下さいな




通りすがりの
貴方


そう貴方…


いきなり降り出した
雨に濡れてしまったの


どうか
どうか
その傘を
私に下さいませんか?


下さらぬなら
この雨に打たれて
寒空の下で
貴方の名前を
心で呟きながら
待ちとう存じます…・・・


貴方がその傘を
下さらなくても
私は貴方を
恨みません


ただ…
貴方を忘れ無いでしょう


いく日も
いく月も
いく年も


この心に
貴方が居ると
私は思うのです…


貴方がその傘を
下さるならば
次は
私が傘になりましょう
貴方を守る傘になりましょう


悲しみから守る…
丈夫な傘になりましょう…





どうか…



どうか…



その傘を―…



私に下さいませんか?