夢日誌:神の蔵書


話題:今日見た夢


神が収集した本があるとされる遺跡を調査していた。

地下にある遺跡は奥に進めば進む程、土砂に埋まっていて発掘と同時に行っていた調査は難航したが、そこら辺に落ちていた不思議な形をした石を拾って「アニメだと実はこういう石が遺跡の鍵だったりするよな」と、周りにいた隊員に冗談を云っていたら、本当に石の周辺だけ土砂が全て消えて先に進めるようになった。

え、マジで?

その場に居た全員が顔を見合わせ唖然としていたが、発掘の手間が省けるのは有り難いので遠慮なく使う事にする。

初め洞窟のようだった遺跡は地下に進むにつれ、石造りの神殿のような様相になり立派になっていった。
そして、目的だった大量の書物が保管されているのを発見した。
スクロール状のものや革の表装がされたもの、どれも劣化が進みボロボロではあったが調査隊のメンバーは興奮しながらそれぞれ本を調べていた。
しかし遺跡はまだ地下深くまで続いているようだったので、私だけ更に地下へと進む事にした。

何層も潜っていくと、その度に保管されている本の数は増えた。それどころか本が綺麗になり始めている。
遺跡の環境による劣化の遅れだろうと思ったが、何となく手にした本を見るとどうやら違うらしい。
紙の質や綴じ方が近代的なのだ。書かれている文字も機械で刷られたように見える。

違和感を覚えつつも更に地下に潜る。
本は更に綺麗になっていた。保管条件による劣化の云々ではなく、新しくなっている。
黄ばんではいるが頁を読むのに労するほどでもなく、本によってはビニール表装までされていた。
極め付けには、ひと昔前に流行った漫画本が全巻出てきたのだ。埃すら被っていない。
古代遺跡とされている此処にあるのは明らかに可笑しい。
まさか、この遺跡は現役だったりするのだろうか?
震える手で石を使うと、地下に続く階段の土砂が消え去った。

次に足を踏み入れた場所は現代的な場所だった。
蛍光灯が煌々と照らす室内には本棚が所狭しと並んでおり、ジャンルや出版社毎に本が分類分けされ収められている。
唖然としつつも室内を歩く。保管されている本も現代のものだ。
この光景には既視感がある。
見覚えのある光景に戸惑いつつも、ふと目に止まった本棚の、その中の一冊を手に取った。
非常に見覚えのある本だ。アンソロジーと呼ばれるジャンルのその本は昔、自分がハマっていたゲームのものだ。

本を裏返す。表紙のバーコードに被せるようにシールが貼られている。
そのシールにはこう書かれていた。
[¥150]





『ブック◯フじゃねえか!!』

自らが放った魂からの叫びと共に目が覚めた。






以上、神の時代から続くブックオフの夢でした。



夢日誌:山奥の祠


話題:今日見た夢

緑が鬱蒼と繁る細い山道を歩いていた。
山道とは云っても、ある程度人の手によって整備されていて、麓から続く緩やかな傾斜を辿るように登っていく。
堆積した枯れ葉を踏み付けて歩く足元からは、ザクザクとした軽い音が鳴り、生き物の気配が一切感じられない山中へ響いては溶けるように消えていった。
辺りは密集して伸びる枝葉に光を遮られ、昼間だというのに薄暗く、頭上には暗く影になった木々の間から細く続く青空が僅かに見える。まるで谷底から空を見上げているようだ。
鮮やかな青と、暗く濃い緑のコントラストがやけに目にこびり付く。

暫く歩いていくと、やがて平らに均された石畳の道が現れた。其処を道なりに真っ直ぐに進む。
道幅は相変わらず細く、青々と茂る枝葉に陽光を遮られ薄暗い。たまに木々の隙間から木漏れ日が落ち、苔むした石畳に白い幾何学的な模様を作っていた。

