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誤字指摘ありがとうございます!

先日アップした作品の誤字を指摘してくださった方、ありがとうございました!
他の作品でもいくつか発見しているので、チマチマ直していこうかと思います。
まだリアルがドタバタしているので、気長にお待ちくださいませ。

他にも拍手、コメントありがとうございます。
アップした作品の他にも、以前上げた作品の感想なども送ってださる方々もいらっしゃって、本当に嬉しいです。

ありがとうございました!

獣と貴方

drrr
犬と俺シリーズ








「四木さんの犬、かっこいいですね」
「番犬ですからね」
膝を抱え込みしゃがむ姿は、興味深そうに凛々しい顔立ちのドーベルマンと目線を合わせている。
何度かあった事のある臨也を警戒することはなく、しかしヒクヒクと鼻を動かしている犬に、臨也はにこりと微笑みかけた。
その姿を見下ろしていた四木は、ものめずらしそうにやり取りを見つめる。
情報屋の素の笑顔など、高校以来に見た。
「犬がお好きで?」
「最近飼い出しまして……ゴールデンレトリバーなので、もう少し愛嬌のある顔をしていますけど」
「ああ、利口な犬です」
「野良だったんですけど、トイレもしつけも最初から出来てたんです」
へらへらと笑って我が事のように自慢する姿は、立派な親ばかである。
人間愛とやらを語る、冷酷さに似た鋭さを持つ笑みとはまるで違う。
いつもこんな顔をしていれば、人に嫌われることも疎まれることもないだろうに――しかしこんな顔を浮かべるような人間であれば、そもそも四木と出会っていなかっただろう。
運命とはそういうものだ。
「そういえばうちの若い衆が言っていたんですが」
「はい?」
くるりと向けられる目。
好奇心と悪意の宿った、悪魔の瞳だ。
素晴らしい身の切り替えだと思う。それだけに面倒で、かわいそうだ。
もう少し、ほんの少しでも間抜けで、不器用であればよかったのに。
「貴方の近くを珍しい鳥が飛んでいるようですね」
「――ああ、シーズーのことですね」
「しーずー」
思わず鸚鵡返しになってしまったのは、それが以外にも可愛らしい名前であったことも勿論だが、名前の響きがとある人間を連想させたからだ。
「怪我しているところを助けた白い烏です」
「アルビノ、ですか……ああ、そういえば貴方も」
「俺のはそんな大層なものじゃないですよ。目の色素が、日本人の平均より薄いだけです。捜せば他にも五万と居るでしょうし」
そうは言われても、四木はこれほどまでに鮮やかに輝く目を知らない。色素だけの話ではないのだろう。眼力、魔眼といわれているように、眼には古くから不思議な力が宿る。
若い衆には「あれこそ悪魔」と言うものもいるようだから、笑えないものだ。
「烏は頭が賢いんですよ。一度治療した俺の事を覚えているみたいで、放し飼いみたいなものです」
「それは、それは」
男の傍に白い烏を置いてみる。
成程、ハマっている。
四木に忠実な飼い犬は、抱きつき始めた臨也に困ったような視線を向けていたが、もうしばらく我慢させようと思う。
四木とて人間だ。
綺麗なものは、嫌いではない。



++



黒い頭に白い羽。足にまとわり付く稲穂の毛並み。
公園の上気に腰掛けてテイクアウトした寿司をつまんでいる臨也に遭遇した。
「にゃっほー、ロタヒン」
「物を飲み込んでから喋れよ、詰まるぞ」
「む」
臨也は一応納得したらしい。何度か咀嚼したうちにごくりと喉が動いた。寿司の入れ物に蓋をしなおすと、座っていたベンチからぴょこんと立ち上がる。
「久しぶりー。元気だった、みただけど。噂は色々聞いてるよ」
「相変わらずお前とは久しぶりに会った気がしないな」
慎重さから、門田の顔の前には白い羽毛と赤い瞳がある。臨也の赤茶とも違う、本当に血をすかしたような色だ。
「なつかれてるのか?」
「ん? シーズーのこと?」
「シーズー……」
その反応は奇しくも少し前に話を聞いたヤクザと同じだったが、当然門田に分かるはずもなく。音の響きから連想するしかない因縁の相手の顔を思い浮かべた。
「怪我の治療したらなつかれちゃって。さっきも一緒に寿司食べてたんだよ」
「烏って寿司食うんだな」
「雑食だからね」
臨也が手を上げると。白い烏――シーズーは嘴をこすりつけるように頭を下げた。よほどなついているらしいし、臨也の方も世話をしているようだ。野鳥とは思えない清潔感がある。
「シーズー、この人はドタチンだよー。優しくて便りになる人だからね」
「なんだその紹介……」
シーズーはその小さな頭に埋め込まれた瞳で門田を確認した後、コンコン、と手加減された力加減で臨也の頭をつついた。
「ふは、シーズーもドタチンを気に入ったってさ」
「それは……嬉しい、と言ったほうが良いのか?」
喜ぶべきなのかからかわれているのかすら分からず、門田は頭をかいた。臨也はいつものニマニマとした、悪戯な心を隠そうともしない顔で門田を覗き込み「喜んでよー」なんて笑いをかみ殺している。
それでも門田は人になつく動物を可愛がる心は持っていたので、律儀に「宜しくな」なんて声をかけておいた。日本語を理解しているのか、翼を一度軽く上げる挨拶を返される。
「さってと。あの忌々しい筋肉馬鹿が来ないうちに退散するね」
「なんだ? 用事でもあるのか?」
いつもはもう少し絡まれるため門田は思わず口に出す。臨也は基本的に人間相手への関わりを優先させるので(特に門田はお気に入りだ)、意外だった。
「水浴びさせる日だからねー。シーズー、水浴びが気に入ってるみたい」
「水浴び?」
「霧吹きでやってあげるんだ。だからシーズー綺麗でしょ」
そう言って、臨也は頭に烏を乗せたままあの軽やかな足取りで去っていった。
池袋に新しい名物が出来るのも、そう遠くはないだろう。



