それはゴールデンウイークの半ば頃。
ある日、庭に並べられた二つの鉢からあれだけいっぱい出ていた双葉達が忽然と消えうせた。

カモミールの鉢はもぬけの殻に。
かすみ草の鉢には無惨にも途中で引きちぎられた茎と、数本の穴開き双葉が残るのみ。

しかし残された双葉達も日に日にその数を減らしていき…!?


これぞまさしくミステリー。

平和な庭に突如巻き起こったこの事件の真相やいかに!





いやマジでびっくりしたんですよ。

昔一度ナメクジにヒマワリの双葉を壊滅させられたことがあって、今回も犯人はそいつだろうと思って、夜には家の中に鉢を避難させることにしたんです。



なのに




なんで朝見てみたら一本ちぎれてるんですか


あまりのショックにきっと親父のせいだと憤慨したら母に叱られました。



しょうがないじゃないか。何かあったら真っ先に親父を疑いたくなる年頃なんだよ。


だって茎が弱って自然に折れたって言うには無理があるほど遠くに横たわってたんだ。親父のせいだとも思いたくなる。


そして

次の日にもさらに一本が同じ道をたどり、のこるはかすみ草が二本だけ。


ナメクジを家に連れ込んではいないはずなのに…と
あらゆる侵入ルートを考えつくし、いよいよ頭が痛くなりだした今日、学校から帰ってみるとさらにまた一本が変わり果てた姿に。


もういいかげん泣きそうになりながら鉢を覗き込む私の目に、残った一本の芽の根本にいる小さな二匹のダンゴムシの姿が。



え…



あれ…


何してんの君達…?




明らかに双葉の根本に群がるその光景に、慌ててその二匹を玄関からほうり出す。



まさにこの瞬間、真犯人が判明しました。


お前らのせいかバカヤロウ。



腹が立つのでデコピンで弾き飛ばしてやりました。
潰れたら嫌なのでちょびっとだけ。



そんなわけで

ダンゴムシを無害なものだと信じていた私のそれはこの一件で脆くも崩れ去りました。
ダンゴムシちくしょう。


カモミールが一掃されたのはきっとナメクジのせいなんだろうけど。