整備はされていも、手入れがされていない道はどうにも歩き辛い。
石畳の一部を突き破り盛り上がった木の根に何度も躓きそうになったが、それよりも厄介なのは足首まで積み重なった落ち葉だ。歩く度に足が沈み、靴の隙間から砕けた葉が入り込んではチクチクと不快な痛みをもたらし、何度か足を止めざるを得なかった。
それでも先へと進む。何か目的があって此処を歩いている筈なのだが思い出せない。
チクリ…と再び足に不快な痛みが走った。またか、と思いつつ足元に目をやる。濃く艶の残る緑色の葉が枯れ葉に蓋をするように被さっている。
それに混じり、細長い暗緑色のものが幾つも落ちているのが目に入った。
何かの植物の一部だろうか?
薄気味悪く感じたが好奇心が勝ってしまい、まじまじとそれを眺める。
長さや太さ、見た目は萎びた胡瓜のようだが時折、痙攣するようにピクピクと蠢いていた。
何処なく巨大な芋虫にも見えなくもなかったが、くねらせるような体の動かし方がそれとは違うし、何より気持ち悪さを然程感じはしなかった。
何気なくそれを拾い上げる。思ったほど柔らかくないゴツゴツとした体は少しひんやりとしていて、やはり胡瓜を彷彿とさせる。ただ、胡瓜と違うのは細い手足が生えており、バランス的に頭と思われる部分には単純ながらも顔のようなものが見て取れるという事だ。
糸のような垂れ気味の細い目、嘴のような尖った口。ゆるキャラのような簡素な造りのその顔を見た事がある気がし、手首を返すと胡瓜の頭頂部を見た。其処にヘタは無く、その代わり皿のようなものが付いている。

…カッパ?

そう、妖怪でお馴染みの河童を彷彿とさせるのだ。
見た目こそ胡瓜だが、見れば見るほど河童だった。しかも耳を澄ますとそれは声を震わせながら水…水…と呟いている。
何とかしてやりたいが生憎、周りに水はないし私の手持ちにもない。
しかし見捨てるわけにもいかず、どうせ死ぬのであれば駄目元で水を探してやっても良いだろうとそれを片手に掴んだまま先へと進む。足元にはまだ同じものが幾つも転がっていたが、生きているかも怪しい状態だったので見ない事にした。

水気のありそうな場所を探しながら進むも、一本道となっている石畳の周りには木々が濃密に茂るのみだ。沢どころか水溜りも無い。
大体、この先にあるものすら何か分からないのだ。水が見つかる保証など皆無である。
それでも先へ進む。日が陰ってきたのか、ますます辺りは薄暗くなり、木々が作り出す闇と其所からぽっかりと顔を覗かせる青空の明るさに思わず目を細めた。

と、一際広い場所へと辿り着いた。石畳が一面に広がる其処は満遍なく白い光が降り注ぎ、酷く目が眩む。
光に霞む目で辺りを見通すと、広場の奥に祠のようなものが一つだけポツンと建っていたがその他には何も無く、また何処かへ続く道のようなものも無い。どうやら此処が終点のようだ。

まだ光に目が慣れず、帽子を深く被り視線を下げたまま広場へと足を踏み入れると視界の端に煌くものが見えた。
そちらに顔を向けると池のようなものがあった。四角く切り取られた石を組んで作られたそれは枯れ葉や枝などが堆積していたが深さはそこそこあり、溜まっている水は澄んでいる。木々の枝葉が影になり暗くなっている部分はよく見えないが、たまに水面が波打ったり黒い影が水底を横切るのを見るに、何かしらの生き物が棲んでるようだ。恐らく、水質はそこまで悪くはないだろう。
そう判断を下すと、手にしていた胡瓜…もとい河童を池へと放り込んだ。
ちゃぽんと間の抜けた音を立て水没していったそれは、ゆらゆらと水底を揺蕩うとやや間を置いて体をくねらせながら影の方へと消えていった。
人の言葉が使えるくせにお礼や別れの言葉は特に無かったし、別に欲しいとも思わなかった。