++


正臣は今犬に踏まれていた。それも背中を、だ。
「シズちゃんは本当に紀田君が好きだね」
「遊ばれる相手として、ですけどね」
取り合っていたはずの犬用の骨型ロープは今も正臣の手に握られている。
気が付けばいつもこうだ。遊び相手と言うより狩りの練習をされているような気がする。
「ほらシズちゃん。いつまでも乗ってたら駄目だよ」
わふ、という声と共に、正臣の背中に座っていた犬があっさりと降りた。
毛足の長いラグの上とはいえ、床の上に寝そべっていた腹が僅かに痛む。上半身を起こしてソファに座りなおすと、紅茶を持ったまま臨也が近付いてきた。
「ご苦労様」
言葉と共に、ごく自然な指使いで乱れた髪を整えられる。
臨也は昔から故意に他人に触れることはあるが、元々警戒心が高く、パーソナルスペースも広い方だ。こうして何の他意無く、意図無く他人に触れると言うのは珍しい――はずだった。
最近は不意打ちで肩や頬、髪の毛に触れてくるものだから、正臣としてはどう対応するべきなのか迷ってしまう。
内面の残念さを全て覆い隠すように作られた外見で、本人も身なりには必要以上に気を使っている。まるで、年上の異性に初心さをからかわれているような錯覚さえ引き起こさせる。そんな性質の悪い幻想まで抱く始末だ。
紅茶を受け取り、冷静さを取り戻すために一口飲み込んでから、正臣は口を開く。残念なことに、ふてくされているような声色は露骨だったが。
「……臨也さんって最近接触過多っすよね。女の子にしたらセクハラで捕まりますよ」
「じゃあ紀田君は男の子だから大丈夫だね」
こういうイラッとする言動は変わっていないのに、どうしてこうも憎悪や嫌悪を保つことが難しいのか。
変わっていくことを受け入れられない自分自身が幼いのか。
正臣は複雑な心境に囚われていた。
「シズちゃんは紀田君が大好きだもんねー?」
「……やめてくれません? その言い回し」
なんだか違う人間を想像してしまって、恐ろしすぎる。
それでもここに座り続ける自分自身が、一番不思議なんだけど。

 

助っ人要因副管理人

皆様なかなか更新のない僻地でのコメント、拍手本当にありがとうございます。
リアルの方が追い込みに入っているので、書き捨て状態になっていますが……面目ないです。

本宅の方ではボチボチ作品を投下していた副管理人ですが、今回ブレイブルーにはまってくれたので作品を書いてもらいました。
あまりにも更新していない!ということで、助っ人として掲載許可ももらっています。

更新してからいくつか質問を頂いたのですが、副管理人は「作品は書くけどスペースやアカウント管理が面倒」という人なので、共同管理人と言う形で、以前から本宅サイトを運営していました。
閲覧者の皆さんが地雷を踏まないようにする注意書き文なども私、あおいのひとりが作成しています。雑記や本宅でかつて日記を書いていたのも、全てあおいのです。

副管理人は適当な人でして「別に一緒にやってるんだし作者表記とかいらんよ〜」という人なので、本宅の方では作者で作品をわけたりしていません。本当に二人の作品がごっちゃに混ざっています。

