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ヘタレてもいいじゃない!2。

『仁王君もテニス部だよね?ブンちゃんからよく聞いてるよ、強いんでしょ』

「それなりにな(ブンちゃんぐっじょぶ!)」



レッスン2



秋名さんをお昼に誘うことに成功した俺は、ブンちゃんと秋名さんと俺で中庭にやってきていた。どうせなら二人きりが、とも思うが実際に二人きりになったとしたら恥ずかしすぎてなにも話せないだろう。
俺の性格を知っていてついてきてくれたブンちゃんに感謝ナリ。


「葉月ー、その玉子焼きくれよぃ」

『ブンちゃんママのがあるでしょ!あげません』

「けち!」

『くいしんぼ!』


…感謝はしているが、会話に入りにくい。
もそもそと買っておいたパンを口に運びつつ二人を観察(といっても見ているのは秋名さんだけだが)していると、秋名さんと目が合った。


『仁王君、それで足りるの?』


ドキッとしたのも束の間に、聞こえてきたのは心配そうな声。見れば視線はいつの間にか俺のパンへと注がれていた。


「いつもこんな感じじゃけど…」

『ブンちゃんが食べ過ぎだとしてもそれは少なくない?倒れちゃいそう』


家でもそんななの?
眉尻を下げながら言う秋名さんだが、自分を心配してくれているのだと思うと不謹慎ではあるが嬉しくなってしまう。赤くなりそうな顔を俯かせるように頷くと、むうという唸り声があった。
そして秋名さんが何か思い付いたのかぱっと明るく笑う。


『じゃあ私のお弁当と交換しよう!食べ掛けだけど』

「え!?(秋名さんの弁当!)」

「ずりぃぞ仁王!」


ちょ、ちょっと待ってくれ。それはいきなりハードルが高すぎる。嬉しいが!ものすごく嬉しいんじゃが!この際騒いでいるブンちゃんは無視じゃ無視。


『あ、やっぱり食べ掛けは嫌だよね。ブンちゃんとよくしてるからつい』

「あ、いや、」


しょんぼりしてしまった秋名さんに上手い言葉が掛けられずつまってしまう。これじゃ本物のヘタレぜよ。
本当は秋名さんのお弁当食べたいんじゃが。ああ言ってはくれてるけど、迷惑になるんじゃないか。
そんな葛藤を頭の中で繰り広げていると、いち早く昼ご飯を終えてガムを噛んでいたブンちゃんがパチンと風船を割った。


「あ、仁王もしかして」



(間接ちゅーとか思ったり?)



『そんな今さらな』

「そそそそうじゃよ、か、間接キ、キスなんて今さらじゃ」

「(温度差がすげえな)



***
レッスン2:ご飯を食べましょう

結局玉子焼きだけをいただきました(おいしかったです)

やることリスト。


・概要
・テント配置
・書類手直し
・駐車場案内図
・特駐車両リスト
・屋外っこ集め


誰か私に癒しをください…!

ヘタレてもいいじゃない!



「あ、秋名さん!今日俺と一緒にお昼食べんか!」



レッスン1



真っ赤な顔でそう言ってきたのは隣の席の仁王君だった。私は幼なじみのブンちゃんとたけのこの里をわけっこしてたのだが、突然のお誘いに思わずつまんでいたたけのこを落としてしまった。
ちなみに今は三時間目の後の休み時間。
いつもクールなイメージの仁王君の様子がおかしいとクラスの人がざわめいた。


『? いいよ』

「ピヨッ」


断ることもないので了承すれば、よく聞くよくわからない返事が返ってきた。相変わらず仁王君の顔は赤くて、それを見ていたブンちゃんはくつくつと喉を鳴らす。


「お前ようやく誘えたのか」

「ブンちゃんは黙るナリ」

『?』


ブンちゃんが言った言葉に、不機嫌そうに返した仁王君はじゃあ昼にの、と私に言って自分の席へと戻っていった。
席についた仁王君を見てみればどことなく満足そうに見える。


『ねーブンちゃん』

「なんだよ」

『仁王君てなんか』



(ちょっと可愛いね)



『(友達の話ではかっこいいとしか聞かなかったけれど)(確かにかっこいいけど、なぜだか私には仁王君は可愛く見えた)』

「(秋名さんとご飯…!)」

「(しかしまあ、面白いくらいにヘタレだな)」





***
レッスン1:ご飯に誘いましょう

SSS。



「悪いことが続いたら良いことが来るんですよ」

「…同意できかねますね」

「まあ、俺もこれに関してはどうかと思います。けど」

「けど?」

「悪いことが続いたら、きっと良いことが来るって信じてます」

「信じるんですか?」

「信じているだけですよ。くだらないと突っぱねるよりは気が楽になる気がします」

「そういうものですかね」

「はい。例え迷信でも妄言でもくだらなくても、すがりつく隙があるのならすがりつく。それが信じるってことじゃないですかね」

「心拠り所を作る?ああ、いや、責任の拠り所を作る、ですか」

「だから俺は信じますよ」



***
すがりつくために信じることは信仰に値するのではないか、なんて仰々しいことを思いながら自嘲気味に笑った。

SSS+。



「理由がなくちゃ結果なんて成り立たないのに、成り立ってしまうなんて納得できないんです。でも、理由を考えれば考えるほど嘘臭くなってしまうんです」

「じゃあやっぱり、理由なんてないんじゃないですかね」

「…理由がないのに誰かを好きになれますか?」

「理由がないと誰かを好きになっては行けませんか」

「…」

「…」

「…そういう訳じゃすけど。なら、どうして理由なしに好きになれますか」

「…どうして、って言ってる時点で理由を聞いてますけどねぇ。まあ、でも。敢えてわかりやすく答えるなら、」

「?」

「必然ですかね」


きょとんとして丸くなる瞳。
次いで下げる眉。
ついた溜め息。


「運命だとでも?」

「運命は所詮人生の成り行きです。そんなものではなく、それ以外にはなり得ないものなんです、俺のこの気持ちはね」

「…感情っていうのは理解できないものですね、ましてや人の気持ちなんて。あーあ、誰か答えを教えて欲しいです」

「答えを知っているなら、誰も悩みはしませんよ」

「確かにそうですね」


だからみんな恋愛をするのかもしれない。
わからないという欲求は、人を蝕むから。


「きっと心ってものか解明されたら、恋愛はなくなりますね」

「ええ、きっとね」




***
君との距離は、まだ恋愛
キミと君と自分
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