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リハビリ

本の感想をかきます
~アウトプットとタイピングのリハビリを兼ねて〜


■寺田寅彦『柿の種』
明治から昭和を生きた物理学者寺田寅彦のエッセイ。
物理学者といっても数式がどう研究がどう宇宙がどうといったことはほとんど言ってない。
たとえば
「子猫がふざけているときに、子供や妻などが、そいつの指先に口をもって行くと、きっと噛みつく、ひっかく。
自分が指を持って行くと舌で嘗め回す。すぐ入れちがいに他の者が指をやると、やはり噛みつく。
どうも、親しみの深いものには噛みついて、親しみの薄い相手には舐めるだけにしておくらしい。」
「眼は、いつでも思ったときにすぐ閉じることができるようにできている。
しかし、耳のほうは、自分では自分を閉じることができないようにできている。
なぜだろう」
といった具合にちょっとした日記のつぶやきのようなことがまとめられている。
(もともとは雑誌の連載コラムとして掲載されていたものを古→新の順番でならべたのがこの本)
各話の分量が文庫本の1ページあるかないかくらいで、とても気楽に読むことができる。

わたしは彼のことをなぜか(西田幾多郎とかそのあたりの)人文学のひとだと思っていて、
専門分野で分けるとすれば朝永振一郎や湯川秀樹と同じカテゴリの(それも2人より世代が何十年か前の)物理学者だとはこれを読むまで知らなかった。
先述した2人のエッセイも好きなのだけど、寺田寅彦の今作はそれよりも読みやすい。
文章が短かかったり文体が頻繁にかわったりしていたり、あるいは最初から1冊の本としてまとめようとしていないからか、失礼を承知で申し上げると、肩ひじ張らずにさらさらと書き上げた素朴な印象を受ける。
主観と客観のバランスが絶妙なのか、それとも言葉のセンスなのか、ものごとに対する視点とそれを言語化する力、目でとらえたもの、思考したものを表出する力、描写がすごい。
読むことができてよかった。今後も開拓していきたい。


■ブレイディみかこ『THIS IS JAPAN――英国保育士が見た日本』
例にもれずわたしも『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだ。
で、その次に、子どもたちの階級闘争──ブロークン・ブリテンの無料託児所から』を読んだ。
で、3作目に読む彼女の著作がこれ。

話はそれるが、実は先日、とある縁で某党の勉強会に参加した。
そういった集まりに行くのは初めてだったこと、
(選挙権をもつ一市民としてその党への信頼があるとはいえ)参加することそのものに対する「ほんまにええんか?」という気持ち
があり、内心結構びびっていた。
とはいえ誘われてから「行きます」と連絡したのは自分だし、びびりながらも当日を楽しみにしていたんだけど
勉強会に実際に参加して、いろいろ自分の中で変化が起こりはしたものの、頭の片隅に「あーこんな感じか」という思いがあったのも間違いなくて。

その不完全燃焼感というか、くすぶっている「なぜなんだろう……」の解決の糸口になるようなことがこの本にかかれていて、その箇所を読んだときに霧が晴れたような心地になった。

私は幸い中学・高校時代に人権教育を(そういった名称でなくとも)受けたしその想いやバトンを受け取ったと信じている。けれど、そもそもスタートラインにたっているという認識をさせてもらえない(バトンを受け取れない)人がいることを肌感覚でなく客観的に知れた。
私が”幸いにも”人権教育を受ける環境にいたのが現在の環境だけど、今後すべての人々が人権について議論し学び尊重する社会になっていってほしい。

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