本宅からサブにお越しの方にはややこしい表記をしてしまい、申し訳ありませんでした。

これからも興が乗ったら書いたり書いてくれなかったり?そんな人ですが、管理人ともども宜しくお願いします。

(ムシウタ)劇的でない

ムシウタ
六花様リクエスト
赤牧決戦後に大助をいたわる周囲のメンバー








病院は嫌いだ。ここにはいつも痛みと別れしかない。
それでも怪我をすれば問答無用で放り込まれてしまうので、まさか瀕死の身を這ってまで外に飛び出すつもりはないが、憂鬱だ。
憂鬱だった。俺の感傷的な部分とは別の意味で。
「ぶっちゃけお前ってペロペロ要因じゃん? 登場人物全員に惚れられちゃう感じのタイプじゃん?」
換気の為に開けられた窓からは、爽やかな春風が入ってくる。白い清潔な壁の間からぽっかりと見える晴れた青空。
やわらかなカーテンによって強さの無くなった陽光が、優しく室内を照らしている。
目の前の人間は、全く精神的に優しくないが。
「二次元にしか存在しないようなキャラに当てはめてるんじゃねぇよ」
「いやマジで。強いくせに抜けてて自己犠牲型で、しかもツンデレで女に弱くて、二重人格で……怖くね? お前のその豊富なキャラ付け怖くね?」
「俺はお前の頭の方が怖い」
「お前って女子に可愛がられるタイプで、俺みたいなマジキチ要因に好かれるタイプじゃん」
「自分の事をそこまで理解してるのかよ」
「正直に言うけど個室っておいしいよな」
ピタリ、と室内の空気が凍った。というより、凍ったのは俺の空気だ。
目の前の馬鹿――ハルキヨという名前の信じられない馬鹿のせいで。
包帯、ギプス、ガーゼ、眼帯、絆創膏……ありとあらゆる医療品で身を包まれた姿からも分かるように、現在重症だ。
赤牧決戦と呼ばれたあの戦いからすでに数ヶ月。
とっくの昔に新学期は明け、俺はめでたく留年し、今なおこうして病院の中で生活を余儀なくされている。もうすぐゴールデンウィークにさしかかるだろう、そんな今日この頃。
かつての戦いの最中で出会い、戦い、時には手を取り合った虫憑きと呼ばれていた彼「ら」彼女「ら」は、なぜか頻繁に俺の元を訪れては、トラウマレベルの無体を働こうとする。
これはあの頃の仕返しなのだろうか。
動けないのを良いことに、童貞と処女を奪われかけたのは一度や二度ではない。これが二次元の世界ならとんだ妄想のハーレム漫画だが、現実には暴行未遂と逆レイプだ。十代の少年にトラウマを植えつけるには、十分すぎる出来事だった。
少し”虫”の力を懐かしく思えたのも、そのときだった。
俺にとっては命の次の次くらいに大切かもしれない処女(男の俺が口に出すのも恥ずかしい単語だ)をどうしてか狙う自覚済みのマジキチ男ハルキヨは、どこにでもいるヤンキーみたいな格好で、顔で笑う。
「俺、筋肉あるだろ? お前が俺と対等だったのは虫の強化があったからで、所詮お前自身ってちょっとスポーツやってる学生レベルだろ。そんな俺がお前を押さえつけてナースコールを押す暇もなく一つになるのはすげー簡単じゃん?」
「怖い怖い怖い怖い」
「そういえばお前まだ童貞守れてるか?」
「……ああ」
果たして童貞は「守る」ものなのか気になったが、狙われているのは間違っていないので頷く。
悪友から言わせれば、こういう律儀さが徒になっていると言われるが、性分だ。仕方がない。
「おお良かった良かった。”霞王”じゃなくて……あの金髪とか肉食系だろ? 俺はもう心配で心配で」
「……童貞の心配をするのに何で尻狙ってんだよ」
「お前かわいーし、生き残った記念、みたいな?」
「いるか!」
枕を投擲――効果はゼロ。
あっさりと枕を受け止めたハルキヨは、枕を返す際に頭を触って耳を触って腕を指で押して軽いセクハラを済ませた。もうこのくらいじゃ動揺しなくなっている自分が一番嫌だった。
「支部長とはどうなんだよ」
「なんでお前が圭吾を気にするんだよ」
「いや恋敵? みたいな?」
「そのイラっとする口調やめろ」
たくさんの人間がこの病室を訪れて、たくさんの話を聞かせる。そして話をせがむ。
俺なんか話し上手とは程遠いのに、しかしそれでも心配してくれている人間を邪険にしたくはない。
もう虚勢も傲慢も使い果たしてしまった。ただの未熟なガキに戻っても良いと、悪友は俺の頭を撫でて笑ったから。
「……別に普通だよ。忙しいくせにしょっちゅう顔出すし」
「デレデレか」
「いやデレかは知らねーけど……」
デレといえば最近有夏月は俺への態度が軟化している。それこそマンガの中に出てくるツンデレキャラのテンプレみたいなセリフを吐くので、あいつなりの仲直りだと思うことにした。
仲直り、って俺が悪いだけなんだけど、あいつもあいつで頑固な性格だ。
本当は分かっている。
怪我のせいで満足に本も読めない俺の暇つぶしの為に、みんな押しかけてくることくらい。……まぁハルキヨを含めた数名は、本当に自分の欲の赴くままに来てるんだろうけど。
皆がそれぞれの生活に戻って、これからまた夢に進み、夢を掴もうとしている。俺はまた出遅れているが、今まで全力疾走をしてきた分、まぁいいかなんて思ったり。
「お前、絆なんてないって顔であの時戦ってたけどよ。憎しみだってつながりなんだぜ?」
「あ?」
「いや、戦いが終わって、目が覚めたお前ってずっときょどってるよな。自分の周りに居る人間がわけわかんねぇって顔してる」
「それは、」
じっと見つめてくるハルキヨの顔に気圧される。
元々特別だったこいつらとは違い、俺は虚勢と努力と足掻きで必死に対等に見せていたに過ぎない一般人だ。
熱すぎて、濃すぎるその色に圧倒される。
「お前、やっぱ怖いわ。何その庇護欲の振りまき方。関わった人間全員誘惑するスキルとか持ってんの? 怖くね?」
「……とりあえず、お前は頭を診てもらえ」
スキンシップ多めのハルキヨの温度さえ嬉しいと持ってしまう俺は、相当終わっている。







