※もし天使が堕天するなら?をテーマに書いています。公式の話ではありません。









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僕は天使の一人、智天使だ。神の使いって最初に分かった時は不安でしょうがなかったけど、神や仲間のお陰で何とか使いとしてやってこられていると思う。ただ、一つ引っかかっているのは、他の天使と自分の「差」だった。
誠児さんも興好さんもジーザスさんも、前向きで明るくて、まるで神々しい光のように輝いていて見えた。僕にはそんなものがあるのだろうか?僕だけ同じ天使なのに違う。そこを認められているというのも、薄々は感じているけども、僕自身は「天使男子の中の異質な存在の自分」がどうしても引っかかっていた。僕は天使ではないのでは?…いや、天使じゃなければ何だというんだ?そんな自問自答を繰り返しながら、日々を過ごしていた。

「志智、ありがとな。いつも助かるよ」 

神の役に立てた時は少しほっとする。自分は神の使いとしてちゃんと生きていると思えるからだ。


「神ー!なー、聞いてくれよ、興好がさー…」

「またかよ。お前等は本当に馬鹿じゃねえのか」

「そんなことねえし!誠児だけだしぃ」

「ハハハ!しかし興好も乗ってたのは事実でないか!」

「そういうお前もじゃねえか、ジーザス!」

「本っ当にお前等って奴は…」

神と誠児さん達の会話を遠くから見ていた。 神の言葉は呆れているようだったけれど、表情は笑顔を含んでいるのが分かった。神をあんな笑顔に出来るのは、僕を除く天使。『僕を除く』天使。

…何で僕はこんな天使なんだろう。僕は、本当に天使でいていいんだろうか?

誠児さん達は眩しいくらいの光。僕は?
振り向くと僕の後ろには禍々しい闇がどんよりと沈んでいて。それはまるで、僕の心を表しているかのようで。

…そうか。僕は天使じゃないんだ。

僕は愛を信じているか?いや、僕は杏南と別れたその時から愛なんてもの信じてはいない。
僕は神のためならば何でも出来るのか?いや、神のためと言えどこの身を捧げるまでは出来ない。

ああ、そうだな。僕は天使なんかじゃなかったんだ。

僕の方を見てきた誠児さん達の表情が、一瞬で固まった。それを見て確信する。僕には人を笑顔にさせることは出来ないと。僕は、誠児さんや興好さんやジーザスさんのような天使にはなれないと。
その瞬間、感じた。自分の羽が風に流されていくのを。自分の心が後ろにあった闇へと堕ちていくのを。

「志智!」

神が誰よりも先に駆け寄ってくる。僕はそんな神へと手を伸ばし、神はその手を取った。神の力に逆らわずに引き寄せられる。

「おい、どうした?!大丈夫か、志智?!お前…どうなっちまったんだ」

僕は神へと微笑を向けたまま、しばらくは黙っていた。ふっと遠目に誠児さん達が此方へ駆け寄ってくることに気付き、僕は微笑を浮かべたまま神へと囁く。

「…僕を殺してください」

「は?!志智、何言って…」

この心の闇が全てへ向く前に。まだ天使でいた頃の僕の心が残ってる間に。さもないと、この世界は…、そう僕は分かっていた。

「僕はもう天使ではありません。堕天した天使は神の使いでもありません。ただ脅威になるだけ。貴方が僕を殺してくれないのなら、僕が貴方を殺します」

神は黙って僕を見ている。僕はそっと神の頬へと触れて小さな声で説き伏せる。

「貴方が死んだら悲しむ光が…あそこにそう、たくさんいますから」

「でも、俺には、出来ない」

もうすぐ天使達も此処に来る。そしたら、もう止められないだろうから。

「僕はこの世界から光を奪います。いいですか?ダメでしょう?」

その瞬間、僕の身体を何かが打ち抜いたのを感じた。視界にもう一人の神が入る。その表情は強ばっていて、僕を睨みつけている。

…お陰で楽になれる。僕はこのまま、暗い地獄の底へと堕ちて行く。罪を背負いながら、地獄で現世を想おうじゃないか。
僕は意識を手放した。最期に神の呟きが聞こえた気がした。それは僕の胸に刻まれて、僕は闇へと堕ちていった。

「馬鹿野郎。お前は十分に俺の光だったんだよ…!」

おわり