あなたを助けてあなたが愛する人


話題:誕生日プレゼント




帰り道本屋でU/SJ関連の雑誌を立ち読みしてみたら大分楽しみになってきた。



もうひとつ悩みがある。

彼への誕生日プレゼントが決まっていない。
私の彼は3月26日生まれ。
今日は3月24日。明日はUS/J。
これはもう、駄目すぎる。



細々としたプレゼントは買った。

面白い形のフォーク2本。彼と私の分ね。
面白い付箋。折ると立体になる。
ぺちゃんこになるカップ。
かわいい貘柄のタオルハンカチ。

全部、道を歩いているときに彼が喜ぶかなと思って見つけておいたもの。






でも、中心になる"これだ!"というものが見つからなくて。上のは雑貨みたいなやつばっかりだからなぁ。



あぁ、どうしよう。







そんなことを思いながら雑誌を本棚に戻して、あ、と思った。




私は以前にもこの本屋で同じことを悩んでいた。ちょうどこの時期に、彼の誕生日プレゼントをどうしようか、と。



あれは4年前。



誕生日プレゼントについて悩んでいた。

優しくしたいと切に願いながら。

 



当時私には彼氏がいて、その上で彼と会っていた。彼もその事を知っていた。私は彼を選ぶつもりはなかった。

つまり、純粋な二股だった。



私はこの本屋で立ち読みをしながら、彼にリップクリームを買いたいな、と思っていた。彼はどこもかしこも乾燥する方で、特に唇はカサカサを通り越してひび割れていたから。

リップクリームをプレゼントすれば彼はきっと喜ぶんじゃないかな。




でも次の瞬間、本を棚に戻しながら、いやいや、と思い直す。


私はいずれ彼を傷つける事になる。
いたずらに優しくしてはいけない。
優しくしたいけど、優しくしてはいけない。

彼の身体の一部を労ることなど。




結局私はリップクリームを買わずに、無難にお菓子のいくつか入った箱を買った。

優しくしてはいけない、優しくしてはいけない、と呪文みたいに唱えながら。










帰り道の本屋でそんなことを思い出した。

 



棚に本を戻したあと、私はリップクリームを買いにいく事にした。


あれから4年たって、プレゼントは思い付かなくなって、面倒だなと思うこともできてきた。

でもかわらないこともある。


彼の唇はますますカサカサだし、私は彼に優しくしたいと思っている。




かわったこともある。

私たちにはこれからがある。プレゼントのことは謝って、今度一緒に買いにいこうと言おう。
私たちにはこれからがあるのだから。
きっとそれが許される程度には側にいたのだから。



あぁ、それから手紙も書こう。
彼ほどの手紙は書けないかもしれないけど、今までのことやこれからのことをたくさん書こう。私は文章に自信がないけれど、きっと大丈夫。今だってこうして彼の目の届かないところで、ひたすらラブレターを書いている。




こればかりは面倒臭いなんて言ってはいられない。







『瞳』