「今日のお見舞いは槍使い三人組と霞王、別件でハルキヨに君のお姉さんにフユホタル。ついでにいとしの妹とそのナイト……まったく君のモテ期にも困ったものだぜ」
「お前さ、仕事残ってるなら、わざわざここに来なくても」
「ここの方がはかどるし、仮眠も取れる。邪魔だと言うなら退散するよ」
「意地悪いぞ、圭吾」
返答はすくめられた肩。その動作が似合うのがむかつく。
すでに面会時間は過ぎているが、そこは国家権力と言う奴だ。そもそも現在の保護者は目の前の悪友なのだから、融通が効くらしい。
「――! な、んだよ」
「油断大敵だぜ。こんな悪い大人の前で無防備になるなよ」
眼帯の上をなぞる指先を触れるまで感知できなかった俺も俺だが、人の体に安易に触れるこいつもこいつだ。
俺の周りは、俺に対してスキンシップが多すぎると思う。
眼帯から頬をつつく指先は、満足するまで触ると遠のいていった。
「なんだよ」
「おいおいこれくらい許してくれよ。こっちは朝から老害の相手をさせられて、心身ともに疲れてるんだから」
軽く言うが、それはきっと俺ならとても耐えられないようなことなのだろう。それでもこうして弱音を吐いてくれるようになったという意味では、お互いの間に築いていた壁もなくなったのだろう。
包帯に巻かれて動きにくい体だが、シーツの上を移動する。脇のパイプ椅子に腰掛け、備品の机に持ち帰った資料と仕事を広げる圭吾に近付く。
折れていない方の腕を伸ばして、ギプスで曲げられない指を伸ばして、圭吾の痩せた頬を撫でた。色は悪いが、艶は悪くない。
あの頃の不健康さも少しだけ無くなった気がする。
「退院したら、学校行って、アルバイトするからな」
「そんなことしたら、一緒に居る時間が少なくなるじゃないか」
「お前……ここの入院費だってお前に払ってもらってるんだぞ。何年かかっても、絶対返す」
「そんな他人行儀になるなよ。悲しいな」
包帯越しに掴まれた腕。圭吾の冷え性は相変わらずで、冷たい。
いくら悪友なのか親愛なのか、それともまた違う愛なのか分からない感情だとしても、対等で居たいのは変わらない。
庇護されるだけの子供はもう嫌だ。
「そこは返す。絶対返す。これは俺が決めたことだからな」
「お金で繋がる関係も悪くないけど……やっぱりもう少し健全な絆が欲しいよね?」
納得一つふざけないと言えない圭吾も大概だ。
恥ずかしさと呆れと、嬉しさも少し。
「男同士で、健全も何もないだろ……」
「この思いが穢れてるなんて、君にも言わせないさ。君だってそうだろ?」
そうだけど、なんていえる素直さは、残念ながらまだない。
だから今は、頬を寄せるだけ。
それだけで何もかも分かったように抱きしめる圭吾の賢さが、憎くて、ありがたい。

 

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