異世界ものだというのに異世界パロとは…という感じですが
・みんな同じ世界にいる
・各国色で別れている(赤の国や緑の国、など)
・十二神皇は各国の守り神(2神ずつ)で選んだ人に稀に加護を与える事もある
・加護を受けた者は身体能力が上がる他住んでいる地域の気候を穏やかにしたり魔物の出現を抑えたりと色々特典がある
・神皇の怒りを買わないために表向きは尊重されるが各国奪い合いの状況
・神皇が直接現れる事も数百年に一度位の割合でありその場合は加護よりも強い力を得る上に神皇を呼び出す事ができる
・選ばれた者は神に愛されし子という事で神子と呼ばれ一切の国の柵を受けない
・魔物がいるのは大体邪神皇の所為
・世界の中心に全ての神皇に仕える巫女姫エト様がいる
・世界のどこかに邪神皇に仕える一族がいるらしい
というふわっとした世界観
※駿太くんに騎士の礼をヨクくんにとってもらいたかっただけなので詳しいことは特に考えてない上に大体出てこない設定
この世界は12の神々の力に支えられて成り立っている。
そして神々を祀る国々は赤の国、白の国、緑の国、紫の国、青の国、黄の国と6つに分かれていた。
ここは酉と卯の神皇を祀る緑の国、それも王城である。
赤い髪に蒼い瞳の少年が金の髪と翠の瞳を持った少年の手を引いて歩いている。
二人とも年の頃は同じ程だろうか。そして背丈もそう変わらない。
手を引く少年は何やら興奮した面持ちで語る。
「叙任の儀式、すっごくカッコよかったよな!いいな〜!
オレも早く一人前になりたい!」
「わかったから引っ張るなよ、シュンタ。
大体どこに行くんだ?」
シュンタ、と呼ばれた少年は楽しそうに笑いながら、
「とっておきのとこ!絶対ヨクもこっちに来て良かったって思うって!」
と、ヨクと呼ぶ少年を急かす。
二人は廊下を抜け、外へと出ると城壁へと向かう。
途中ですれ違った人々は皆彼らが通り過ぎるまで頭を下げた。
それをシュンタは少し悲しそうな顔で通り過ぎ、ヨクは握られた手に力が篭もることでシュンタの様子を察していた。
城壁を登り見張り台に着くと見張りの者を下げ、二人は城下町と城を繋ぐ門を見下ろした。
騎士達が規則正しく整列している。
これから城下へ行く様だ。
「ほら、ここからならよく見えるだろ!」
「まあ、そうだな。…しかしオレ達もあそこで見送る筈だったんだがな」
ヨクが指差した先には金の冠を頭上に頂いた男性と寄り添うようにヨクと同じ色の髪を持つ女性が立っている。
そして騎士の鎧を着けた女性に似た雰囲気を持った青年が横にいる。
「王様とお妃様と王子様なんて雲の上の人達の横で先輩達を見送れって?」
「…ここにも王子がもう一人いるんだが?」
そう。ヨクはこの緑の国の第二王子として生まれついた、シュンタの言う雲の上の人達の一人である。
対するシュンタはといえば赤の国の下級貴族の子供であった。
彼の母親は赤の国の上級貴族で美しく穏やかな女性であり、更には赤の神の加護持ちだった。
引く手数多などという言葉では片付けられない程だった彼女が夫にと選んだのは下級貴族の文官。
加護持ちに無理強いはできない。
彼女の願いは叶えられた。
彼女としては貴族の生活が性に合わずに苦しい思いをしていたのだがそれを理解し労り支えたのが彼の人だったのである。
しかし面白くないと思う者が他の上級貴族や王族にまでもいた事で彼ら家族は国から疎まれる事になってしまった。
そんな状態の少年が王族になど会えるものではない。
「…ヨクは、オレと同じだから…」
寂しそうな声色で呟くように返された返事にヨクはしまった、という様な困り顔になる。
シュンタの言う、同じ、とは手の甲に陽の光を浴びて輝く赤の石の事。
ヨクはこの世界に産まれた日に神の寵愛を受けた。
突然現れたのは酉の神皇。
人前に姿を見せただけでも大きな騒ぎだというのに酉の神皇は産まれたばかりの赤子を選び、それを示した。
ヨクの手の甲には翠の色を放つ小ぶりの宝石がある。
皮膚に張り付き取り外すこともできないそれは神の寵を受けし者、神子と呼ばれる者の証である。
ヨクの証と同じ様にシュンタのそれは赤の、午の神皇からの寵愛の証だ。
神子と呼ばれるものは歴史の中にも数人しかおらず加護持ちとは比べ物にならない力を授けられる。