やる事は成したので祠へと向かう。
雲一つない青をバックに佇む祠は特に凝った装飾もなく、簡素な作りをしていたが不思議な雰囲気を纏っていた。
目的はまだ思い出せないが、きっとこの祠に用があったのだろう。
近付けば近付く程、胸の奥に何とも云えない感情が溢れてくる。懐かしくて泣きたくなるような、そんな感情を郷愁と呼ぶのだろう。
祠の前に立つ。私の身長と変わらない高さのそれは雨風に晒され、木製の表皮が所々白く脱色していたが、しっかりとした姿で私を迎えてくれた。

感極まり、抱き付くように祠に体を寄せる。
まるで母親の腕に抱かれているような安心感、そして、ただただ懐かしかった。



久々に記憶に強く残った夢だった。
木々の合間から見える空の鮮やかで濃い青と、枝葉の暗い緑のコントラストが目覚めた後でもハッキリと目蓋の裏に残っている。


未明の訪問者


話題:今日見た夢

朝日が登る前の早朝にも関わらず、スピーカーで何事かを騒ぎ立てる車が家の周辺を走り回っていた。
あまりの騒がしさに目を覚ました私は、相手に気付かれないようにカーテンの隙間から外を覗いた。
しんしんと雪が降り積もる中、黒塗りのセダンがゆっくりと何かを探すように進んでいたが、私の家の目の前を僅かに通り過ぎるとぴたりと停止した。
ブレーキランプが、カーテン越しに暗い室内を赤く染める。
嫌な予感がして隣の部屋に駆け込むと、ほぼ同じタイミングで車から誰が降り、そして此方に歩いてくる足音がした。

ドアチャイムの音がする。

カーテンが閉まっていて窓から様子を伺う事は出来ないが、寒さの所為か震えている吐息、詳細の分からない独り言、服の擦れる微かな音…玄関に誰かが居る気配を嫌でも感じてしまう。
寒さと緊張感で歯がガチガチと音を立てるのをどうにか堪え、得体の知れない訪問者が去るのをひたすら待っていた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
冷え切って痛む手に息を吹き掛けながら、何となしに雪明かりで白く浮かび上がる掃き出し窓へ目をやると、カーテン越しに人の影が動き回っているのに気付いた。
その仕草はカーテンの下の隙間から室内を伺おうとしているように見える。

思わず息が詰まる。
僅かでも呼吸音を漏らしてはいけないと、無意識に肺へと送る酸素を遮断した。
身体を縮こまらせたまま身動ぐ事も出来ない。

カラカラと窓が開く乾いた音がした。

悲鳴をあげそうになり咄嗟に手で口を塞ぐ。
どうしたらいいのか分からないまま、窓を見つめているとカーテンの下から手が這うように入ってくると動けずにいた私の腕を掴んだ。
堪えきれず悲鳴が出る。我ながら耳障りな声だ。



…此処に居たんですねぇ



いつの間にか全開になっていたカーテンから、背広姿の男がニヤニヤとした笑みを浮かべて此方を見つめていた。


夢日誌:神の棲む邸


話題:今日見た夢


山の中に伸びる道をひたすら車で登って行くと、その先には巨大な木造建築の、例えて云うなら千と千尋に出てくるような湯屋を更に増築したような屋敷があった。
車から降りると女性が何処からともなく現れ、案内されるがままに中に入った。

中はとても清潔で純和風な内装だったが、造りは異様だった。
室内にも関わらずVの字に掛けられた階段のような橋、
ロフトのような造りのスペースがある幾つもの部屋、
繋がり方の可笑しな部屋、
明らかに人が入れない小さな部屋、
開けた襖の先が切り立った断崖だったりと枚挙に暇がなく、何となくウィンチェスター邸の和製版のような印象を受けた。

いつの間にか案内人と逸れて屋敷の中を彷徨って居ると、外廊下に出ていた。
廊下は崖に面していて下が見えない。
竦む足のまま手摺り伝いに先を進む事にした。

下を見ないようにしていたが、視界の端に見える断崖の先は霧の所為か真っ白だ。時折、吹き付ける風に身体を押される度に足が止まってしまう。
たっぷりと時間を掛けつつ中程まで進んだ時だろうか、身を預けていた手摺りが突然途切れた。
壊れたとかではなく、敢えて作られなかったであろう其処から身体が擦り抜けると、思考が追いつかないまま空に放り出された。
殆ど垂直の斜面を転がり落ちる。
岩肌に肉が抉られてズタズタになっていくのが分かった。恐怖の所為か痛みはない。
そして、大きく突き出た岩に身体が叩き付けられると、全身を砕かれて死んだ。



