燗酔の帳の狭間で夢か幻




幾つかの悩みを抱えた




遠い昔の私を見た











湾を抜けて海へ出て




理想を適えるべく対岸へ




漕ぎ出した先




酔いが醒める無風の世界














帆が張れずとも




手を広げ指先一つで良い




吹き抜ける風を捉えられたなら




何処まで行けるだろう
















波一つ無い水面の上で




流れることの無い




雲を見詰めていると




記憶を飛ばした




かりそめに発した何気ない




言の葉の一枚が落ちる間で




またその指の細さを思い出す




















忽然と




頬を撫でる冬の風に




慌てて




君の名前を乗せて見送る












またいつか会えますように