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*雫石が楽しみです!!…の方へ*


ありがとうございます!うちでは初めてのマトモな男主なので、そんな御言葉をいただけてとっても嬉しいです!(´∀`)
亀より遅い更新状況ですが、頑張って進めていきたいと思います。
それでは改めて、拍手ありがとうございました!!




END

raison d'etre@

 




「本当に、ここにアイツが現れるのか?」

《あぁ…俺の予測は外れたことないんやで。黙って信じときぃ》

「…もし外れたら、その舌切り落とすからな。」

《あのさ、さらっと怖いこと言うん止めてくれん?》

「お前に気を使う筋合いはない。……何か動きがあれば、連絡する」


――――カチャリ。
歯車の、狂った音がした。



こ れ は
愚 か な 王 子 の
ク レ イ ジ ィ ・ ス ト ー リ ー





朝、六時―――。



ピピピッ♪


「………ん〜……」


今日、神山希乃《カミヤマ キノ》が通う中学校は、卒業式である。


鳴り響くケータイのアラームを布団から手を伸ばし止め、モゾモゾと体を動かしながら希乃は起き上がった。


「(……また、変な夢見た…)」


そして頭が覚醒し始めた時、ふと心の中で、希乃は呟く。


変な夢―――それはとても奇妙な感覚だったのを覚えている。


その夢はいつも同じ内容だった。


自分が立っているかさえ不安になるくらい、暗くて先の見えない空間から始まり。


その後、目の前に突然見知らぬ男が現れるのだ。


そしてその瞬間、夢とは思えないようなリアルな痛みが全身を駆け巡り、最後に希乃の意識は、深い暗闇へと懸命に手を伸ばそうとする。


「……」


不思議なことに、夢はいつもそこで終わりを告げ、希乃は目を覚ましていた。


ファンタジー小説の読みすぎだろうか。あんな意味不明な夢を見るなんて。希乃はそう思案しながら、パジャマを脱いだ。


「(さすがに一週間も続けて見ちゃうと、ちょっと気持ち悪いよなぁ…まぁ、夢なんてどうこうなるモンじゃないし、ほっとくしかないか。)」


壁にかけていた制服に手を伸ばし、昨日、クリーニングから帰ってきた上着に袖を通す。


「……よしっ」


鏡を見ながら髪を整え、一先ず準備は完了。希乃は部屋のドアを開けると、歯磨きなど支度を始める為、階段を降りた。






*******






「いってきまーす!」


身支度を済まし、朝食を終えた希乃は、元気よく学生カバンを肩に掛け家を出た。


「希乃、帰りはお母さん送ってあげるから、先に帰っちゃダメよー?」


「分かってるー!」


まったく、母はこういう行事ものに限って化粧が長くなるから困る。希乃はバレないよう、小さなため息をつきながら歩き慣れた通学路を歩いていく。



―――サァ…ッ



まだ少しだけ肌寒い風が、希乃を通り過ぎた。


「(この道も、今日で終わりか……)」


――――希乃が進学する高校は、自宅から離れた、私立高校である。


本当は公立で良かったのだが。希乃は、どうしても学生生活の中でブレザーを着ることを夢見ていたのだ。


お陰で、勉強面でも金銭面でも苦労した。一番は両親の説得だったけど。


希乃が通う予定の私立オリヴィア学園は、全寮制だ。それ故、箱入り娘同然で育ってきた希乃の両親の反対は強かった。


しかし希乃には頑固な面があり、それが幸か不幸か希乃の負けん気に火を付け、まさに三日三晩かけて説得した結果。やっと両親は折れてくれたのである。  


その時の嬉しさを思い出せば、今すぐにでも顔がにやけてしまう。


「(へへっ、ブレザー楽しみだなぁ…)」


「希ー乃っ!」


……そんなことを考えながら歩いていれば、不意に希乃は肩を叩かれた。


「ん?…あ、梨麻ちゃん?」


振り向いけば、そこには髪を金色に染めた槝唯梨麻《カシユイ リマ》が佇んでいた。


不良で色々ヤンチャな面もあるが、根はいい子なのが梨麻である。


「おはよ、今日は早いね?」


希乃は梨麻と横に並んで歩きながら、他愛ない会話を交わした。


「あったり前でしょー?今日は卒業式なんだから。ってゆーか、さすがにサボったらヤマケンが煩いし。まぁ卒業生からの最期の贈り物みたいな?」


「先生も梨麻ちゃんの教育には大変苦労してたからねー」


「何よぉ、なーんかその言い方腹立つわね。」


「だ、だって事実だし…」


素直にそう言えば、希乃は梨麻に頭を叩かれた。結構強い力加減だったので再びつっこみそうになったが、また妙なこと言ったら殴られそうなので、希乃は黙っておくことにした。


「にしても卒業式かぁ…あっという間だったね?」


「うん。意外と三年間って早いもんだよね」


「希乃、卒業式で泣いちゃうんじゃないの?」


「アハハ、かもしんない。」


出会いに失恋に挫折に…とにかく、いろんな事があった三年間だ。泣かないわけがない。希乃はそう思った。


「あ、そだ。卒業式終わったら卒プリ撮りいこうよ!」


「おっ、それ良いわねー」


たまには良いこと言うじゃん。なんてふざけて言う梨麻。


それに対して、希乃は拗ねて口を尖らせる。


――――誰がどう見ても、平和で、何処にでもあるような光景だった。





でも――この時二人はまだ、知らなかった。




『……見付けたぞ。クウガ』


《へぇ、案外早かったな。んじゃまっ、さっさと争奪戦おっ始めてこいや》


『…分かってるさ。』





狂いに狂った歯車が、二人の見えないところで動き出すのを―――――。







(それは奇怪な喜劇の始まり)
(あれ……今、誰か見てた?いや、まさかね)






END




**********



続きます。
アッハッハッ。



 
 
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