第一話『叶わぬ恋心』


 ―――五年後・春。


「起きろ悠紀! また遅刻して叱られても良いのか!?」

 今日から新学期。六芦・野々宮家では朝から征司の怒声が響き渡っていた。

 キッチンで朝食の準備を済ませ、征司は玄関に入って直ぐの洋室をノックした。以前は客間として使われていたこの部屋は、五年前から悠紀の部屋になっている。

「んもぉ〜、せーじは朝から煩いわねって……! ギャッ! 嘘! もぉこんな時間っ!?」

 ドタンバタンとクローゼットを開閉する大きな音を聞き、征司はヤレヤレと溜め息を吐きながらキッチンへと戻った。

 最後の仕上げにポットから珈琲をカップに注いでいると、ダイニングに身支度を整えた悠紀が入って来る。

「お早う、せーじ。うぅ……、頭痛い」

「お早う。二日酔いか? 出かけに久々に彼氏に会えるからって、呑みすぎないようにって注意したのに……」

 ダイニングテーブルにダルそうに突っ伏す悠紀に、淹れたての珈琲の入ったカップを手渡してやる。

「うっさいわねぇ。だって、目の前で美味しそうにお酒呑まれたら、こっちだって呑みたくなるじゃない! つまり、悪いのは武(たけし)の方よ!」

「そうやって天野(あまの)さんの呑んでたお酒を横から奪って呑んでたんだろ。酒乱も程々にしないと愛想を尽かされるぜ?」

 悠紀には付き合って八年目の彼氏が居る。名前は天野武。悠紀とは幼馴染みで、お互いを意識し出したのが遅く、大学に入ってから付き合い始めたらしい。

「いーの。武は私の酒乱ぐらいじゃ愛想尽かしたりしないもの。なんせブラブですから〜」

「はいはい。羨マシイ限リデスネ」

「何そのカタコト! 全っ然思ってないでしょ!」

(羨ましいと思ってるさ)

 キッチンに戻り、自分の朝食をお皿に盛りながら心の中で呟く。

 悠紀の恋人である天野が羨ましい。
 出会った頃は悠紀を何とも思っていなかったから、悠紀に天野を紹介された時も歳の離れた兄が出来た気がしてただただ嬉しかった。
 天野は悠紀とのデートにも必ず征司を誘ってくれたし、時には悠紀抜きで男同士で遊ぼうとサーフィンや釣りにも連れて行ってくれた。

 三人で出かける事が苦痛になり出したのは、征司が高校一年生の時だった。
 夜に外で車が停まる音がして、ふと二階の部屋の窓から道路を見ると、悠紀を送って来た武が悠紀とキスをしている姿が見えた。

(う、そだろ……)

 二人はどちらかと言えば、普段から恋人同士と言うよりも親友同士と言う雰囲気の方が強かった。
 だから頭の片隅ではセクシャルな事もするのだろうとは思っていたが、二人のキスシーン等を想像しても全く想像が出来なかった。

 目の前で行われている光景が、脳内で上手く処理出来ない。

 唇を解き、武が悠紀の髪を指先ですくように撫でる。

(止めろ。俺の悠紀に触るな……!)

 二人のセクシャルな場面には驚いたが、一番驚いたのは自分の中に芽生えた武に対する嫉妬心だった。




 みたいな(´・ω・`)
 まだまだ話を煮詰めきれてないけど、勢いだけで結構書けました。灰羅の書く年下男はこんな感じですかね。
 つーか、番外編以外で男視点で書くのって初めてです! 案外書けるかも(`・ω・´)
 気が向いたらこんな話かこの続き書きたいな。需要があればですが。
 まぁ、基本好きな話を書き散らかしておりますが(*´∀`*)はっはっはっ