ふと気付くと先程の屋敷の中に居た。
最初と同じようにV字の橋を渡り、納戸を抜けて居間に入ると、ロフトのようになっているスペースから女の子が手招きしているのが見えた。

呼ばれるまま女の子の元まで行くと、こっちにおいでと言われ掛けられた梯子を登る。
いつの間にか着ていた着物の所為で梯子を登るのに苦労したが、登り切ると女の子がニコニコしながら此方を見ていた。
その後ろには修験者のような着物を着た坊主頭の男が跪いていて、何とも異様な光景だった。

その人は?女の子にそう訊ねると、
神様。と一言返された。

此処にはね、神様が棲んでいるんだよ。
お屋敷は入ってきた神様が簡単に帰ってしまわないように造ってあるの。

そう云われ再び男に目をむけると、男が顔を上げる。
その顔は誰かに似ていたが、終ぞ思い出す事は出来なかった。






今思えば、神様と云われた男は竹中直人を更にゴツくしたような感じだった。



夢日誌:空から来るもの


話題:今日見た夢

夕刻、奇妙なものが空を漂っているのが見えた。
大分高い所にあるようだが、自身が知り得る航空機とは違う形をしたそれは、夕日に照らされて赤い光を反射している。

何だあれは?
そう思いつつ眺めていると、それは猛烈な速さで此方へと向かって下降してきた。
あっ、と思った時にはそれは目の前にあった。

大きめのバランスボール程の銀色の球体に、所々から鋭いパーツが突き出た見た目。
金属なのかも分からない滑らかな表面には細い光の筋が縦横無尽に張り巡らされ、青白く輝いていた。

突然、目の前に現れた正体不明の物体の存在に思考が追い付かない。
蛇に睨まれた蛙の如く動けずにいると、それは音も立てずに下部からチューブを伸ばすと私に向けた。
どうやらカメラらしく、チューブの先端にはレンズらしきものがチラチラと見える。
それは何かを調べるように私の周りを一頻り這い回ると球体の中に戻り、今度はそれと入れ替わりにアームが出てきた。
滑らかに動くそれにはボールペンのペン先を大きくしたような機械が取り付けられ、その先端は此方に向けられている。
未だ脳の処理が追い付かないままそれを見ていると、向けられた先端が眩く光を放った。

それと同時に左の鎖骨よりやや上の方に鋭い痛みが走る。
焼鏝を当てられたような、鋭利な刃物で切り付けられたようなそんな痛み。
あまりの痛みに喉が引き攣り、押し殺したような呻き声が漏れた。
痛みの所為か、無意識に溢れた涙で滲んだ視界には、アームの先端から細く煙を上げる球体が居る。
次いで痛む箇所に目をやると、皮膚が盛り上がり小さく何かが刻まれていた。
青黒く浮かぶそれは模様、或いは数字に見える。
立て続けに起こる訳の分からない出来事に呆然としていると、目の前の球体が視界から消え、やや遅れて凄まじい音が耳を劈いた。

『大丈夫か?』

咄嗟に伏せていた顔を上げると、件の球体の代わりに重装備姿の男が立っていた。
その足元にはひしゃげた球体が転がり、再び浮き上がろうとしているのか、地上数センチをフラフラと彷徨う様に浮かんでは落ちるのを繰り返していた。
それを押さえるように足で踏み付けると、男は鈍い音を立てるそれについて色々と教えてくれたが、あまりにも非日常的な内容に所為かなかなか理解出来ない。
ただ、それが地球外からやってきた事と、どうやら人類を選別しているようだという事だけは何となく理解した。

『心配しなくてもいい。選ばれたという事は、君にとって悪い事にはならないから』

そう言って此方に向けられた男の目が、レンズのように一瞬だけ輝いた。



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