この証を持つものに手を出してはならない。なぜならばそれは神に弓を引く行為に値するからだ。
けしてどの国にも縛られず人々から敬われ傅かれ、恐れられる。
ヨクはこの国の王族であるからか大仰に恐れられることはなかったのだがシュンタは違う。
遂に国から逃げなければいけない、という所まで追い詰められた彼らが目指したのはこの緑の国。
その道中でシュンタは神子となった。
けれど他所の国から来た別の神の神子だと知って城の者達は恐れたのだ。
「シュンタがこの国に来てくれて良かった」
ヨクの手がしょんぼりと肩を落とすシュンタの頭に乗る。
口にしたことは嘘ではなかった。
自国だからこそヨクは必要以上に恐れられる事はない。だからといって気安い者が居るかといえば皆無だった。
そんな生活の中でやってきたシュンタはヨクの中で驚くほどに早くに大切なものの中に収まっていた。
頭に載せた白い手が赤い髪を撫でていると見る間にシュンタの顔が赤く染まっていく。
「よ、ヨクがそんな事言うの、珍しいな」
「お前がらしくもないからだろ」
「そうかな、…うん、そうかも。悪い」
二人が話している間に騎士たちの行進が始まった。
城下の大通りを行く騎士達の姿を一目見ようと多くの住人達がひしめき合っている。
見張り台からは顔までは見えないが全体の動きが遠くまで、
それこそ騎士たちの姿が小さくなるまで見送る。
シュンタは最初はかっこいい、や、訓練ではあんななのに、と賑やかに語っていたが小さくなる頃には静かに見つめていた。
「ヨク、…オレ、絶対騎士になる」
「ああ。そういえばどうして騎士になりたいんだ?」
何気ない風にヨクはシュンタの騎士になりたい理由を問うた。
この国に来た初期の頃から騎士になりたいと口にしていたのだがヨクはその理由を知らなかった。
え、言うの?と恥ずかしそうに頬を染めながらシュンタは語る。
「…この国でどうしても守りたい人ができたんだ」
「へえ、それは初耳だな」
シュンタの様子に恋でもしたのかと当たりをつけたヨクは冷やかすように誰だ、と口にした。
怖がられてばかりの友人が誰かを特別に思ったのかと思うと嬉しい筈であるのに何となく面白くない複雑な胸中を隠して。
「王子様を守るには騎士でなくちゃだめだろ?だから」
「うん?ちょっと待て、王子……?兄上か!?」
「えっ、なんでザルクさんになるんだよ!そりゃお世話になってるけど!」
まさかシュンタが兄に、と思ったら違うらしい事に安堵するヨクは全く今の自分の状態に気がついていない。
そこでなぜ安堵したのかを。
するとシュンタがヨクの前で左膝を立て右膝を地につけた。
目を白黒させるヨクにお構いなしにシュンタは騎士の礼をとった。
「オレが守りたいのは、ヨクだ」
腰に着けていた訓練用の剣を鞘から抜くと刃の部分を持ってヨクに柄を向けて渡たしてきた。
勢いで受け取ったヨクはその剣を呆然としながら握る。
「ヨクに、絶対の忠誠を」
ヨクの行動を待っているのかシュンタはいつにもなく真面目な顔で下を向いている。
何かを言わなければ、と迷うヨクだったが結局その刃をシュンタの肩に置いた。
「…オレの騎士になるって言うのか、お前は」
「うん。…じゃなくて、はい」
「オレに対等な口を聞かないお前なんてお前らしくないな」
「正直今はまだ出来る気がしない」
「だろうな。俺たちは神子だ。同じだろ?」
対等な関係の筈だと言うヨクの言葉に肯定しながらもシュンタは引く気がない。
「オレはヨクの事が大好きだから、どんな事からだって守りたいんだ」
顔を上げ、言い切ったシュンタの蒼い瞳にはヨクの姿だけが写っていた。
突然ともとれる告白めいたものに動揺しながら、けれどもヨクは確かにシュンタの言葉に喜びを覚えていた。
「…一応、その言葉を受け取っておく。
返してほしくなったら直ぐ言えよ」
「そんな日はこないよ」
返された剣を鞘に戻すシュンタは頬を膨らませて否定する。
いつもの調子に戻った様だが何かを思いついたのかヨクの片手を取ると手の甲へ唇を寄せた。
「お慕いしています、…だっけ?」
「ばっ、うう…もう行くからな!」
白い頬に朱が走るのを確認したシュンタはそれはそれは嬉しそうに笑いながら愛しい王子の背を追いかけた。
必ず騎士になるのだ、という決意を新たにして。