猫人生

drrr
自由気ままな臨也さん
なんか色々騒動後なのでちょっとシズイザが仲良し。ついでに千景とも仲良し
長くなったので折りたたみました
面倒ですいません



折原臨也が消えた。

一ヶ月目はまさかと誰もが鼻で笑い、二ヶ月目にはどこに居ると探し始め、三ヶ月目にはとうとう認めざるを得なかった。
折原臨也は池袋にも、新宿にもいない。
街に沈む密かなパワーバランスの調整に一役買っていた男の本格的な失踪は、あらゆる面を混乱させた。
ヤクザの抗争。人ならざるものたちの跋扈。小さな不安。大きな安堵と困惑と恐怖。真実を求めようとする野次馬達。そして友ともいえない腐れ縁。
全ての絡み合う意図の先を辿るように瞑想する人間達の中で、奇妙な沈黙を保った一味が居る。一味というより、グループというより、それは単なる集団だ。
折原臨也が囲っていた、年端も行かない少女達。そしてわずかな少年達。
臨也の清濁に飲み込まれる事を望むようなその生き様から、周囲には「信者」とまでに揶揄されている彼ら彼女らは、ただ沈黙を保った。そうして嫌味を言いながら、憎みながら、笑みを浮かべながら自分達の「神様」と付き合っていた人間が慌てふためくサマを、静かに静かに笑っていた。
某月某日某所。
ファストフードのボックス席を陣取ったどこにでもいる私服の少女達は、各々頼んだ食料をつつき、額をつき合わせるようにして笑っていた。
「どいつもこいつおっかしいのー」
「ほんとー。見てよ、このスレ。まだ伸びてるし」
「どいつもこいつもガセ書き込みすぎ。なーにが俺しょっちゅう見てるよ、だっつの」
「この前の情報通(笑)のリーク現場。マジで張ってる奴居てうけたわ」
「どんだけ見たいのよー。たしかにイケメンだけど」
「写メってアップする気満々でキモすぎぃー」
クスクスと携帯を操作して笑いあう彼女達は、憶測と虚構の飛び交う掲示板を見ながらくるくるとタッチパネルを操作した。
彼女達がわざわざ荒らすように書き込まなくても、祭りに参加したいだけの暇人が嘘も感想も憶測も書き込んでくれる。上着の袖から覗く手首に包帯を巻いた金髪の少女が、そんな傷痕など冗談であるかのように明るい笑みを浮かべた。
「もう夏も終わるし、そろそろかな?」
「ちょっとあずっちテンション上げすぎっしょー」
「あれー? ゆっぴーだってこの前散髪行ってたじゃーん。健気なのはどっちだよ」
キャハハ、と明るく笑い会う彼女達の存在を気にかける人間などいない。もし居たとしても、主語の無い会話は上滑りするだけだ。それでいいのだ。
そんなことしか出来ないのだからその程度はきちんとこなしたい、と誰に言われるでもなく彼女達は思っていた。
そうして折原臨也が忽然と消えて四ヶ月が経った――。

 

 ++++

うぜぇ。イライラする。どいつもこいつも最初の威勢だけは良くて、ちょっと力を見せるとこれだ。
いっそ最初から脅え、腰を抜かしてさっさと金を返せばいい。そうすれば少しはこのイライラもマシになるはずなのに。何が大事か自分でも分からぬままに刹那的な感情に揺らされる阿呆共。それには当然力を奮ってしまう自分の存在だって入っているけど、今はそんなナイーブな感情に囚われているつもりは無い。
ただイライラして、鬱陶しくて、ついつい何をするにも力の加減を間違ってしまう己の体質にも腹が立って。
ああ、暦の上ではとっくに夏が終わったというのに、ちっとも涼しくならない。これでもう少しすればある日突然寒くなるのだろう予想は、おそらく外れない。
今日もそうしてゴミ箱だの自販機だのを投げたり、純粋に人を投げたりして、仕事は何とか終わりそうな時間だ。
「おー静雄。ようやく払ったわ、こいつ。ほーんと逃げまくって面倒だよなぁ」
「っス、トムさん。今日は終わりっスか?」
「んー、とりあえずノルマはこんなもんか。これ以上キレて借金増えても大変だろ」
「……すんません、俺。最近イライラしちまって」
「まーまー長い人生なんだ。人間そんな時もあるべ、気楽にいこうや。ヴァローナが入ってくれてから被害も少なくなってるし、いいコンビじゃねーか」
「本当に後輩にも迷惑かけて恥ずかしいっス、俺」
そのヴァロ−ナといえば、今は滞納者だった男を引き摺って家に戻しに言ったところである。目を回して伸びているスエット姿のだらしない四十代を路上に放置しておくには、池袋は治安がいいとはいえない。
トムとて静雄の不調の原因には気付いていたが、解決する事はできない。平和島静雄と折原臨也の運命と腐った縁は、他の何者が介入しようともどうする事もできないのだから。
苛立っては落ち込む静雄は慰めの言葉とともに直帰の許可をもらい、背中を押されて家路についた。
歩き煙草のマナー違反を注意できるような猛者もおらず、静雄は縦に大きい身体をやや丸めるようにして歩く。

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